第1第七号ロ
用途及び積載量並びに最大定員を明示した標識をかごの見やすい場所に掲示すること。
標識の用途は「乗用・車いす使用者用」とし、定員1名のかご床面積は2m2以下、定員2名は2m2を超え2.25m2以下で、定員1名は車いす使用者、定員2名は車いす使用者と介添え者が利用できる。また、当然ながら、定員の範囲内で一般の人の利用も制限していない。
《設計上の留意事項》
(1)定員1名のかご床面績は2m2以下で、車いす使用者がかご内で90度旋回して乗降するのに必要なかごの大きさは間口1.4m、奥行き1.4m(面積1.96m2)、かご内を直線方向に乗降する構造のかごの大きさは間口0.8m以上、奥行き1.25m以上(面積1.0m2以上)とすることが望ましい。
定員2名のかごの床面積2m2を超え2.25m2以下は車いす使用者と付添い者が同時に利用できる面積を示し、車いす使用者がかご内で90度旋回して乗降するのに必要なかごの大きさは間口1.5m、奥行き1.5m(面積2.25m2)、かご内を直線方向に乗降する構造のかごの大きさは間口1.15m以上、奥行き1.8m以下とすることが望ましい。
(2)かごの戸又は遮断棒の開閉が電動式の場合、閉まりつつあるかごの戸又は遮断棒に人又は物が挟まったとき、自動的に反転して開くことができる装置を設けていること。
(3)ベビーカーを使用する場合の定員は、ベビーカーの乳幼児は定員に算入しないが、その他の幼児・児童は1人を1名と数える。
第1第七号ハ
昇降路は以下の基準によること。
(1)囲い等の設置
1)鉛直型段差解消機のかごの底と昇降路外の人又は物が挟まれるおそれがある部分は、下部乗場から上部乗場までの部分であり、高さ1.8m以上の丈夫な壁又は囲い(柵を含む。以下同じ。)を設けること。ただし、かご内側壁(手すり)から建物の床、はり等の障害物までの水平距難が0.5m以下の場合、かごが上昇時にかご内の人又は物が挟まれるおそれがあるため、その全域を連続した段差のない壁又は囲いを設ける必要がある。上階部分はかご底との間に挟まれるおそれはないため壁等を設けることを要しないが、転落のおそれがあるため、高低差が1mを超える場合等必要に応じ、図1.3.10に示すような転落防止用の高さ1.1m以上の手すり等を設けることが望ましい。
かごの底部と昇降路(壁、囲い、階段、床等)との間に人又は物が挟まれる恐れのある場合、かご床下にスカートガード等を設けるか又は障害物検知装置を設けることにより、下部乗場出入口を除く昇降路の壁又は囲いの高さを1.8m以下とすることができる。
障害物検知装置は次の構造とすること。
(1)障害物検知装置はかご床下面に設けること。
(2)障害物検知装置は接触式(構械式)又は光電管、超音波センサー等の非接触式とし、人又は物が瞬間的又は継続的に挟まれた場合においても確実に作動すること。
(3)障害物検知装置が作動した場合、かごは自動的に運転を停止し、障害物を除去したのち再び操作ボタンを押さない限りかごが昇降しない構造とすること。
図1.3.10 昇降行程が1mを超える昇降路の囲い
2)斜行型段差解消機のかごの底部と昇降路外の人又は物が挟まれるおそれがある部分とは、階段等に昇降路を構成する場合の側壁又は囲いとかごの底部との間の狭角をなす部分で、かごと昇降路の側壁又は囲いとのすき間が0.5m以下の場合をいう(図1.3.11)。
なお、挟まれるおそれのないものの例を図1.3.12に示す。
鉛直型段差解消機と同様に、かごの底部と昇降路(壁、囲い、階段、床等)との間に人又は物が挟まれるおそれのある場合に、障害物検知装置を設けることにより、昇降路の壁又は囲いを設けなくともよい。かご折りたたみ式又は着脱式段差解消機は、この障害物検知装置を設けて、昇降路の壁又は囲いを設けず、使用していないときは昇降路の部分を階段として利用できるようにしたものである。
なお、斜行型段差解消機の障害物検知装置は、かご床の上部乗場側及び下部乗場側の端部又は床下面に設けること。かご折りたたみ式段差解消機にあっては、折りたたんだままかごを動かすものである場合、床と折りたたまれたかご床の下面までの距離が12cm未満の場合、折りたたまれたかご床の下面にも設けること。
図1.3.11 挟まれるおそれのある昇降路
図1.3.12 挟まれるおそれのない昇降路
3)出入口には戸又は遮断棒を設けること。この戸又は遮断棒の取付高さは床面より0.7m程度が一般的であり、また、昇降行程1mを超える鉛直型段差解消機の上部乗場出入口に遮断棒を使用することは、人又は物が落下するおそれがあるため、1.1m以上の高さの戸とすることが一般的である。出入口の戸には引き戸、開き戸、折戸及びかご戸と同様のセフティ・ゲート又は伸縮戸を使用してもよい。
(2)出入口有効幅における乗場出入口の床先とかごの床先とのすき間の寸法は4cm以下とすること。ただし、乗場の床先又はかごの床先に手動又は自動の遮断棒連動式渡し板又は自動開閉式渡し板を設ける場合にはこの渡し板をかごの床とみなしてよい。
(3)つり合おもりを設ける場合は、人又は物がおもりに触れないように壁又は囲いを設けること。囲いに金網等を使用する網目の大きさは直径38mmの球が通過できない程度の網目のものを使用すること。
(4)かご内の人又は物が障害物に挟まれたり衝突することがないように、かご床面と天井又ははり等の垂直距離は2.0m以上とし、2.0m未満の場合は利用者に危害が生じないような適切な措置を講ずること。壁との距離については、(1)1)に記載したとおりである。
