日本財団 図書館


わかりやすい自閉症基礎講座
〜自閉症スペクトラムの基本概念と対応〜
●自閉症に対する基本的理解
1)発達障害
2)診断と分類
3)伴いやすい精神・行動上の問題
4)疫学
5)病因・病態と認知の特徴
●自閉症のアプローチの基本(支援)
1)支援の基本的な枠組み
2)発達的観点からの支援
3)薬物療法
●自閉症の家族への支援Q&A
1)家族への支援の考え方
2)診断をめぐって
3)行動上の問題への対処
4)将来に向って
 
自閉症スペクトラム障害(ASD)の子どもの行動特性と親の対応
 
発達障害に対する親の認識と感情・行動
 
考慮すべき家族の側面
●親には2つの側面があり、その両方への支援を考える必要がある
◆子どもから影響を受ける←精神保健への配慮
◆子どもに影響を与える←療育の助言・援助
●家族の一人ひとりを尊重することが大切であり、同胞へも十分に配慮する
 
家族への支援にあたっての留意点
(1)家族へは支持的・援助的に接する
(2)子どもの目標と課題をきちんと示す
(3)家族を理解し、家族から学ぶ姿勢を大切にする
(4)家族員のバランスと家族の相互理解を高める
 
診断をめぐって
Q. 診断を家族にどのように伝えるか
Q. 診断を伝えられた家族をどのように支援するか
 
診断をめぐる問いを考えるにあたって
●診断は何のためにあるか
●臨床においては、適切な対応をして、認知・情緒の発達を促進して、社会適応能力の向上を図り、精神・行動上の問題を起こしにくくするためである
●この目的にかなうにはどのような伝え方がよいのか
 
診断名の意義
●子どもの特性についての理解を多くの人と共有できるための診断名である
●診断名にこめている意味が人によってかなり違う
●特性を確認することが基本
●それをまとめるものとしての診断名
●しかし、当初は特性や症状のみの確認にとどめざるを得ない場合もある
●いずれにしても対応や見通しの概略を一緒に伝えることによって診断の意味が明らかになる
 
診断に引き続く支援
 
●子どもや家族が生活しやすいような具体的な援助を心がける
(子どもや家族が参加しやすい活動の紹介も含む)
●子どもの発達や安定が実感できると、診断を受け入れやすくなる
(発達が進んでいることとそのぺースは他児と同じとは限らないことがバランスよく認識されると子どもの受け入れにプラスに働く)
 
行動上の問題への対処
Q. 行動上の問題への対処をどのように考えてどのように支援するか
Q. 行動上の問題に対する薬物の使用についてどのように考えてどのように支援するか
 
行動上の問題への対処
A: 長期予防のための働きかけ
B: 日常生活での予防的働きかけ
C: その行動への予防的対処
D: 行動上の問題への直接的対処
E: 行動上の問題の分析
 
こだわりについて検討する場合
★こだわりの特徴
◇対象
◇生起の状況(きっかけの有無など)
◇周囲の対応への反応
◇重症度(自傷や他害への発展の有無など)
など
★本人側の因子
◇診断(併発症も含む)
◇発達段階
◇脳器質的障害
◇成育歴
など
★環境側の因子
◇物理的な生活環境
◇課題や働きかけ
◇周囲の人々の安定性や一貫性
など
 
医療の活用
●行動上の問題への特別な対処が必要になる前から相談できるような医療機関をみつけておくことが望ましい
●医療機関から適切な診断と見通しが以前に伝えられていると、必要時に相談しやすくなる逆に言えば、医療機関(及びその紹介機関)は長期的経過の中でかかわりを考える必要がある
 
薬物療法導入にあたって考慮する観点
(1)精神・行動症状自体の重症度
(2)精神・行動症状が適応行動の獲得を妨げる程度
(3)周囲の働きかけ:働きかけが不適切でないか環境が本人をより不安定にしていないか検討する。それらの改善を図ってから薬物療法の導入を考える
(4)周囲との関係:不適切な関係が確立していて変更が困難な場合にはまず薬物療法によって緩和を図った方がよいことがある
(5)精神・行動症状や薬物療法に対する周囲の感情
 
薬物療法の留意点
(1)薬物療法の開始の際は、標的症状、期待される効果、副作用とその対策を理解しておく
(2)薬物療法を開始したら、服薬は決められたようにすることが原則。服薬が決められたように出来なかった場合は、その理由と実際の服用量などを報告することが望ましい
(3)強い副作用と思われることがあれば、早急に医療機関に連絡する
(4)薬物療法開始後の子どもの状態の変化には、薬物のみでなく他の働きかけや環境の変化なども影響する。また、子どもの状態は場面によっても大きく異なる
→薬物療法の的確な評価のためには、診療室での観察に加えて、家庭、療育・教育機関などの異なった場面からの情報が必要であり、連携が重要となる
 
薬物療法を進めるにあたって
●症状や診断と薬物とは必ずしも一対一対応しない
【例】“OCD様”状態の場合
典型的なOCDではSSRIが第一選択とされるが、クロミプラミンや抗精神病薬など他の薬物が有効なこともしばしば
●服用量によって効果や副作用が異なり、しかも至適の量は人によって違う可能性がある
●薬物に期待しすぎたり、その反動ですぐに薬物を否定したりせずに相談を
 
将来に向って
Q. 将来の見通しに関する家族の問いにどのように答えることができるか
Q. 将来に向って大切なこととして何を伝えるか
 
将来に向って考慮する点
●将来の見通しは、年齢が低いほど、知的に高いほど、自閉症状が非定型であるほど立てにくい
→短期(数ヶ月くらい)、中期(1〜数年くらい)、長期(5〜10年かそれ以上)の見通しをとりあえず立てると共に、その見直しの時期も考えておく
 
●親も本人も自己肯定感を持って、助言・援助を適切に取り入れつつ自分らしく生きられるにはという観点から考える
 
年代別の将来への不安
幼児期
どういう学校に入るのか
→→ ベストの学校はない
→→ よりよい方向へと協力しあえる環境を
学童期
思春期になったらどうなるのか
→→ 思春期は飛躍の時でも挑戦の時でもある
→→ それまでの蓄積の上にある
青年・成人期
就労や自立はできるのか
→→ 知的能力は参考になるが、それだけではない
→→ 総合的な評価、本人なりの自立のイメージも大切
 
「こころの発達」臨床教育センター公開シンポジウム
治療教育を考える
 
日時:2007年2月11日(日・祝)13:00-17:00(受付開始:12:00)
場所:東京大学安田講堂
参加費:無料(事前登録は不要です)
プログラム (英語講演には同時通訳がつきます)
司会:加藤進昌(東京大学大学院医学系研究科精神医学分野)
金生由紀子(東京大学医学部附属病院「こころの発達」診療部)
東大病院での治療教育の取り組み
蓑和巌(東京大学医学部附属病院「こころの発達」診療部)
児童精神科医療からの発達支援−危機介入としての入院治療−
西田寿美(三重県立小児心療センターあすなろ学園)
広汎性発達障害:社会認識記憶喪失マウスの研究から
東田陽博(金沢大学大学院医学系研究科)
自閉症スペクトラムのこころの発達−生涯発達の観点から−
神尾陽子(国立精神神経センター精神保健研究所)
自閉症の早期介入(Early Intervention in Autism)
Sally J. Rogers(UC Davis M.I.N.D. Institute)


前ページ 目次へ 次ページ





日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION