中国人研究者・医療技術者招聘助成 1件
平山 晃康 日本大学松戸歯学部
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−日中医学協会助成事業−
日本大学松戸歯学部病院における顎顔面外傷の動向
研究者氏名
曲 紅梅
中国所属機関
清華大学玉泉病院歯科
日本研究機関
日本大学松戸歯学部脳神経外科
指導責任者
教授 平山 晃康
共同研究者
浅澤裕一郎、安達直秀、秦由香里、前田剛、松崎粛統、牧山康秀
要旨
当院における顎顔面骨骨折の動向について検討を行なった。【対象及び方法】対象は2000年から2005年の6年間に日本大学松戸歯学部付属病院で入院加療を行なった顎顔面外傷257例である。【結果】性別は男性191例(74%)、女性66例(26%)であり、男性に多く認められた。平均年齢は32歳で、最年少は6歳、最高齢は87歳であった。年齢分布は20歳代が80例(31%)と最も多く、次いで10歳代が61例(24%)であり、10歳代と20歳代を合わせると全体の55%を占めていた。骨折部位では下顎骨骨折が最も多かったが、2003年に脳神経外科が開設された後は、上顎骨、頬骨、眼窩底骨折などの中顔面骨骨折の増加が認められた。また、それに伴い症例数の増加が認められた。【結語】今後さらに創意工夫を重ね治療期間の短縮や患者のQOLの向上を目指すべきである。
目的:
顔面と頭部はどちらも同じ球体に存在するため、外傷の機転がほぼ同一であり両者の合併損傷も多い。そのため顎顔面外傷は歯科と医科の領域に跨がる代表的疾患の一つであるといえる。2003年4月より歯科病院の診療科の一つとして当院に脳神経外科が全国に先駆けて開設された。本研究では当院における顎顔面骨骨折の動向について検討を行なった。
対象及び方法:
対象は2000年から2005年の6年間に日本大学松戸歯学部付属病院で入院加療を行なった顎顔面外傷257例である。診療録と放射線学的所見から、年齢・性別、受傷原因、骨折部位についてretrospectiveに検索を行なった。
結果:
[性・年齢分布]
性別は男性191例(74%)、女性66例(26%)であり、男性に多く認められた。平均年齢は32歳で、最年少は6歳、最高齢は87歳であった。年齢分布は20歳代が80例(31%)と最も多く、次いで10歳代が61例(24%)であり、10歳代と20歳代を合わせると全体の55%を占めていた(Table 1)。
Table1 年齢分布
年齢 |
症例数 |
(%) |
0-9 |
2 |
0.8 |
10歳代 |
61 |
23.7 |
20歳代 |
80 |
31.1 |
30歳代 |
39 |
15.2 |
40歳代 |
27 |
10.5 |
50歳代 |
27 |
10.5 |
60歳代 |
16 |
6.2 |
70歳代 |
3 |
1.2 |
80歳代 |
2 |
0.8 |
計 |
257 |
100 |
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[受傷原因]
交通事故、転落・転倒、スポーツ、第三者行為の順に多く認められた(Table2)。
Table2 受傷原因
受傷原因 |
症例数 |
(%) |
交通事故 |
100
|
39
|
転倒・転落 |
80
|
31
|
スポーツ |
36
|
14
|
第三者行為 |
26
|
10
|
その他・不明 |
15
|
6
|
計 |
257
|
100
|
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[骨折部位・症例数]
骨折部位では下顎骨骨折が最も多かったが、2003年に脳神経外科が開設された後は、上顎骨、頬骨、眼窩底骨折などの中顔面骨骨折の増加が認められた。また、それに伴い症例数の増加が認められた。(Table3、4、5)。
Table3 骨折部位(2000-2005)
骨折部位 |
症例数 |
(%) |
下顎骨骨折 |
176 |
68 |
上顎骨・頬骨骨折 |
50 |
19 |
頬骨弓部骨折 |
11 |
4 |
鼻骨骨折 |
7 |
3 |
眼窩底骨折 |
6 |
3 |
不明 |
7 |
3 |
計 |
257 |
100 |
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Table4 骨折部位(2000-2002)
骨折部位 |
症例数 |
(%) |
下顎骨骨折 |
88 |
80 |
上顎骨・頬骨骨折 |
14 |
12 |
頬骨弓部骨折 |
4 |
4 |
眼窩底骨折 |
0 |
0 |
鼻骨骨折 |
3 |
3 |
不明 |
1 |
1 |
計 |
110 |
100 |
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Table5 骨折部位(2003-2005)
骨折部位 |
症例数 |
(%) |
下顎骨骨折 |
88 |
60 |
上顎骨・頬骨骨折 |
36 |
24 |
頬骨弓部骨折 |
7 |
5 |
鼻骨骨折 |
4 |
3 |
眼窩底骨折 |
6 |
4 |
不明 |
6 |
4 |
計 |
147 |
100 |
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考察:
近年、当院における顎顔面外傷は増加している。これは生活の多様化による患者数の増加、近隣病院との病診連携の強化に加えて、当院が顎顔面外傷に対して、歯科と医科の連携により診療を行なっている点にあると考えられる。頭蓋内損傷を合併もしくは疑われる顎顔面外傷は、通常、歯科病院での治療対象になり難い。しかしながら、脳神経外科の治療終了後に顎顔面外傷の治療を開始するとGolden timeを逸してしまい治療が困難になる症例が少なくない。当院では口腔外科と脳神経外科とのチーム医療により、意識障害や頭蓋内病変を伴った症例を積極的に受け入れる治療システムを構築している。このシステムは当院における顎顔面外傷の動向に影響を与えていると考えられた。
結語:
顎顔面外傷に対する口腔外科と脳神経外科のチーム医療は当院の目指す"Medico-dental"の一つであり、今後さらに創意工夫を重ね治療期間の短縮や患者のQOLの向上を目指すべきである。
参考文献:
1. 前田剛、春山秀遠、山下正義、大野奈穂子、石崎菜穂、長谷川一弘、田中茂男、渋谷諄:、小宮正道、牧山康秀、秋元芳明、平山晃康、片山容一:スポーツによる顎顔面骨骨折. 脳神経外科ジャーナル15: 517-522, 2006.
作成日:2007年3月13日
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