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自閉症スペクトラム障害(Autism spectrum disorders: ASD)と広汎性発達障害(Pervasive developmental disorders: PDD)
 自閉症スペクトラム障害(Autism spectrum disorders: ASD)は、自閉症及びその近縁の疾患が共通する傾向を有して一つのスペクトラムを形成するという考えから名づけられた
 DSM-IV-TRやICD-10の広汎性発達障害(Pervasive developmental disorders: PDD)とほぼ同じであるが、個々の診断カテゴリーヘの分類よりもスペクトラムを意識している
 
広汎性発達障害(PDD)のカテゴリー
 
自閉症スペクトラム障害(ASD)の広がり
 
アスペルガー障害(Asperger's disorder)(DSM-IV-TR)
A. 対人的相互作用の質的な障害(2つ以上の症状)
B. 行動、興味および活動の、限定的、反復的、常同的な様式(1つ以上の症状)
C. その障害は社会的、職業的、または他の重要な領域における機能の臨床的に著しい障害を引き起こしている
D. 臨床的に著しい言語の遅れがない(例:2歳までに単語を用い、3歳までにコミュニケーション的な句を用いる)
E. 認知の発達、年齢に相応した白己管理能力、(対人関係以外の)適応行動、および小児期における環境への好奇心などについて臨床的に明らかな遅れがない
F. 除外診断(他の特定の広汎性発達障害、統合失調症)
 
特定不能の広汎性発達障害
(Pervasive developmental disorder not otherwise specified: PDDNOS)(DSM-IV-TR)
 自閉症の3主徴をいくらかは伴っているが、特定のPDD、統合失調症、統合失調症型人格障害、または回避性人格障害の基準を満たさない
その一部である非定型自閉症はICD-10では
●発症年齢上の非定型性(3歳以降)
●症候上の非定型性(症状の数が基準以下)
●発症年齢および症候の両方の非定型性
に分けられている
 
PDDNOSの異質性
 特定のPDDの診断基準を満たさない自閉症スペクトラム障害(ASD)であり、いくつかのパターンがありうる:
●現在の状態像はアスペルガー症候群だが、一過性の言語発達遅滞または軽度の認知障害の既往がある
●現在の状態像は自閉症だが、発症年齢が遅い
●知的な遅れが重くて自閉症と確診できない
●(将来は自閉症の診断基準を満たしそうだが)低年齢過ぎて確診できない
●対人関係やコミュニケーションの障害は明確にあるが、常同的・反復的行動が目立たない
●3主徴のいずれもあるが、軽度である
 
高機能とは
●高機能とは、知的な遅れがないという意味であり、IQが遅滞域ではない70以上、または正常域である85以上である場合を指す
●社会生活における機能が高いという意味ではない
 
高機能自閉症スペクトラム障害(ASD)の範囲
●ASDの中で知的に遅れがない場合としては、高機能自閉症、アスペルガー症候群、高機能PDDNOSが考えられる。言語発達の遅れがなくアスペルガー症候群と診断された児の中には経過中にIQが70を下回る場合もあるが、一括して高機能ASDに含まれていると思われる。
 
高機能自閉症とアスペルガー症候群
認知、運動、対人面などでの相違の指摘があった
高機能自閉症:視知覚課題が得意で作業能力が高い;他者との関わりを求めない
アスペルガー症候群:言語発達は良好であるが、不器用;他者との関わりを求めるが、そのやり方が不適切または奇妙である
 同胞の中に自閉症とアスペルガー症候群の両方が存在する、自閉症が成長するに従ってアスペルガー症候群と区別したい臨床像を示すなどから
 両者が全く別個の疾患とは言えないとなった
 
対人関係のタイプ(Wingの分類)
年齢や発達によってタイプが移行することがある
本人に合わせた支援を考える上で参考になる
孤立型
受動型
積極−奇異型
●尊大型
 
伴いやすい精神医学的状態
●てんかん
●“強迫性障害様”状態
●トゥレット症候群
●周期性気分変動
●心因反応と神経症様状態
●精神病様反応
●カタトニア
 
伴いやすい精神医学的状態<1>
てんかん
典型的な自閉症で発症頻度は1/4以上とされる
初発時期については、幼児期と思春期に二峰性の分布を示す
 
“強迫性障害(OCD)様”状態
 
伴いやすい精神医学的状態<2>
トゥレット症候群
●多様な運動チックと1つ以上の音声チックが1年以上持続する重症なチック障害
●ASDでは一般より頻度が高く、併発すると、やってはいけないと思うとかえってやってしまうような行動上の問題が目立つ
周期性気分変動
●爽快気分(躁状態)や抑うつ気分(うつ状態)を確認することが難しく、食欲や睡眠を含めた行動の変動から気分の変動を推察せざるを得ないことがある。逆に、知的な遅れが重くても行動面からある程度は判断できる。思春期に認められることもある
 
伴いやすい精神医学的状態<3>
心因反応と神経症様状態
●反応を起こしやすいにもかかわらず、見過されやすい
精神病様反応
●相手の気持ちや状況が理解できず被害的になり興奮するなど精神病に類似した行動を示すこともある
カタトニア
●奇異な姿勢のままであったり奇異な運動を繰り返したり、動かそうとしても硬直して動かないなどである。一転して過剰な動きを示すことがある
●統合失調症や気分障害と関連づけられてきたが、思春期以降の自閉症で認められることがある


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