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 危機状態のアセスメントと対応 
危機状態へのアセスメントと対応 
危機とは? 
→ストレスに満ちた出来事、あるいは知覚される脅威によってもたらされる内的動揺。普段使用しているコーピンゲメカニズムではその脅戚に対処できないため、不安が増強する。 
  
1. 危機理論 
○危機としての障害 
(1)第1相(衝撃とストレス) 
■自己の存在に対する圧倒的脅威 
■これまでの行動では対処できないため無力感に陥り、ショック、不安、恐怖、思考停止を呈する。 
(2)第2相(防衛的再処理) 
■変化を認めず、古い行動様式を維持しようとする 
■防衛機制を総動員して対処する。外界への関心は薄れ、無関心、多幸、一時的な不安の軽減、攻撃、退行がおこる。 
(3)第3相(承認と新たなストレス) 
■現実への直面、自己の矮小化、古い行動様式の放棄 
■防衛が機能しなくなるので、現実と直面化することになり、無気力、うつ状態に陥る。不安は再び高くなる。 
(4)第4相(適応と行動変化) 
■新しい行動様式の習得とそれに伴う充足的体験の増加 
■不安は徐々に沈静化し、適応、それにともなう満足が得られる。 
  
危機時の症状 
・無力 ・不安 ・錯乱 
・憂うつ ・怒り ・ひきこもり 
・精神身体症状 ・無能 
・絶望感 ・自殺・他殺念慮 
・疎外感 
  
危機の種類 
(1)成熟的危機 
(2)状況的危機 
(3)偶発的危機 
  
(1)成熟的危機 
→人は成熟に向かって成長していく際、ある段階から次の段階に移行時に起こる心理的均衡状態のこと。 
ex. 結婚時、進学時、親になる時、退職時 
(2)状況的危機 
→特定の外的出来事が、個人あるいは家族のようなグループメンバーの心理的均衡状態を覆すようなときに起こるもの。 
ex. 失業、配偶者の喪失、罹患、離婚 
(3)偶発的危機 
→偶然で、まれで、思いもかけずにやってくる不慮の危機。この種の危機は激しい環境変化と多数の喪失・損傷をもたらす。 
ex. 火事、地震、洪水、事件・事故への遭遇 
  
危機介入の4段階 
(1)アセスメント(査定) 
(2)計画 
(3)実施 
(4)評価 
  
(1)アセスメント 
→危機の本質を明らかにするために患者に及ぼした危機の影響についてのデータを収集する段階 
明らかにするべき点 
・危機に陥った出来事 
・危機前の患者の力量とコーピングメカニズム 
・患者のもつサポートシステムの本質とその力 
(2)計画 
→前段階で収集したデータを分析し、特定の介入計画を提示する段階。 
・現在の危機に潜むダイナミクスを系統的に整理。 
・可能な問題解決法を探索し、解決達成に向かう段階を計画。 
・どのようにすれば、患者のコーピングスキルを成長、強化できるかも考える。 
(3)介入 
→実際に患者に対しサポートする段階。 
 Shieldsは、危機介入のレベルを4段階に分けて説明。表面的なサポートから、深く掘り下げた介入と段階的に分類されている。 
個人的アプローチにおいて用いられる技法 
・除反応 ・明瞭化 ・助言 
・操作 ・行動の強化 ・自尊心の高揚 
・心的防衛機制のサポート 
・問題解決法の探索 
(4)評価 
→看護師と患者が、実施してきた介入が危機の肯定的解決という望ましい結果をもたらしたかどうかについて評価する段階。 
・看護師は、患者と危機介入中に起こった変化について考察し、その変化を患者自身の能力と努力の結果であることを認識させる。 
・危機介入体験から学んだことを、もし今後危機に直面したらどのように生かすことができるかを語し合うことも重要。 
  
○危機介入時の注意点 
・危機介入は、一般的に6週間以内の援助であると言われている。 
・人は、問題解決に直面して新しい問題解決方法を学ぶこともある。危機は「成長のきっかけ」として捉えることも重要。 
  
引用文献 
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■松田惺(1983)自己意識, 波多野・依田編, 児童心理学ハンドブック, 金子書房 
■宮城音弥(1960)性格, 岩波新書, 岩波書店 
■高橋恵子(1983)対人関係, 波多野・依田編, 児童心理学ハンドブック, 金子書房 
■湯沢千尋(1982)中年危機心性を伴ううつ病について, 精神神経学雑誌, 84:412 
  
参考文献 
■エリクソン, E.H.著, 仁科弥生訳(1977, 1980)幼児期と社会I, II, みすず書房 
■エリクソン, E.H.著, 小此木啓吾訳編(1973)自我同一性, 誠信書房 
■ピアジェ, J.著, 滝沢武久訳(1968)思考の心理学, みすず書房 
■ピアジェ, J.著, 波多野完治(1967)滝沢武久訳(1967)知能の心理学, みすず書房 
■(1983)岩波講座, 精神の科学 6, ライフサイクル, 岩波書店 
■(1987)異常心理学講座 第3巻, 人間の生涯と心理, みすず書房 
■R.M.ラーナー, N.A.ブッシュ・ロスナーガル編, 上田礼子訳(1990)生涯発達学, 岩崎学術出版 
■岡堂哲雄編(1986)女性のストレス, おんなのライフコースと精神病理, 現代のエスプリ, No.226, 至文堂 
■竹中星郎(1994)老いの心と臨床, 診療新社 
■ダフニ・マウラ, チャールズ・マウラ著, 吉田利子訳(1992)赤ちゃんには世界がどう見えるか, 草思社 
■ロイ・リッジウェイ著, 濱野恵一, 治部眞里訳(1993)子宮の記憶はよみがえる, めるくまーる社 
■若林慎一郎:家庭内暴力, 金剛出版 
■池田由子:被虐待児症候群, 図説臨床精神医学講座3, p.168, メヂカルビュー社 
■小此木啓吾:家族ライフサイクルとパーソナリティー発達の病理, 講座家族精神医学3, p.1, 弘文堂 
■稲村博:いじめ, 図説臨床精神医学講座3, p.188, メヂカルビュー社 
■川上憲人(1992)職場のストレス, 心と社会, Vol.70, p.21, 日本精神衛生学会 
■H.J.Freudenberger(川勝久訳):燃え尽き症候群, 三笠書房 
■D.Kiley(小此木啓吾訳)ピーターパン・シンドローム−なぜ彼らは大人になれないか, 祥伝社 
■坂田三充:精神科訪問看護, 精神科エクスペール8, 中山出版 
■坂田三充:救急・急性期I統合失調症, 精神科エクスペール6, 中山書店 
■上島国利, 渡辺雅幸, ナースの精神医学, 中外医学社 
■南裕子, 地域精神保健活動論, 保健学講座6, メヂカルフレンド社 
■G.W.スチュアート, S.J.サンディーン編, 樋口康子, 稲岡文昭, 南裕子監修, 精神看護学II, 新臨床看護学大系, 医学書院 
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