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3 新たな階段昇降機装置開発における調査
3-1 階段昇降機に関わる現行の法律・基準
 平成16年度「旅客施設における段差解消のための技術的課題への対応方策検討委員会」の検討結果より、階段昇降機の自律使用に関わる法律・基準を整理したものである。
 交通バリアフリー法に基づく移動円滑化基準において、階段昇降機に関する基準は設けられていない。移動円滑化された経路において、構造上の理由によりエレベーターやエスカレーターを設置することが困難である場合は、エスカレーター以外の昇降機であって車いす使用者の円滑な利用に適した構造のものをもって代えることができるとされている。また、建築基準法においては特殊な構造または使用形態のエレベーターとされているが、斜行式であるに関わらず、垂直式のエレベーターと同様の扱いとなっている。
 
3-1-1 階段昇降機の建築基準法上での扱い
 建築基準法において階段昇降機は、特殊な構造または使用形態のエレベーターとされており、定められた構造方法を用いる必要がある。建築基準法が適用される場合においては、建築確認が必要となるため、階段昇降機についても開発の際には建築確認が必要となる。(ただし、跨線橋等の鉄道施設では建築基準法は適用されない。)
 
<令第129条の3第2項>
(階段昇降機は)特殊な構造又は使用形態のエレベーターで国土交通大臣が定めた構造方法を用いるもの
<令第129条の4第1項(エレベーターの構造上主要な部分)>
かごを主索でつるエレベーターあるいは油圧エレベーター
 
(参考)構造方法等の認定について
 上記の構造方法に関して、エレベーターの構造については主索あるいは鎖でつる駆動方式、または油圧駆動方式のものとされている。しかし、既存の階段昇降機は、特定の機種を除き、エレベーターと同様の構造ではない(かごを主索でつる方式あるいは油圧駆動方式ではない)ことから、性能評価を受け国土交通大臣の「構造方法等の認定」を取得する必要がある。ちなみに、認定が必要な項目は以下の3種類である(機種毎に認定が必要となる)。
・令129条の4 第1項第3号の認定に係る評価(エレベーターの構造上主要な支持部分)
・令129条の8 第2項の認定に係る評価(エレベーターの制御器)
・令129条の10 第2項の認定に係る評価(エレベーターの制動装置)
 
3-1-2 階段昇降機の自律使用に係る構造基準
 階段昇降機を自律使用する場合に関係する法律や基準を整理した。
 
(1)利用規定(「車いす専用」)および用途に関する記述
 建築基準法においては、車いすに座った状態以外の利用とするためには、「かごの両側に1m以上の丈夫な壁または囲い」があること、「床から高さ15cm以上の立ち上がり及び高さ1m以上の丈夫な手すりを設置」していることを満たす必要があると規定されている。既存の階段昇降機は、特定の機種を除き車いす使用者専用であり、かごの側壁又は手すりの高さは1m未満となっており、上記の基準を満たしていない。
 車いす使用者が、鍵を用いて、直接操作するためには、出入り口を除いて、高さ1m以上の丈夫な壁又は囲いを設けていることが条件となる。
 
<建築基準法の構造基準(告示第1413号第1第7号:かごの構造)>
<かごの構造>
((車いすに座ったまま使用する1人乗りで、昇降の操作をかご内の人が行うことができないもの以外のかごの構造は)出入口の部分を除いて、高さ1m以上の丈夫な壁又は囲いを設けていること。ただし、昇降路の側壁その他のものに挟まれるおそれのない部分に面するかごの部分で、かごの床から高さ15cm以上の立上り部分を設け、かつ、高さ1m以上の丈夫な手すりを設けた部分にあっては、この限りでない。
 
<令129条の3 第2項(告示第1413号第一第七号)>
関連告示 内容
告示第1413号
第一第七号イ
(かごの構造)
昇降行程が1m以下で、かごの出入口以外の部分に手すりを設置していること。
昇降行程が1mを超えるのものでは、次のいずれかによる。 下記以外 出入口以外に、高さ1m以上の壁又は囲いを設置しているか。
床から高さ15cm以上の立ち上がり及び高さ1m以上の丈夫な手すり設置していること。(昇降路側壁等に挟まれるおそれがない部分に限る)
車いす専用
(1人乗り)
出入口以外に、高さ65cm以上の壁又は囲いを設置しているか。
床から高さ7cm以上(出入り口の幅が80cmの場合は6cm)の立ち上がり及び高さ65cm以上の丈夫な手すり設置していること。(昇降路側壁等に挟まれるおそれがない部分に限る)
昇降行程が1mを超えるのものは、かごの出入口に、戸又は可動式手すり(遮断棒を含む)を設置していること。
 
(2)階段昇降機の自律使用に関する記述
 車いす使用者が、鍵を用いずに、直接操作するための要件として、かごが上記構造基準に適合することに加え、過荷重を検知する安全装置が必要となる。既存のすべての階段昇降機は、鍵で管理されており、不特定多数の利用を制限し、駅係員の介助により使用されることで安全性が確保されている。
 
<建築基準法の構造基準(告示第1413号第1第7号:安全装置)>
<安全装置>
 積載荷重を著しく超えた場合において警報を発し、かつ、かごを昇降させることができない装置又は鍵を用いなければ、かごの昇降ができない装置
 
<令129条の3 第2項(告示第1413号第一第七号二)>
関連告示 内容
告示第1413号第一第七号ニ(安全装置) かご内の人又は物が挟まれ又は障害物に触れない構造とすること。
昇降行程が1mを越えるものは、かご及び昇降路の戸又は可動式の手すりが閉じているときのみ運転を許可するスイッチを設けていること。
折りたたみ式の場合 鍵でかごの開閉ができる装置を設けていること。
開閉動作中のかごに人又は物が挟まった場合に開閉の停止装置を設けているか。
かご内に人がいるか又は物がある場合にかごを折りたためないようにしているか。
着脱式かごの場合 かごがレールに確実に取りつけられていない場合には、かごを昇降できない装置としていること。
非住宅用では次のいずれかによる (専任操作者の付添いなしで使用する場合)積載荷重を著しく超えた場合の警報とかごの昇降停止装置を設けていること。
(専任操作者の付添いで使用する場合)鍵を用いなければかごの昇降ができない装置を設けているか。


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