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わかりやすい自閉症基礎講座
〜自閉症スペクトラムの基本概念と対応〜
金生由紀子
東京大学医学部附属病院「こころの発達」診療部
 
2007/1/13
日本財団 2F 大会議室
わかりやすい自閉症基礎講座
〜自閉症スペクトラムの基本概念と対応〜
●自閉症に対する基本的理解
1)発達障害
2)診断と分類
3)伴いやすい精神・行動上の問題
4)疫学
5)病因・病態と認知の特徴
●自閉症のアプローチの基本(支援)
1)支援の基本的な枠組み
2)発達的観点からの支援
3)薬物療法
●自閉症の家族への支援Q&A
1)家族への支援の考え方
2)診断をめぐって
3)行動上の問題への対処
4)将来に向って
 
発達障害とは
ICD-10における心理的発達の障害(F8)
(a)発症は常に乳幼児期あるいは小児期であること
(b)中枢神経系の生物学的成熟に深く関係した機能発達の障害あるいは遅滞であること
(c)精神障害の多くを特徴づけている、寛解や再発がみられない安定した経過であること
F80〜F83特異的発達障害+F84広汎性発達障害
心理的発達の障害の定義にあてはまるものを広く発達障害とする
精神遅滞、注意欠陥/多動性障害(AD/HD)などを含む
 
発達障害者支援法と発達障害
発達障害者支援法
(平成17年4月施行)
「発達障害者の心理機能の適正な発達及び円滑な社会生活の促進のために発達障害の症状の発現後できるだけ早期に発達支援を行うことが特に重要である」との観点から、発達障害者の支援を目的とする
 
発達障害者支援法における発達障害
●自閉症、アスペルガー症候群その他の広汎性発達障害
●学習障害
●注意欠陥多動性障害
●その他これに類する脳機能の障害であってその症状が通常低年齢において発現するもの
発達性協調運動障害、トゥレット症候群などを含むだろう
発達障害のうちで精神遅滞は以前から知的障害者福祉法で対応されていた
 
特別支援教育と発達障害
●特別支援教育とは、これまでの特殊教育の対象の障害だけでなく、その対象でなかった障害のある児童生徒に対してその一人一人の教育的ニーズを把握し、当該児童生徒の持てる力を高め、生活や学習上の困難を改善又は克服するために、適切な教育や指導を通じて必要な支援を行うものである。
 平成19年度にはすべての小・中学校で支援体制を整備することになっている。
 
特別支援教育の対象には以下を含むとされる
●学習障害(LD)
●注意欠陥/多動性障害(ADHD)
●高機能自閉症
通常学級(+通級)で対応できる発達障害
 
知的な遅れは無いが学習面や行動面で著しい困難を示すと担任教師が回答した児童生徒の割合
(平成14年全国実態調査)
 
学習面や行動面で著しい困難:6.3%
 
発達障害の分類
認知的症候群と行動的症候群とに分けることができる
認知的症候群:認知の低さや不均衡を特徴とするもの
全般的な低さ→精神遅滞
不均衡→学習障害
行動的症候群:知、情、意という精神機能の障害が行動症状として表出されたもの
広汎性発達障害
注意欠陥/多動性障害(AD/HD)
運動症状で定義されるもの
発達性協調運動障害
トゥレット症候群
         など
 
自閉性障害(Autistic Disorder)(DSM-IV-TR)
A. 以下の(1)、(2)、(3)から合計6つ(またはそれ以上)、(1)から2つ、(2)と(3)から1つずつの項目を含む
(1)対人的相互反応における質的な障害(4症状中)
(2)コミュニケーションの質的な障害(4症状中)
(3)行動、興味および活動の限定された反復的で常同的な様式(4症状中)
B. 3歳以前に始まる、以下の領域の少なくとも1つにおける機能の遅れまたは異常:
(1)対人的相互作用、(2)対人的コミュケーションに用いられる言語、または(3)象徴的または想像的遊び
C. 除外診断
 
対人的相互反応における質的な障害
(a)目と目で見つめ合う、顔の表情、体の姿勢、身振りなど、対人的相互反応を調節する多彩な非言語性行動の使用の著明な障害
(b)発達の水準に相応した仲間関係を作ることの失敗
(c)楽しみ、興味、達成感を他人と分かち合うことを自発的に求めることの欠如(例:興味のある物を見せる、持って来る、指差すことの欠如)
(d)対人的または情緒的相互性の欠如
 
コミュニケーションの質的な障害
(a)話し言葉の発達の遅れまたは完全な欠如(身振りや物まねのような代わりのコミュニケーションの仕方による補おうという努力を伴わない)
(b)十分会話のある者では、他人と会話を開始し継続する能力の著明な障害
(c)常同的で反復的な言語の使用または独特な言語
(d)発達水準に相応した、変化に富んだ自発的なごっこ遊びや社会性を持った物まね遊びの欠如
 
行動、興味および活動の限定された反復的で常同的な様式
(a)強度または対象において異常なほど、常同的で限定された型の1つまたはいくつかの興味だけに熱中すること
(b)特定の機能的でない習慣や儀式にかたくなにこだわるのが明らかである
(c)常同的で反復的な衒奇的運動(例:手や指をぱたぱたさせたりねじ曲げる、または複雑な全身の動き)
(d)物体の一部に持続的に熱中する
 
3主徴以外でしばしば問題になる症状
●感覚異常・過敏
●不器用を含めた運動症状
●睡眠障害
●多動
年齢が上がるにつれて減少する傾向
●自傷、他害、器物破損などの攻撃行動
●フラッシュバック
年齢が上がるにつれて増加する傾向


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