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(11)進行方向後向き乗車について
質問:ノンステップバスに車いすで乗車するには、現在の車両進行方向前向き乗車以外に、欧米で普及している進行方向後向き乗車があります。あなたは進行方向後向き乗車でもかまいませんか(欧州の車いすスペースの写真呈示)。
 
 「進行方向後向きに乗車してもかまわない(12.2%)」と、「なるべく進行方向前向きに乗車したいが、後向きでもかまわない(33.7%)」を合算すると、45.9%の車いす使用者が「後向きでもかまわない」と回答した。
 一方、「必ず進行方向前向きに乗車したい」と回答した車いす使用者は54.1%を占める。
 
図3-15 進行方向後向き乗車について
回答者数:98人
 
※欧米で普及している進行方向後向き乗車の例
 車いすを使用されている方は、サポートまたは背もたれを背にして、車両の進行方向後向きに乗車します。車いすのホイールまたは後部を寄りかからせることによって、車いすの転倒を防ぐように設計されています。
 
進行方向↑
(通路側のポールで車いすの横すべりを防いでいます)
 
←進行方向
(上下に可動するバーで車いすの横すべりを防ぎ、着脱が簡単なシートベルトも装備しています)
 
注)継続した調査を行う場合、後向き乗車は乗降に要する時間が短縮される点を説明した設問も考えられる。カナダ(Transportation Development Center)、及びカナダ運輸省の調査では、約7割の車いす使用者が「後向きでもかまわない」と回答。
 
(12)乗降途中や走行中に危険や不安を感じたこと
 乗降中の危険な状況は、「スロープの傾斜が急(9件)」「スロープの固定が不十分なままでの乗降(8件)」が多い。
 走行中の危険や不安は、「急ブレーキによる動揺、転倒(22件)」「走行中に車いすが動いてしまう(9件)」「車いすの固定の不備(6件)」が多く、走行中における車いすの固定が不十分な状況が明らかになった。
 
表3-5-1 乗降途中や走行中に危険や不安を感じたこと その1
乗降中(26件)
スロープの傾斜が急(9件)
・(単に)スロープの傾斜がきつくて怖い。(3件)
・スロープがきつくて転倒しそうになった。
・スロープの傾斜が思っていたよりもきつく、初めて乗車した時、怖かった。
・ニールダウンしないまま、急勾配のスロープで使用した。
・スロープ付ワンステップバスは、歩道のないバス停で降りる時はスロープの傾斜が急なので、バックで安全に降りるのに気を遣う。
・ノンステップバスでもバス停面が路面である時、ニーリングしないとスロープ勾配が安全乗降するには危険である。バック転倒しかけたことが何回もある。
・スロープの角度が急なため前輪が持ち上がってしまい、後に転倒しそうになったことがある。
スロープを使用しない(2件)
・スロープが全部出せず、スロープなしで乗降させられた。
・スロープが全部出ていないのに、降りろと言われた。
スロープの固定が不十分なままでの乗降(8件)
・スロープの使い方が悪く、不確実な固定をする。
・スロープを乗務員が固定しない。
・ワンステップスロープ付バスに乗車する時に、スロープが完全に出ない状態で乗車させられた。
・ノンステップバスの引き出し式スロープの中に、スロープ上スロープの構造となるものがあるが、このスロープ上スロープの構造となるスロープは、スロープ上スロープの中間縁端で、電動車いすの前輪がふわーっと持ち上がり、バック転倒しかけたことが何回もある。
・乗務員が渡し板(スロープ)の上下がわからずに板がずれ落ちそうになった。
・三段階折りたたみ式のスロープが地面についていないのに乗せられた。
・スロープと車両の間に段差がある時に不安を感じる。
・スロープの一部にエッジがあり、降りにくく危険だった。
 
表3-5-2 乗降途中や走行中に危険や不安を感じたこと その2
乗降中(つづき)
スロープを収納せずに発進(1件)
・スロープを床下から引き出すタイプのノンステップバスで乗務員が板を収納せずに発進しそうになり、大声で注意したことがある。
雨天時にスロープがすべる(1件)
・雨天時はスロープがすべるので怖い。
スロープからの脱輪(1件)
・スロープを乗り降りする時にスロープから脱輪した。
乗降介助等に関する不安(4件)
・リフトに乗る時、乗務員が電動車いすのレバーに触れたため、リフトの板から落ちた。
・乗降時等の介助で雑にされるのが危険だと感じる。
・バックで降りる時は不安。
・ワンステップスロープ付バスに乗車した時、車内段差に電動車いすの器具がひっかかり、電動車いすが壊れて動かなくなってしまった。座席のたたみかたもわからなかった。
車いすの固定(10件)
車いすの固定の不備(6件)
・輪留めなしで発車させた。
・車いす固定金具を使用しない乗務員がいる。
・シートベルトをしない乗務員がいる。
・座席の前に車いす止めの板で固定するときがある。
・乗務員が乗せてくれるのはいいのだが、「その場でじっとしてて下さい。」と言われ、固定してもらえないまま、発進された。危険を感じ途中で呼びかけ、固定してもらった。他の方の乗車の妨げとなるので、しっかりしてほしい。
・固定をせずに走行して急ブレーキをかけられた時に危険を感じた。
ひじかけ等との固定ベルトの不具合(4件)
・車いすの固定ベルトは車いすの種類によって短いときがある。特に上の方のベルトは、固定できないことがあった。
・固定ベルトがはずれ、バスがカーブした時に車いすが動いて他の客に当たってしまったことがある。
・完全に固定された状態でも、ベルトのため前後左右の揺れがあり、座席に座っている時と比べて格段に不安定だし疲れる。
・ベルトの固定に緩みがあったようで方向転換の際、車いすが揺れ、不安を感じた。
 
