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(3)3次元モデル
 海域を3次元のメッシュに分割し、3次元の基礎方程式を解いて、水平方向だけでなく鉛直方向の流速成分wも運動方程式を解いて求める。準3次元モデルと比べて、鉛直方向も解いているため、鉛直方向の流速が大きいあるいは浮力の作用が無視出来ないなどの現象に対応出来る。
 座標系は、水平方向にx,y軸をとり、鉛直方向にz軸をとる。第1層で水位変化を考慮する事は可能であるが、計算時間など実用上の制約を考えれば現実的でない。また、隣り合うセルとは直交する。
 なお、座標系概念図を図1.1.4に示す
 
図1.1.4 3次元モデルの座標概念図
 
1)運動方程式
 
 
2)連続方程式
 
 
 ここで、t: 時間、x,y,z: 座標軸、U,V,W: 各方向の流速成分、Ax,Ay,Az: 水平渦動粘性係数、g: 重力加速度、ρ,ρo: 密度, 基準密度、f: コリオリ力である。
 
1.1.2 海中拡散モデル
 海中を拡散する物質をモデル化している事例として、窒素やリンなどの栄養塩の分布を予測する水質予測モデルや、放射性核種の拡散を予測するモデル、そして本調査で予測対象としているHNSの拡散を予測するNRDAM/CMEモデルの中でも、海中での挙動として、沈降や再蒸発、堆積等の過程が考慮されている。なお、NRDAM/CMEモデルは平成17年度「HNS海面・大気拡散予測モデルに関する研究業務」で参考とされたモデルである。
 以下に、各モデルの概要を示す。
(1)水質予測モデル
 海の水質を予測するモデルは数多く存在しており、モデルによっては動物プランクトンや魚類等の高次生物まで考慮しているものも存在する。しかし、多くのモデルの基本構造は似通っており、図1.1.5に示す概要図の様に無機態の窒素やリンが植物プランクトンに摂取され、そして植物プランクトンの枯死などにより窒素やリンに回帰する構造となる。また、植物プランクトンの光合成による酸素の生産と呼吸による消費等も考慮される。
 
図1.1.5 水質予測モデルの概要図(全体)
 
 さらに、窒素やリンについては、図1.1.6に示す様に無機態や有機態を細分化している。このモデルでは窒素、リンともに植物プランクトンから無機態だけでなく有機物としても回帰し、これが分解されてアンモニア態窒素や無機態リンに変化し、再び植物プランクトンに摂取される。
 なお、本モデルはCerco, Carl F.(1995)により構築されたモデルであり、主な反応式は後述の通りである。
 
図1.1.6 水質予測モデルの概要図(窒素、リン)
 
(1)植物プランクトン
 植物プランクトンは、その炭素量の変化を増殖、呼吸、そして枯死によって表わされる。
 植物プランクトンの増殖は、水温、光及び栄養塩に対して応答している。増殖速度は、最適水温に最大となり、最適水温未満および最適水温を超えると制限されるとされている。光については、水中での光強度の減少で、光合成増殖速度が制限される。燐、窒素などの栄養塩は、その濃度状態で植物プランクトンの成長を制限するものとする。
 植物プランクトンの炭素量をPC(mgC/l)とすると、PCの時間変化は次式のようになる。
 
 
 ここで、Pm: 最適環境下での増殖速度(/day)、f(T): 水温制限関数、f(I): 光制限関数、f(N): 栄養塩制限関数、BMr: 最適水温時の呼吸速度(/day)、e: 自然対数、KTbmr: 呼吸に係わる水温係数(/℃)、T: 水温(℃)、Topt: 最適水温(℃)、BPR: 最適水温時の枯死(被食)速度(/day)、KTbpr: 枯死に係わる水温係数(/℃)、Svpc: 植物プランクトンの沈降速度(m/day)である。


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