精神科薬物治療の現状
1 薬物治療は治療体系の一部
2 診断は操作的診断基準
3 多くは生物学的背景が分かっていない
4 症候群の可能性がある
5 目標症状の選定
薬物治療の特徴
1 治療導入の容易さ
2 効果の個人差の存在
3 コンプライアンスの存在
4 薬物治療への意識の違い
小児精神科薬物治療の現在
1 疾患により、薬物治療の意味は異なる
対症療法、他の治療法との相乗効果など
2 ほとんどの薬物は成人の向精神薬を援用
3 小児用の薬物として認められているものはほとんどない
「15才未満についての知見はない」
4 医師の責任のもとに投与されている
5 小児精神科薬物の治験は難しい
薬物の種類(向精神薬全般)
・抗精神病薬
・気分安定薬
・抗うつ薬
・抗不安薬
・抗てんかん薬
・中枢刺激薬
・脳代謝改善薬
・その他
抗精神病薬
*本来は統合失調症の興奮や幻覚・妄想に使用
*副作用に注意する必要がある
・フェノチアジン系
クロルプロマジン、レボメプロマジン、プロペリシアジン、チオリダジンなど
・フェノチアジン系
ハロペリドール、ピモジド、ブロムペリドールなど
・ベンズアミド系
スルピリド、スルトピリドなど
・非定型
リスペリドン、クエチアピン、オランザピンなど
主な非定型薬
一般名 |
製品名 |
特徴・働き |
リスペリドン |
リスパダール |
わが国初の非定型
ドーパミン、セロトニン系遮断 |
ペロスピロン |
ルーラン |
パーキンソン症状が少ない
ドーパミン、セロトニン系遮断 |
クエチアピン |
セロクエル |
陽性・陰性症状にも効果あり |
オランザピン |
ジブレキサ |
陽性症状にも効果がある |
アリビプラゾール |
アビリファイ |
これから国内で発売 |
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抗精神病薬と錐体外路系の副作用
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症状 |
副作用の内容 |
急性 |
パーキンソン症状 |
体の硬直、無表情、手指の振戦、前屈、小股歩行など |
ジストニア |
筋肉の異常緊張、斜頚、舌突出など |
アカシジア |
静坐不能、ムズムズ感 |
遅発性 |
ジスキネジア |
口をモグモグ、舌突出など
(高頻度、無痛) |
ジストニア
*ピサ症候群 |
筋攣縮など(低頻度、痛み) |
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*脳の線条体のドーパミン伝達異常(受容体の感受性亢進)
*非定型抗精神病薬への切り替え
*抗パーキンソン病薬の併用
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気分安定薬
*もとは抗てんかん薬が多い
・カルバマゼピン、バルプロ酸ナトリウム
*抗躁薬も効果がある
・炭酸リチウム
*血中濃度を測定できる薬剤が多い
抗躁薬と種類
一般名 |
製品名 |
特徴 |
副作用 |
炭酸リチウム |
リーマス |
優れた抗躁作用
再発予防効果
効果発現が緩徐 |
リチウム中毒
(高熟、粗大振戦、筋肉攣縮)
血中濃度測定 |
カルバマザピン |
テグレトール |
優れた抗躁作用 |
皮疹、めまい、貧血など |
バルプロ酸 |
デパケン
バレリン |
炭酸リチウムに追加して使用 |
食欲低下、嘔吐など |
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抗うつ薬
*本来はうつ病の治療に使われる。
*抗うつ薬はこだわりにも効果がある。
*てんかん閾値を下げる可能性がある。
・イミプラミン、トラゾドン、フルボキサミン、パロキセチン、ミルナシプランなど
4種類の抗うつ薬
第一世代 |
1960年代より |
三環系抗うつ薬 |
第二世代 |
1980年代より |
四環系抗うつ薬 |
第三世代 |
1999年登場 |
SSRI(セロトニン再取り込み阻害薬) |
第四世代 |
2000年登場 |
SNRI(セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬) |
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第3世代、第4世代の抗うつ薬
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一般名 |
製品名 |
特徴 |
SSRI |
フルボキサミン |
ルボックス
デプロメール |
うつ病以外の症状(強迫症状など)にも効果がある
吐き気などの副作用薬の併用に注意 |
パロキセチン |
パキシル |
SNRI |
ミルナシプラン |
トレドミン |
効き目が出やすい
副作用が少ない |
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SSRI/SNRIと小児のうつ病
パロキセチン:
(英国);うつ病(18才未満)で、自傷、自殺の危険性→禁忌→慎重投与
理由:(1)EBMに欠ける、(2)他の抗うつ薬も同様の傾向、(3)成人でも同様
(米国);英国に追随→禁忌→慎重投与
(日本);他国に追随→禁忌(18歳未満の大うつ病)→?
フルボキサミン他:
(英国);18才未満のうつ病には慎重投与
(米国);同上
(日本);同上
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