表3-5-3 乗降途中や走行中に危険や不安を感じたこと その3
走行中(49件)
走行中に車いすが動いてしまう(9件)
・カーブの時に車いすが動いて、他の乗客にぶつかりかけた。
・簡易電動車いすは普通の電動車いすと違い、ブレーキをかけていても動くことが多いので、カーブ等では危険であり、単独で乗るのは怖い。
・車いすに輪留めをして固定していても坂では車いすが車内で滑って移動してしまう。自分は腕の力が強いのでポール等に掴まってこらえて車いすを引き戻すことができるが、腕の力の弱い人には大変危険だと思う。
・車いすの固定に大変時間がかかるので、乗務員が手を抜くことが多く、完全な固定をあまり受けたことはない。そのため、停車・発進の度に車いすが動いてしまい、とても危ない。
・固定具の固定がゆるく感じ、車いすが動いてしまうことが多々ある。動いてしまうことで、互いの車いす同士がぶつかり、ケガをしてしまうという不安がある。また緊急時に急ブレーキを踏まれたときのことを考えると不安で仕方がない。
・ノンステップバス乗車中、大きく右旋回された時、電動車いすが左に振られたことがある。
・ベルト固定せずに乗車していて、運転が乱暴で車いすが車内で勝手に移動してしまった時。
・道を曲がる時、前輪が動いて体が傾いて戻れなかったため、不安を感じた。
・最近の固定方法の方がきちんと固定されていないことが多く、ブレーキ時に車いすが動くことが多々ある。
急発進による動揺、転倒(7件)
・急発進(2件)
・急発進、急ブレーキの時、身の危険を感じた。
・急発進で固定がぐらついた。
・急発進によるウィリーで座位バランスを崩した。
・急発進のため前輪があがり後方に転倒、頭を打った。
・発車・停止の際の車両の揺れが怖い。
急ブレーキによる動揺、転倒(22件)
・急ブレーキ時に危険を感じる。(8件)
・急ブレーキがかかったりすると体が前に押されて落ちる場合がある。
・急ブレーキで車いすが動くので、ブレーキはやさしくしてほしい。
・急ブレーキをかけられると前につんのめりそうになる。
・急ブレーキ、急カーブの時に危険を感じた。
・急ブレーキで前に倒れた。
 
表3-5-4 乗降途中や走行中に危険や不安を感じたこと その4
走行中(つづき)
急ブレーキによる動揺、転倒(つづき)
・急ブレーキで前輪が上がり、ひっくり返りそうになった。(原文のまま)
・急ブレーキをかけた時に固定がはずれ、車いすが動き出し、怖かったことがある。
・急ブレーキや急発進、カーブを曲がる時など運転が荒い乗務員の時など車いすから落ちそうになった。
・急ブレーキをかけられて車いすが前に動いてしまい転倒しそうになった。
・ブレーキをかける時になるべく、静かに止めてほしい。
・運転が乱暴でカーブ、ブレーキの際にかなり揺れる時があった。車いすだけでなく、老人の方にもやさしい運転をしてほしい。
・運転が荒く、急ブレーキ・急発進のたびに電動車いすが大きく揺れ、恐怖感があった
・車いすの乗降時に乗務員の乗降装置扱い方法の不手際のため、タイムスケジュールに遅れたことあり、その時、当該乗務員はこの遅れを取り戻すため、急発進・急停止を繰り返し、乗客一同は総じて不安になったことがあった。
・止め具の器具がなくて、介助者が後ろで押さえていた時、車いすのブレーキはかけていたが、急ブレーキで前にずるずると滑ってしまい、一般乗客の方に迷惑がかかってしまった。
急なハンドル操作(3件)
・急旋回
・バスが急に曲がると不安を感じる。
・急ハンドルで車いすが車止めごと滑った。
カーブ走行中(3件)
・急カーブの場合、横のベルトをしていないと車いすが動いてしまうためとても危険。
・カーブ走行時、身体が傾くので怖い。
・カーブを曲がる時。
他の乗客の車いすへの接近(2件)
・満員の時に固定している車いすに乗客が寄りかかって無理に動かされる。
・走行中、乗客が車いすの近くまで来て乗車すること。
その他(3件)
・走行中の身体に直で響く振動。
・障害者を乗せている自覚がないのか、スピードが速く恐怖感があった。
・バスにより、かなりの揺れが生じたことがある。


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