日本財団 図書館


2-2 車両等のガイドラインにおける検討経緯
 交通バリアフリー法の制定以降における、既に定められている車両等のユニバーサルデザインに関わるガイドラインなどを整理した。
 国土交通省は、平成15年3月にとりまとめられた「次世代普及型ノンステップバスの標準仕様策定報告書」の趣旨に基づき、安全性及び利便性の高いノンステップバスの普及がより一層推進されるよう、標準仕様ノンステップバスの認定制度を創設し、平成16年1月19日から開始している。
 しかし、旅客船、バス車両のガイドラインにおいては、車いす固定装置の具体的な方式・強度規定、乗降装置の強度規定について明示されていない。
 
図2-6 車両等のガイドライン
※交通バリアフリー法(平成12年)
 
※バリアフリー新法(平成18年)
※1 交通エコロジー・モビリティ財団
※2 財団法人運輸政策研究機構
※3 国土交通省自動車交通局技術安全部技術企画課
 
注)自動車交通局では、標準仕様見直し等の際の参考とするため、関係者のニーズ、欧州の現状等を調査した、「バス車両における高齢者・障害者等の安全性に関する調査」(平成17年3月)を実施している。
 
2-3 バス車両の車いす乗降・固定装置に関わる基準・ガイドライン
 ノンステップバスの車いす乗降装置、固定装置に関わる、わが国及び海外の基準、ガイドラインを下表に整理した。
 車いすの路線バスヘの固定方法として、「ノンステップバス標準仕様」では、前向き乗車用および後ろ向き乗車用の2種類があげられている。
 
表2-1 ノンステップバスに関わる基準、ガイドラインの抜粋
(拡大画面:416KB)
参考1: 米国と英国のスロープの規格。
・米国:ADA 幅員76.2cm(30")、長さ(手動・電動車いす、電動3輪乗車可能)30"。勾配は1:12(約5度、8%)以下。
・英国:障害者諮問委員会DPTAC Low Floor Bus規格80cm(W)以上、105cm(L)以下。
参考2: 平成12年度 日本自動車工業会「前面衝突時におけるバス乗員の挙動解析に関する研究」における耐加速度値
(1)走行実験
・急制動試験:
速度60km/hから減速度2.9(m/s2≒0.3G)で停止
   〃   速度5.9(mm/s2≒0.6G)〃
速度20km/hから最大減速度で停止(目一杯ブレーキペダルを踏み込む)
・旋回試験:
3.9(m/s2≒0.4G)程度の右定常円旋回を20秒程度保持
     〃      左定常円旋回  〃
・レーンチェンジ:
速度60km/hで右車線から左車線へ車線変更(50m以内に3.7m横移動)
(2)スレッド衝撃実験(車いす固定ベルト用フックをスレッド上に取り付けて行う)
・試験速度:35km/h、最大加速度39.2m/s2以下は4Gとする、車いすのみ)
 4Gは車いすの固定方法検討のための試験のみで実施。4Gでのスレッド加速波形の加速度の持続時間は35km/hの場合と同等(約110msec)とする。
・乗員拘束:2点固定式、2点ELR式、3点ELR式
・乗車位置:1列目、2列目
・車いす:手動式、電動式
・車いすの固定方法:前向き(標準3点、偏心3点、ISO4点)、後向き(欧州背当て板+横ベルト)
 
図2-7  車いすを使用して自動車に乗車する際のシートベルトの装着方法(ISO)
l Diagonal shoulder belt
2 Pelvic belt
 
※出典:ISO/7176-19 Wheelchairs-Part 19: Wheeled mobility devices for use in motor vehicles
 
 車いす使用者の腰骨の適切な位置にシートベルトを装着することが明示されている。
 
参考:標準的な車いすの最大寸法(欧州の基準2001/85EECによる)
 
・JIS規格の車いすの最大寸法も下図に同じ。
 
Note:
 A wheelchair user seated in the wheelchair adds 50 mm to the overall length and makes a height of 1350 mm above the ground.
 
参考. EU等海外における基準
 
 公共交通機関に関する欧州、北米のガイドライン、基準を調査する。
 バス車両については、欧州審議会の指導書として、2001年11月20日に、旅客輸送用車両構造のEEC基準(規定)が公布されている(DIRECTIVE 2001/85/EC of special provisions)。
 
表2-2  バス車両における車いす使用者の利用を円滑にする技術装置に関する要件
(1)車いす使用者に対応した乗降口
 車いす使用者が通行することのできる出入り口のドアの最低幅は900mm以上とする。
 
(2)乗降口のスロープ
 わが国の平成18年3月における「ノンステップバス標準仕様」の改訂は、「地上高150mmの縁石より車いすを乗降させる際のスロープの勾配は12%(約7度)以下とする。ニーリングを使用しても良い。」に準じた内容である。
 標準仕様で定められていない要件としては、
・スロープ板の耐荷重は、300kg以上とする。
・外側の縁は、半径2.5mm以上に丸め、外側の隅は、半径5mm以上に丸めるものとする。
・スロープ板の展開中は、展開中であることが運転席に表示される。
・電動式スロープ板の延長および格納は、黄色の光の点滅と音響によって知らせる。スロープ板には、視認できる赤および白の反射型危険表示を外側の縁に付ける。水平動作中に15kgの負荷がかかったら自動停止する。
・手動式スロープ板は、(乗務員が)操作中に過度の力を必要としないようにする。
 
(3)車いす固定
a.(進行方向)前向き乗車
 確実に固定でき、非常時には容易にロックが解除できる、ベルトや固定装置に対しては、衝突安全性に係るテストを実施等が明示されているだけで、具体的な固定方式については言及していない。
 
b.(進行方向)後ろ向き乗車
 標準仕様で定められていない主な要件としては、
・前の座席裏のサポートまたは背もたれは、車いす1台あたり250daN±20daNの力に耐えることができるものとする。この力は、サポートまたは背もたれの中央において、車両の前方に向けて、車両の水平面に対して1.5秒以上にわたって加えるものとする。
・車いすの横方向への移動を抑止し、車いす使用者が簡単につかまることができる仕様の、収納式の手すりまたはこれに準ずる装置を車いすスペースの反対側(通路側)に装備する。


前ページ 目次へ 次ページ





日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION