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第3章. 車いすの乗降、固定装置全般に関する利用実態・ニーズの把握
 交通事業者、利用者等に対し、ヒアリング、アンケート等による車いすの乗降全般に関する実態調査を実施した。
 
3-1 車いす使用者のバス利用上の課題・ニーズの把握(利用者アンケート)
3-1-1 分析の視点
・バス車両設備等に対する車いす使用者の利用上の課題・ニーズ等を把握
・乗降の途中や走行中に危険や不安を感じた経験の把握
・乗車中の車いす固定の実態把握
・安全、快適な乗車のための意見、アイデアの収集
 
3-1-2 調査の概要
(1)対象者
 今までにノンステップバスを利用したことのある車いす使用者の方。
(2)対象地域
 ノンステップバスの運行している全国の主要都市。
(3)調査方法
 下表のように、関係団体(特定非営利活動法人DPI日本会議、社団法人全国脊髄損傷者連合会)の協力も得て郵送調査等で実施した。
 
表3-1 調査方法別 利用者アンケート調査の配布、回収数
調査方法 配布数 回収数 回収率
合計
特定非営利活動法人DPI日本会議を通じて全国主要都市へ調査票を配布し、郵送回収。注1) 218 318 101 31.8%
(社)全国脊髄損傷者連合会を通じて、東京都、神奈川県の会員に調査票を配布し、郵送回収。注2) 100
注1)DPI日本会議からの配布地域:東京都(多摩地区を含む)83、大阪市25、名古屋市25、札幌市25、仙台市10、富山市10、福井市10、京都市10、神戸市10、熊本市10(各市域とその周辺部を含む)。
注2)全国脊髄損傷者連合会からの配布地域:東京都、神奈川県。
 
3-1-3 調査結果
 
(1)回答者の属性
(1)回答者の性別
 アンケートの回答者となった車いす使用者の性別は、「男性」64.6%、「女性」35.4%である。
 
図3-1 回答者の性別
回答者数:99人
 
(2)回答者の年齢
 アンケート回答者の年代は、「40歳代」「30歳代」「50歳代」の順に多い。
 
図3-2 回答者の年齢
回答者数:83人
 
(3)回答者の障害の等級
 アンケートの回答者は車いす使用者、かつ「DPI日本会議」「全国脊髄損傷者連合会」の会員等が大半を占めるため、障害の等級は最も重い「1級」が9割以上を占めた。
 
図3-3 回答者の障害の等級
回答者数:99人
 
(4)車いすのタイプ
 アンケートの回答者が使用している車いすのタイプは、「電動車いす」が61.6%、「手動車いす」が44.4%であった。
 
図3-4 車いすのタイプ
回答者数:99人(複数回答)
<その他の内訳>
・簡易電動車いす(2件)
・電動アシスト
 
(2)ノンステップバスの利用頻度
 アンケート回答者(車いす使用者)のノンステップバスの利用頻度は、「1ヵ月に1〜3回」が最も多いが、「ほぼ毎日」「1週間に2〜3回」といった高頻度の利用者も多数含まれている。
 
図3-5 ノンステップバスの利用頻度
回答者数:100人
 
(3)バスの利用目的
 利用目的は、「買物(55.8%)」「レジャー(43.2%)」が多く「通院」は25.3%にとどまっている。
 
図3-6 バスの利用目的
回答者数:95人(複数回答)
<その他の内訳>
入院者の見舞い、障害者交流会、バス車両自体のバリアフリー点検、電車で乗り継ぎが不可能な時、地下鉄で行けない場所への外出、自宅から駅までや他のバスヘ乗り継ぐ時に利用
 
(4)利用時間帯
 
(1)現状の利用時間帯
 10時以降の日中の時間帯における利用が多い。18時〜20時の利用経験者も3割以上いる。
 
図3-7 現状の利用時間帯
回答者数:93人(複数回答)
 
(2)希望する利用時間帯
 8〜9時の最も混雑する時間帯における利用意向が高い。運行本数の少ない22時以降の利用希望者も非常に高い。
 
図3-8 希望する利用時間帯
回答者数:88人(複数回答)
 