鉛直型段差解消機でかごの出入口を遮断棒とする場合、上部出入口床先と段差のない連続した壁又はフェッシャプレートを上部乗場から下部乗場停止位置までの全域に設けること。
《設計上の留意事項》
(1)住戸内以外に設置する段差解消機(昇降行程1m以下を除く。)は、不特定の高齢者、身体の不自由な者、幼児連れのベビーカー使用者等を考慮して、出入口の戸はパネル状のものとするか、又は、目の細かい柵、金網等とすることが望ましい。
(2)渡し板を設ける場合、渡し板は遮断棒連動式渡し板又は自動開閉式渡し板で、かご昇降中は跳ね上げて、昇降路及び出入口床と接触しない構造とすること。下階部にピットを設けることができない場合、床面とかご床面との段差をかごの渡し板を用いてスロープにすることがある。このときの渡し板の勾配は12分の1(高低差が16cm以下の場合にあっては、8分の1)とすることが望ましい。
第1第七号ニ
段差解消機には、次の安全装置が設けられていること。
(1)かご及び昇降路の出入口の戸又は遮断棒を設けたものは、それらがすべて閉じた状態でなければかごの運転回路が作動しないドアスイッチを設けなければならない。
(2)動力でかごを開閉する折りたたみ式段差解消機は下記の安全装置が設けられていること。
(1)鍵を用いなければ、開閉できないこと。
(2)開閉中のかごに挟まれた場合、開閉を停止する装置
(3)かごに人又は物がいる場合、折りたたむことができない装置
(3)かごが着脱式の段差解消機は、レールに設けられた結合装置とかごの結合装置が確実に結合(ロック)していなければ、かごの運転回路が作動しないスイッチとの二つの機能を同時に有する安全装置(インターロックスイッチ)を設けなければならない。
(4)住戸内以外で不特定の人が利用するものにあっては、次の何れかの安全装置を設けること。
(1)鍵を用いなければ、運転できないこと。この場合、利用者が使用するときは管理者側係員が立ち会わなくてはならない。
(2)かごの積載荷重を著しく超えた場合、かごを昇降させることができない装置(過荷重検知装置)及び警報装置を設けること。この場合、管理者側係員が立ち会わなくてもエレベーターと同様に利用者が自由に使用することができる。
なお、昇降路の壁又は囲いを設けない斜行型段差解消機の場合、かごはブザー等の警報音を発しながら昇降するなど、階段利用者に危害が生じないよう適切な措置を講ずることが望ましい。
《設計上の留意事項》
「住戸内のみを昇降するもの以外のものにあっては、積載荷重を著しく超えた場合において警報を発し、かつ、かごを昇降させることができない装置」を設けた段差解消機で、「積載荷重を著しく超えた場合」とは、通常、積載荷重のおおむね110%ではかり装置が作動するようにする。この過荷重検知装置が過荷重を検知すると、利用者に対してブザー又は赤ランプなどで乗り過ぎであることを警告するとともに、段差解消機が昇降しないようにする。この状態は超過荷重が解消するまで続けられる。なお、段差解消機の昇降中は誤動作を避けるため、この装置を無効とすること。
第1第八号 いす式階段昇降機
八 階段の部分、傾斜路の部分その他これらに類する部分に沿って1人の者がいすに座った状態で昇降する昇降機で、定格速度が9メートル以下のもの 令第129条の6第一号及び第五号並びに第129条の7第四号の規定によるほか、次に定める構造であること。
イ 昇降はボタン等の操作によって行い、ボタン等を操作し続けている間だけ昇降する構造であること。
ロ 人又は物がかごと階段又は床との間に強く挟まれた場合にかごの昇降を停止する装置が設けられたものであること。
ハ いすからの転落を防止するためのベルトが設けられたものであること。
(注)本告示第1第八号は、平成14年5月31日付で改正されているので、改正条文については、第4部の3の該当告示本文を参照。
第1第八号
本号で規定された「昇降機」とは、平12建告第1423号第7で「いす式階段昇降機」定義されているが、本号でその構造を定めている。いす式階段昇降機は1人の利用者がいすに座った状態で階段等に沿って斜めに昇降する昇降機で、速度毎分9m以下のものをいう(図1.3.13)。
いす式階段昇降機には、直階段又は踊場付直階段に沿って昇降するタイプ及び折れ曲がり階段、回り階段に沿って昇降するタイプがある。
いす式階段昇降機はレール、駆動装置、いす(操作ボタンを含む。)、乗場呼び・送りボタン及び介添者が操作するリモートコントロール操作盤等から構成され、いすは昇降中に利用者の転落を防止する安全ベルトを設けた座席(背もたれを含む。)、肘掛け、足乗せ台からなり、駆動装置の上部に設けられている。なお、「かご」とは駆動装置及びいす等の昇降するもの全体をいう。
いす式階段昇降機の一般的な駆動装置は自走式で、駆動方式はラックピニオン式、チェーンラックピニオン式及びチェーンスプロケット式などが一般的に用いられている。法(政令・告示)で強度検証法が定められているいす式階段昇降機の駆動方式はロープ式(巻胴式を含む。)、油圧式(直接式、間接式)及び鎖駆動式であり、段差解消機の場合と同じく、平12建告第1414号第2又は第3若しくは第4により、同じ方式のエレベーターの強度検証法に準じて強度検証を行う。
(出典:昇降機技術基準の解説 国土交通省住宅局建築指導課
財団法人 日本建築設備・昇降機センター
社団法人 日本エレベータ協会)
|