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3-2-2 段差解消機の型式適合認定の確認
(1)建築基準法の解説
 段差解消機の建築基準法における規定の解説を以下に整理した。駆動方式、かご及び昇降路の構造、乗降ロビー、安全装置等について、「国土交通大臣指定 昇降機検査資格者講習テキスト2004(財団法人日本建築設備・昇降機センター)」より抜粋した。
 
 プランジャーの表面は,研磨仕上げ又はメッキされている。研磨仕上げの場合の表面粗さは1〜3μmである。メッキ仕上げは,キズがついた場合に補修が困難であるので,油圧エレベーターでの使用は少ない。
 間接式の油圧エレべーターでは,プランジャー上部に滑車を取り付ける。直接式の場合は,プランジャーをかご床の下枠に直接固定する方法と防振材を介して取付ける方法とがある。
 
9.5 圧力配管
 油圧パワーユニットから油圧ジャッキまでを圧力配管でつなぐ。配管接続には,ねじ継ぎ手,フランジ継ぎ手,可とう継ぎ手等が使われている。また,配管は配管支持部から振動が建物に伝達しないように防振ゴムを介して建物に固定される。
 主な機器について以下に説明する。
(1)圧力配管
 圧力配管はJIS規格の圧力配管用炭素鋼鋼管や高圧ゴムホースを用いる。国内では高圧ゴムホースは必要最小限の長さの使用が認められ,建物の壁の貫通部での使用は認められていない。
(2)管継ぎ手
 配管接続には,管用ねじを用いたねじ継ぎ手,ガスケットでシールし,ボルトとナットで固定するフランジ継ぎ手,ハウジング形継ぎ手で代表される可とう継ぎ手等が使われている。
 ハウジング形継ぎ手の形状と断面を図93に示す。
 ねじ継ぎ手やフランジ継ぎ手の場合は可とう性がないので,据付精度には十分注意する必要がある。可とう継ぎ手の場合は,施工誤差を継ぎ手の可とう性で若干吸収できるので,据付性は可とう継ぎ手がよい。
 
図93 ハウジング形継ぎ手の形状と断面
 
10. 段差解消機
 
 段差解消機とは,高齢者・身体障害者等の建物内における鉛直方向の移動を容易にする目的で設置されるもので,階段の部分,傾斜路の部分その他これに類する部分に沿って昇降するエレベーター(以下「斜行型段差解消機」という。)及び同一階に床の高さが異なる部分がある場合において,当該部分に設けられる昇降行程4m以下のエレベーター(以下「鉛直型段差解消機」という。)で,かごの定挌速度が15m/min以下,かつ,その床面積が2.25m2以下のものをいう。
 定員は1名(積載荷重1,800N)又は2名(積載荷重2,400N)とし,いずれの定員においても車いす使用者が利用できるものとする。なお,住戸内で使用するものでは,床面積1m2以下のもので立って使用するものも設置できる。この場合は,定員1名で積載荷重は900Nである。
 高齢者・身体障害者等が利用する際,管理者の助けを借りずに利用できるもの,何らかの形で管理者の介入を必要とするもの(かご着脱式等)がある。
 建物の階段の部分に斜行型段差解消機を設置する場合,専用昇降路以外の階段部分の有効幅は,建築基準法施行令第23条の規定に適合することが必要である。
 
10.1 斜行型段差解消機の駆動方式
 斜行型段差解消機には,直階段又は踊場付直階段に沿って昇降するタイプ,及び折れ曲がり階段に沿って昇降するタイプがある。斜行型段差解消機の一例を図94に示す。また,専用の昇降路を設けないで,通常は昇降路の部分を階段として利用し,段差解消機の使用時に昇降路の部分にかごを構成して使用する構造の折りたたみ式,又は着脱式斜行型段差解消機が一般的に使用される。折りたたみ式は,かご床,側壁,遮断棒等を折りたたむ構造,着脱式は,使用時に格納されたかごをレールに取り付ける構造のものである。
 斜行型段差解消機の駆動方式は,ロープトラクション式,巻胴式,油圧式,ラックピニオン式,チェーンスプロケット式等多くの方式がある。
 
