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【生徒には日常化して使い易い「マンガ」−未来に対する嗅覚?−】
 末房――本校ではマンガを授業ではやっていません。おそらく今後も、やれないのではないかと思います。ただし、生徒はマンガが好きという以上に、自分を表現する大切な1つの方法としているので、私たちは生徒がマンガを描くことを支持していきたいと考えています。
 本校は美術と音楽の専門高校ということで、美術についても大変専門的な教育をしています。ひと昔前には、美術の生徒がマンガを描いていたりすると先生に注意されたものです。僕なども、マンガを描くと絵が荒れるから遠ざかりなさいなどと注意されましたが、今の生徒を見ていると、マンガと絵を別々の表現方法としてうまく使い分けているような感じがします。
 生徒がどういうものを描いているかプリントにしましたので、ご覧ください。以下は、数年前にまんが甲子園で最優秀賞をいただいたカートゥーン(1コママンガ)、まんが甲子園ブックバージョンで大賞を受賞した作品の1部、そして、本校漫画研究部の同人誌に描かれたもの、生徒会の機関誌、連絡用チラシに描かれたものです。
 
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 生徒会に限らず、図書室だより、各種委員会の案内などには、マンガを多用しています。マンガの分かりやすさ、親しみやすさを存分に使って楽しいものを作っています。生徒にとって、マンガが日常化していて、自分や色々なものを表現する手段として、1番使いやすいのではないかと思います。
 僕自身が、生徒がどのくらいマンガを好きなのかを数量的に把握するため、マンガをどの程度読んでいるかアンケートをとってみました。美術科のほかに、対照として本校音楽科、都立K高校、都立T高校の2校にもお願いしました。
 
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 「漫画をよく読む」生徒は平均49%で、ほぼ半数の生徒はよく読んでいるという自覚をもっています。美術科の生徒だけを見ると52%で平均より高めです。尚、その他の質問においても、美術科の生徒の回答は平均を上回っていましたが、それに対して音楽科の生徒は全般に平均を下回っていて、美術科と音楽科の生徒の違いがはっきり出ました。
 
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 また、「家にどのくらい漫画の本を持っていますか」という設問で、50冊以上持っている生徒の割合はよく読む生徒の割合とほぼ対応するので、よく読んでいると自覚している生徒はだいたい50冊以上はマンガを持っていると考えられます。
 時間がないので、詳細は省きます。以上です。
 
 谷川――特色ある3校のご提案をいただきましたので、少しご質問等を受けたいと思います。マンガが正課であるかどうかには関係なく、高校生がマンガにどう取り組んでいるかという話です。
 
 参加者1――高知県のまんが甲子園の実行委員であり、横山隆一記念まんが館館長をしております佐竹です。自分でも十数年前からマンガ科を持つデザイン専門学校を経営しています。岐阜県で知事さん以下、特にマンガに力を入れておられる理由は何でしょうか。
 
 纐纈――梶原知事はITに先進的に取り組んでおられ、IT関連の施設「ソフトピアジャパン」などもあります。マンガも造形美術としてそれに関連して、マンガ立県という考えが出てきたものと解釈しています。
 
 参加者1――特に岐阜県からマンガ家がたくさん出ているというようなことはなかったのですか。実は、私が十数年前から漫画科をやっているのも、高知県にはそういう風土があるからです。マンガ家の数を人口割にすると、全国でもトップクラスではないかと思います。そういうことからまんが甲子園もやっている訳ですし、マンガによる町づくりにも早くから取り組んでいます。
 
 谷川――他にありますか。はい、どうぞ。
 
 参加者2――マンガヴィジョンの清水と申します。都立芸術高校では、メディア芸術科ができるにもかかわらず、その中にマンガの教育が導入されないという理由はなぜですか。
 
 黒田――メディア芸術の中にマンガを入れるかどうかはこれからの問題です。実は本校を母体にしてもっと総合的な芸術高校を作るという構想がありまして、その中に先ほど言ったような形で新しい科目が設定されていくということで、これは今後の課題です。現在の本校のカリキュラムの中にマンガを正課として取り入れることは考えていません。今はかなり専門的な部分で時間を費やしていますが、週5日制になってこれまでの科目の時間を確保するだけでも大変なので、新たにマンガを1つの科目として設定する訳にはいかないのです。
 
 谷川――梶原岐阜県知事が、大変お忙しい中を駆けつけてくださいました。質疑を1時中断して、ご講演をお願いしたいと思います。


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