表3-2-1 希望する時間帯を利用できない理由 その1
バスの運行本数が少ない(13件)
・バスがないから。(22時以降)
・バスの便がないため。(20〜22時)
・バスの本数が少ないので自然と乗れない。(時間帯無回答)
・バスの便数が少ない。(9〜10時、16〜18時、20〜22時)
・バスの本数が少ない。(9〜10時)
・夜遅い時間帯には走っていないから。(20〜22時、22時以降)
・本数が少ない。(20〜22時)
・利用率が少ない時間帯なので、本数も少ない。(22時以降)
・バスが運行していない。(22時以降)
・バスの運行が午後7時までに終了してしまうため。(20〜22時)
・本数が少ない。(始発〜8時、8〜9時、9〜10時、14〜16時、16〜18時、18〜20時、20〜22時)
・バスが1時間半に1本しかないため、利用しづらい。バスの時間に合わせて、予定を立てなければならない。(8〜9時、9〜10時、10〜12時、14〜16時、18〜20時、20〜22時、22時以降)
・常に乗りたいが、バスがない。(始発〜8時、8〜9時、9〜10時、12〜14時、14〜16時、16時〜18時、18〜20時、20〜22時、22時以降)
ノンステップバスが利用できない(16件)
・バスの本数が少なく、ノンステップバスはほとんどない。(22時以降)
・遊びに行っても、この時間にノンステップバスがあまりないから。(22時以降)
・遅い時間だとノンステップバスが走っていないから。(始発〜8時、20〜22時、22時以降)
・乗車したい時間にスロープ付のバスがない。(始発〜8時、20〜22時、22時以降)
・使うルート及び乗車したい時間帯にノンステップバスがあまりない。(8〜9時、20〜22時、22時以降)
・ノンステップバスがあまり走っていないから。(9〜10時)
・ノンステップバス及びその他の車いす対応バスの終バスの時間が早いので、その後は乗れなくなってしまう。(22時以降)
・終バス近くになるとノンステップバスが入庫してしまうことが多い。(8〜9時、20〜22時、22時以降)
・深夜高速バスのバリアフリー車両が極端に少ない。(始発〜8時、22時以降)
注)本節の自由回答は寄せられた回答をそのまま記載し、◇バスの本数が少ない(13件)等のように、同じ趣旨の意見を集約して件数を明示した。
 
表3-2-2 希望する時間帯を利用できない理由 その2
ノンステップバスが利用できない(つづき)
・ノンステップバスが配車されていない。(8〜9時、18〜20時、20〜22時、22時以降)
・ノンステップバスが走っていないから。(22時以降)
・ノンステップバスの運行がないため。(始発〜8時、22時以降)
・ノンステップバスではないから。(9〜10時)
・ノンステップバスが走っている時間でない。(始発〜8時、8〜9時、22時以降)
・この時間帯にノンステップバスが走っていないことが多い。(18〜20時、20〜22時、22時以降)
・帰宅が遅くなった時に使いたい。(22時以降)
運行ルートが限定されている(2件)
・運行されているルートも限られている。(始発〜8時、8〜9時、9〜10時、14〜16時、16〜18時、18〜20時、20〜22時)
・行きたい方向にバスが出ていない。(始発〜8時、8〜9時、9〜10時、12〜14時、14〜16時、16時〜18時、18〜20時、20〜22時、22時以降)
車内が混雑していて、利用しにくい(10件)
・車内が混雑していて、車いすを使用したままでの乗車がしにくい。(20〜22時)
・車内が混雑していて、車いすを使用したままでの乗車がしにくい。(8〜9時、18〜20時)
・車内が混雑していて、車いすを使用したままでの乗車がしにくい。(始発〜8時、8〜9時、9〜10時、14〜16時、16〜18時、18〜20時、20〜22時)
・車内が混雑していて、車いすを使用したままでの乗車がしにくい。(9〜10時、10〜12時、12〜14時)
・ラッシュ時は車内が混雑していて、車いすを使用したままでの乗車が無理。(8〜9時、20〜22時、22時以降)
・混雑時の利用は遠慮してしまう。地下鉄やタクシーの利用を優先する。(16〜18時)
・乗客が多い場合は、大きなスペースを空けてもらう際に気が引ける。(22時以降)
・バスの車内が混雑していて、車いすで乗車しにくい。座席をたたんだり、スロープを出したりの時間がかかり、渋滞する。(8〜9時、18〜20時)
・乗務員が操作に慣れていなくてラッシュ時に時間がかかると自分が焦る。(始発〜8時、8〜9時、22時以降)
・通勤・通学時にあたるため。(12〜14時、16〜18時、22時以降)
車いす使用者が複数いるので、利用できない(1件)
・車いす使用者が複数いる(22時以降)
道路混雑でダイヤに遅れがでる(1件)
・道路の都合のため、目的地到着の時間が読めない。(9〜10時、10〜12時、12〜14時)


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