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2006 資料集
分かりやすい自閉症基礎講座
−支援の基本−
2006.10.28
ペアレントメンター養成講座
大阪市立中央青年センター
東京都立梅ヶ丘病院 市川宏伸
 
アスペルガー障害の特徴と対応
ガイドブック アスペルガー症候群(トニー・アトウッド著:富田真紀他訳:東京書籍)より
(1)社会性の欠如
・友人を作る意欲・能力に欠ける
・社会的・感情的交流の困難
(対応)
・他の子どもを見て、行動の目安とするよう教える
・その子どもに対する上手な接し方のモデルを示す
・本当はどうすればよかったかを、分かりやすく示す
・適切性に欠ける社会的ふるまいの実例を示す
(2)言語の問題
・表面的によく熟達した表出言語
・形式的で細かなことにこだわる言語表現
・意味の取り違えなどの理解の悪さ
(対応)
・共感する時の言い方の模範を示す
・こちらの言ったことや指図が誤解されている可能性
・抽象的な表現やあいまいな表現を避ける
・指図を繰り返し、単純でやさしい言葉に置き換える
(3)特定の興味とこだわり
・興味の幅の狭さ
・固定した無目的な行動
・他人への押し付け
(対応)
・楽しみと息抜きを得る手段を考える
・監督下におき、長期間の没入を避ける
・時間の観念と、予定した活動の順序を示すスケジュールを教える
(4)不器用な運動機能
・手先の不器用さ
・不随意運動と奇妙な姿勢
(対応)
・ワープロやパソコンが使えるようにする
・二つ以上の動作の協応をはかる
・なんらかの運動機能障害を検討する
(5)認知の問題
・思考の柔軟性の欠如
・学習上の困難
・現実逃避としての想像
(対応)
・あるやり方に代わる別のやり方を考える練習をする
・独自な方法でうまく行っている場合は、そのやり方を認めて発展させる
・想像的世界を逃避や楽しみの一形態としてとらえる
 
自閉症児(?)が来院したら
・乳幼児期:診断および療育、情報提供・・・外来、幼児デイケア、療育プログラム、入院治療
・学童期:行動障害への対応・・・外来、グループ治療、入院(第一種自閉症施設)
・思春期以降:行動障害への対応、公的扶助・・・外来、入院
 
TEACCHの基本理念とは
−自閉症のTEACCH実践より−
1 自閉症の特性を子どもの観察から理解
2 親と専門家が協力
3 子どもの弱点を補う環境調整
4 個別治療教育プログラムの作成
5 構造化された教育
6 認知理論と行動理論を重視
7 長所と短所を正確に認識
8 ジェネラリストとしての専門家
9 生涯にわたる援助
 
機能による分類(ド・マイヤーを改変)
(1)高機能:正常の知的水準
コミュニーケション可能
通常教育可能
(2)中機能:軽度精神遅滞
単語と簡単なやりとり言語
社会的認知の障害
(3)低機能:重度精神遅滞
言語交流困難
低水準の社会生活機能
 
高機能自閉症と経過
(1)正常知能
・高校、大学への進学可能
・対人関係の問題(就職)
(2)正常下限
・特定分野の能力
・論理的思考の欠如
・要求水準と現実能力の乖離
・思春期以降の社会適応上の破綻
 
中機能自閉症と経過
・個別的対応、構造化された教育の必要性
(少人数学級の有効性)
・独自の認知構造、情報処理過程
(全体的把握の困難性)
(理解困難とかんしゃく・こだわり)
 
低機能自閉症と経過
(1)身辺自立の困難
・生活機能の習得
・言語的交流の困難
(2)身辺自立の成立
・言語機能の習得
・社会的機能の習得
 
・知覚の過敏、認知の障害、注意指向性の困難
 
自閉症とアスペルガー障害の経過
乳幼児期 就学前 学童期 思春期 成人期
アスペルガー障害 知的には正常
言語面は通常?
情緒的相互性の欠如
特定の物への興味
学力は普通以上(高校・大学へ進学)
友達関係の困難
特別な興味・能力
いわゆろる「おたく」
不適応による精神病様状
(被害関係念慮・気分障害)
協調性の欠如
社会性の欠如
特殊な才能
高機能自閉症 知的には正常
意思疎通可能な言語
情緒の未熟性
特定の物への興味
通常教育可能(高校・大学へ進学)
論理的思考の困難
友人関係の困難(無視・いじめ)
瞬間想起現象(記憶力)
不適応による精神的様状
(被害関係念慮・気分障害)
社会的自立に困難
(対人関係の障害)
要求水準と現実能力
中機能自閉症 軽度精神遅滞
やりとり可能な言語
極端な過敏性
呼名回避
視線回避
心身障害児教育が多い
部分的に突出した知能 
認知構造・情報処理過程の障害
 
不適応に基づく心身症・神経症様症状
(時に医療が必要)
社会生活に援助必要
要求水準と現実能力
 
一部は知的障害施設
低機能自閉症 中・重度精神遅滞
言語ほとんどなし
 
「人見知りの欠如」・常同反復行動
多動・横目遣い・過敏性・集団参加困難
養護学校教育が多い
時に強度行動n障害の出現
(激しい「こだわり」・自傷・「パニック」)
(時に医療が必要)
性的問題(自慰行為・一方的興味)
精神遅滞が前面
 
社会生活困難
知的障害施設
(入所・通所・GH)


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