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第4章 課題等の整理
 本章では、今年度調査により得られた今後の課題を抽出・整理するとともに、今後の開発計画案について記す。
 
4.1 今後の課題
 今年度実施した既往知見の収集整理および各解析手法の検証により、以下の課題が抽出された。
 
【流動モデルについて】
 海域の流動場については、HNS流出事故発生時にパソコン起動下で瞬時に潮流場を予測する必要がある。しかも、HNSの海中拡散の挙動を予測する事から上層から下層までの流れ場を求める必要がある。このため、準3次元モデルにより対象海域の主要4分潮の潮流場を事前にデータベース化する事が1手法として望まれた。
 しかし、3次元に区切った計算格子で潮流計算を実施した場合、水平方向の潮流の調和定数を整備する事は可能だが、鉛直方向の流れの取り扱いを如何にするかという課題が生じる。
 次に考えられた手法として、HNS流出事故発生時に流動計算を実施する手法が挙げられた。これは、昨今のパソコンの性能が向上した事から、本調査で予測対象とする数時間先〜数日先まで解析ならば多大な時間を要さないと考えられた事に起因する。しかも、この手法を用いると先に課題と挙げられた鉛直方向の流れ場も同時に計算されるというメリットを有する。
 しかし、本手法も利用するパソコンの性能により解析時間が変化する可能性も存在するため、計算モデルを設定して複数のパソコン条件下で検討が必要となる課題が存在する。
 
【海中拡散モデルについて】
 NRDAM/CMEモデルを参考とする事で、海上および海中に流出したHNSの物理的な挙動の他、拡散、蒸発、溶解・混入、沈降、再蒸発、堆積など各物質の物性に係わる挙動が解析出来る事が確認された。
 しかし、NRDAM/CMEモデルでは426種の化学物質の物性に係わるパラメータが整備されているが、わが国で取り扱われているHNSの全てが含まれていない。そのため、対象となり得る物質の分子量や比重、粘性などのデータベース化について検討する必要がある。
 また、海上でHNS流出事故が発生した場合、海水より比重の軽い物質は勿論の事、重い物質であってもガス化して大気中へ拡散する可能性が、前章で実施した検証計算結果より示唆された。そのため、大気拡散も考慮したモデル化も検討する事も必要である。
 
4.2 今後の開発計画案
 今年度調査の結果、HNSの海中拡散予測に必要なモデルが次のとおり整理された。
 
必要モデル1: 流動モデル(潮流や河川流)
必要モデル2: 海中拡散モデル(対象物質の物性を考慮したモデル)
 
 前述の課題のとおり、流動モデルに関しては事前に解析を行い、解析結果(調和定数など)を整備してストックする手法と、計算時間によってはその場で計算する手法が挙げられた。
 この状況も踏まえてHNS海中拡散モデルの今後開発計画案に関するフローを図4.2.1示す。
 
図4.2.1  NHS海中拡散予測モデルの今後の開発計画案に関するフロー
(拡大画面:223KB)


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