10.1.1 ロープトラクション式
 主索を介してかごとつり合おもりを結び,巻上機により綱車を回転し,主索を綱車で摩擦駆動させることにより,つるべ井戸のようにかごを昇降させる方式である(図95参照)。
 平成12年建設省告示第1414号第2第三号イの規定により,主索の直径は8mm以上,綱車の直径は主索の直径の30倍以上,主索に接する部分の長さがその周の長さの4分の1以下の場合には20倍以上とされている。
 また,主索端部の構造は,個人住宅用エレベーターと同じように,据え込み式止め金具,鉄製クリップ止め又はケミカル固定のロープソケットも認められているが,主索端部と止め金具の締結作業に厳格な施工管理が要求されるため,締結作業は工場内で施工するべきで,現場施工はしてはならない。
 
図94 斜行型段差解消機の例
 
図95 ロープトラクション式斜行型段差解消機の例
 
 主索等の安全率は,エレベーターと同じであるが,通常の昇降時に昇降する部分に生ずる加速度を考慮して国土交通大臣が定める数値(α1)は1.6と小さくなっている。
10.1.2 巻胴式
 昇降路の傾斜に合わせて設けたガイドレールに保持,案内されたかごを,巻胴式の巻上機により主索を巻胴に巻き込み,巻き戻して昇降させる方式である(図96参照)。
 
図96 巻胴式の斜行型段差解消機の例
 
 主索の直径,巻胴の直径等は,ロープトラクション式と同じである。
10.1.3 油圧式
 油圧ジャッキと鎖(主索),鎖車(綱車)を組み合わせ,かごの動きをプランジャーの2倍に増幅させてかごを昇降させる方式。
 油圧間接式エレベーターと同じように構造計算する。
10.1.4 ラックピニオン式
 ガイドレールに沿って固定されたラックギヤと,かごに取り付けられたピニオン歯車とがかみ合い,ピニオン歯車を駆動装置で回転させることにより,かごを昇降させる方式(図97参照)。
 斜行型段差解消機の主たる駆動方式であるが,構造方法が特殊であり,その例示仕様が告示で示されていないため,構造上主要な部分(令第129条の4第1項)及び制御器(令第129条の8第2項)については,法第68条の26に基づく国土交通大臣の認定が必要である。
 なお,ラックギヤの替わりにローラチェーンをラックに収納したチェーンラックピニオン式も同形式の駆動方式である。
10.1.5 チェーンスプロケット式
 チェーンを介してかごとつり合おもりを結び,駆動装置のスプロケットを回転することにより,つるべ井戸のようにかごを昇降させる方式。
 
図97 ラックピニオン式の斜行型段差解消機の例
 
10.1.6 摩擦駆動式
 ガイドレールを一対の駆動ローラで挟み,駆動ローラをかごの電動機で回転させて,昇降させるものである。摩擦力の低減により,ローラが滑り,かごが滑落するおそれがあるので,過速度を検出したらレールに爪が食い込むような非常止め装置を設けるようになっている。折れ曲がり階段に設置するものに多く使用されている。この方式は,国土交通大臣の認定が必要である(図98参照)。
 
図98 摩擦駆動式段差解消機(いす式)の例
 
10.2 鉛直型段差解消機の駆動方式
 鉛直型段差解消機の一例を図99に示す。
 鉛直型段差解消機の駆動方式は,油圧式(直接式,間接式,パンタグラフ式),チェーンスプロケット式,ラックピニオン式,ねじ式等がある。油圧式は油圧エレベーターの駆動方式とまったく同じであり,チェーンスプロケット式も鎖駆動式エレベーターと同じ駆動方式で,それぞれ構造計算は,エレベーターに準じて行うことができる。ラックピニオン式も斜行型段差解消機に対し,かごの両側にラックギヤを配置,かごの一対のピニオン歯車で駆動するところが相違しているだけである。そのため,ここではそれ以外の駆動方式の説明のみ行う。
 
図99 鉛直型段差解消機の例
 
10.2.1 ねじ式
 昇降路に設けたねじ軸とかごに取り付けられたナットとがかみ合い,このねじ軸又はナットを駆動装置で回転させることによりかごを昇降させる方式。駆動効率を高めるため,通常,ナットにはボールねじナットが使われることが多い(図100参照)。
 構造方法が特殊であり,その例示仕様が告示で示されていないため,構造上主要な部分(令第129条の4第1項)及び制御器(令第129条の8第2項)については,法第68条の26に基づく国土交通大臣の認定が必要である。
 
図100 ボールねじ式の鉛直型段差解消機の例
 昇降路内に設けたねじ軸とかごに取り付けられたボールねじナットとがかみ合い,このねじ軸を駆動装置で回転させることにより,かごを昇降させる方式。


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