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Stage III-1(シンボル機能がはっきりと認められる段階)の特徴
<健常児では2歳から3歳くらいに相応>
言語理解
シンボル機能が確実になるが、一般性はない
身の回りの名詞や動詞の理解が可能
文字や数字に興味を持つ
経験に基づいたパターン的な理解に留まる
言語表出
1〜2語文を話す子どもが多くなる
遅延エコラリア、独語
対人・コミュニケーション
孤立または一方的な関わり
限られた場面での人との関わりは少し持てる
会話は不成立
生活習慣
基本的な身辺処理スキルは獲得している
(日常生活の慣れた場面で)
集団生活
慣れた集団場面では大きく外れずに参加できる
周囲を見て行動できる
異常行動
こだわり(日課、手順など)、興味の幅が狭い
自傷・他害
 
Stage III-1の日常の働きかけのねらい
 
(1)言葉の世界を豊かにする
(2)文字や数、比較など概念の基礎を作る
(3)簡単な2語文および言葉のやりとりができるようにする
(4)事前の声かけで納得し、行動を調節できるようにする
(5)対人関係を広げる
(6)身辺のことは自立的にできる
(7)初歩的な社会的スキルやマナーを身につける
 
Stage III-1の日常の働きかけの留意点
 
(1)療育者がこだわりばかりにこだわらない
(2)こだわりは良い方に活かす
(3)日課の中での課題のバランスを考える
(4)働きかけは先手必勝
 
Stage III-1の家族の支援における配慮
 
●Stage III-1では自閉症らしいこだわりやパターン的な関わりが最も目立ち、家族もそれに巻き込まれやすい
→適切な距離が取れるように援助する
●家族との間でだけこだわりが増強しており教師などとの間では大きな問題となっていないために、家族が周囲の人から理解を得られずいっそう追い詰められることがある
→このような可能性も考慮して家族の大変さに共感しつつも客観的な情報を集める
 
Stage III-2(概念形成の芽生えの段階)の特徴
<健常児では3歳台から4〜5歳くらいに相応>
言語理解
文字通りの理解をしており、状況の文脈を統合した理解が難しい。部分的に高い記憶力
言語表出
3語文以上の言葉を話す
対人・コミュニケーション
対人関係の希薄さは減るが、人との協調性のなさは残る
遊び
象徴遊びはみられるが、ごっこ遊びは難しい
異常行動
文字や数字への強い興味を示したり、独特な質問癖があったりする
 
Stage III-2の日常の働きかけのねらい
 
(1)自分で考えて表現したり行動できるようにする
(2)数や言葉を日常の中で育てて応用できるようにする
(3)体験したことや情報を言葉で伝えられる
(4)事前の言葉かけで予定を理解して行動を調節できる
(5)大人の介助で子ども同士のやりとりが楽しめる
(6)地域での社会的なスキルや家族員としての自覚を育てる
(7)意志や自発性を育てる
 
Stage III-2の日常の働きかけの留意点
 
(1)環境の構造化は緩和する方向で(一般的に用いられる程度の視覚的手がかりと簡潔な言葉かけ、課題の構造化など)
(2)一方的な指示にならないようにする
(3)本人なりの趣味を尊重しつつ余暇活動を広げる
(4)社会経験を広げる
 
Stage III-2の家族の支援における配慮
 
●Stage III-2の幼児であればより上の発達段階へ進む可能性が実際にもかなりあり、家族がそれを期待して狭義の学習のみにとらわれることがあるので、行き過ぎないように留意する
●一番になるとか自分のペースでイメージ通りにするなどのこだわりが目立つこともあるので、それをどう理解してよいか家族が迷ったり全面対決に走らないように、障害と発達水準の特徴を説明しつつ援助する
 
発達段階に応じた行動の相違の例
 
Stage IV(基本的な関係の概念が形成された段階)の特徴
<健常児では4〜5歳台から7〜8歳くらいに相応>
言語理解
「なぜ?」の問いに答えられるようになる。助詞の使い方や受動態と能動態の使い分けはまだちぐはぐである。重文は使えても複文は難しい
言語表出
会話は一方的になりがちだが、特定の話題であれば友だちと往復会話ができる
対人・コミュニケーション
人への関心は高まるが、チーム意識は薄い
友だちと相談することや社会的なマナーの理解は難しい。自尊心が高まり、自分で目標を設定してがんばろうとすることもでてくる
遊び
趣味といえるような興味や関心が出てくる。言葉で友だちを誘って自分の好きなゲームを開始することもある
異常行動
こだわりや常同行動はなくならなくてもちょっとした注意でコントロールできるようになる
 
Stage IVの適応行動についての留意点
 
●小学校高学年以上では親から離れて一人で行動する体験をする
●自己コントロール力を培う(事前の予告や約束も活用する)
●白己主張を言葉で表現できるようにする。さらに、状況を見て発言できるようにする
●体験を友だちと分かち合えるようにする(チームでのゲームなども活用する)
●友だちや異性への関心を適切な行動や言葉で表現できるようにする
●家族の一員、社会の一員としての自覚を促すと共に、家事などの具体的な行動も行うようにする
 
Stage IVの家族の支援における配慮
 
●Stage IVになると一人ひとりの個性がはっきりしてくるので本人らしさをいっそう大切にすることを勧める。
●少なくとも学年が低いうちは普通学級で生活する可能性が高いので、学校、他児やその保護者などに本人の理解を促す必要が生じることが多い。親の理解と受けとめの程度を見ながらこのような周囲とのかかわりを支援する。
 
Stage V以上の特徴
<健常児では7〜8歳以上に相応>
 上限はなく個人差が大きいが、治療教育を求めてくる場合には以下のような特徴を有することが多い
言語表出
日常会話には困らなくても、不特定の人に話すことはまだ苦手である。会話は一応できるようになるが、パターン化していて言葉の遅れを感じさせることもある
対人・情緒
人の気持ちが読み取れずに場にあった行動ができないことが多い。プライドが高く尊大な印象を与える人もいる。周囲のことに少し気づくようになると、感情の起伏の激しさが見られることがある
異常行動
感覚過敏、独り言、物事に対する細かなきまり、常同行動も少なからず認められる。ストレスがかかると精神医学的症状を呈することが多い


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