結果と考察
AQP5およびAQP1蛋白質発現に対する自律神経切断およびムスカリンアゴニスト投与の影響:
Fig.3
まず、副交感神経(鼓索神経)を切除したラットにおける顎下腺重量とAQP5蛋白質レベルを解析した。その結果、副交感神経切除(CTD)を行った場合、術側の顎下腺相対重量(腺重量/体重)は直ちに減少し、術後1週以降4週までにおいて対照側の約60%で推移した。この術側と対照側での腺相対重量の違いには有意差が認められた(P<0.01、n=5、Fig.1a)。また、術側の対照側に対するAQP5蛋白質レベルの相対率は術後徐々に減少し、対照側(NT)との有意差(p<0.05)が術後2週目から認められ、4週目にはこの率は対照側の37±9.45%(p<0.01、n=5)にまで減少した(Fig.1b)。AQP1発現レベルは術後4週目においても有意に減少しなかった(Fig.2a)。交感神経切除(CSTD)後4週において、顎下腺相対重量(腺重量/体重)は対照側の約81.00±3.61%(P<0.01、n=5)にまで減少したが、AQP5蛋白質発現レベルに顕著な差が認められなかった(Fig.2b)。M3受容体アゴニストである塩酸セビメリンを、1日1回、1週間経口投与(10mg/kg体重)すると、副交感神経切除によって減少したAQP5蛋白質発現レベルは有意(P<0.01、n=5)に回復した。また、副交感神経切除による影響が認められなかったAQP1蛋白質発現レベルは塩酸セビメリン投与により有意に増加した(P<0.05、Fig.3a)。ピロカルピンを経口投与(0.3mg/kg体重)しても、副交感神経切除により減少したAQp5蛋白質発現レベルは回復しなかった(Fig.3b)。なお、顎下腺重量は塩酸セビメリン投与により増加しなかった。
Fig.4
Fig.5
AQP5およびAQP1 mRNA発現に対する自律神経切断およびムスカリンアゴニスト投与の影響:ノーザンブロティングによって検出したAQP5 mRNAに相当する1.6kbのバンドの強度は副交感神経切除後の対照側(R、C)と術側(L、D)の間で大きな差は認められなかった(Fig.4)。リアルタイムPCRによって確認された各群AQP5 mRNAの相対値(無処置群:NT、100とした)は各群間に有意差は認められなかった(n=5、Fig.5)。副交感神経切除(CTD)によるAQP5蛋白質レベルの減少および塩酸セビメリン(CM)投与によるAQP5およびAQP1蛋白質レベルの増加はmRNA発現レベルの変動に起因するのではないことが考えられた。
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