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わかりやすい自閉症基礎講座
横浜市総合リハビリセンター
発達精神科
本田秀夫
 
自閉症の基礎知識
自閉性障害の診断基準(DSM-IV)
A. 発症時期
 3歳前から、コミュニケーション、愛着、象徴あそびのいずれかに発達の異常がある
B. 症候
(1)社会的相互交渉の質的異常
(2)コミュニケーションの質的異常
(3)常同的・反復的行動と興味・関心の著しい限局
C. ほかの発達障害や社会−情緒的反応からの2次的な状態によるものではない
 
社会的相互交渉の質が異常
社会的相互交渉とは:
視線、表情、姿勢、友人関係、他人の情動に対する反応、喜びや興味や達成感を分かちあう姿勢など
 
自閉症の人は・・・
ひとりを好む、受け身な態度、一方的すぎる、人情に疎い
 
コミュニケーションの質が異常
言語
話し言葉の遅れ、エコラリア(反響言語、オーム返し)、抑揚の異常、言語指示がわからない、会話がかみあわない、敬語が不自然、皮肉が通じない、たとえ話しがわからない
 
非言語
身振り、指差し、まなざし、言外の意味、話の文脈、などの理解ができない
 
限局しパターン的な興味と行動
商標・時刻表・天気図・電話帳などへの偏った興味
自分の身体を用いた常同的な遊び
ごっこ遊びやルール遊びの乏しさ
変化への強い抵抗(パニック、自傷)
 
「三つ組の症状」は、こう理解するとよい
1. 対人感情(共感、同情、尊敬、軽蔑・・・)を交えて人に接する
<社会的相互交渉>
2. 言語、身振り、表情、視線を人との情報交換に用いる
<コミュニケーション>
3. 物事と人の両方にバランスよく注意・関心を配分する
<関心の寄せかたと実際の関わりかた>
(ICD-10, DSM-IV)
自閉症の人に共通の心理
A. 感情の動き方
B. 物事の理解の仕方
C. 興味の持ち方
 
感情の動き方
■予想通りになって当然、予想通りにいかないと極端に不安
■人情では感情が動きにくい
■聞いただけでは納得できない「論より証拠」「百聞は一見にしかず」
■目に映った物事にすぐ影響を受けてしまう
■急に身体に外力がかかると極端に驚いてしまう
■特定の感覚刺激が大嫌い、あるいは大好き
■何かすることがないとソワソワ
■肯定的な思い出よりも否定的な思い出が残りやすい
 
物事の理解のしかた
わかりやすい:
目に見えること、構造が単純なこと、いつも同じこと
 
わかりにくい:
聞きことば、物と物との関係、人間関係、他人の考え、場の状況
 
興味の持ち方
特定の物事に強く興味が偏る
絶対に興味をもたないこと:
他人の気持ちを動かすこと
興味を持つ可能性があること:
上記以外のすべてのこと
 
‘こだわり’保存の法則


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