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(2)準3次元モデル
 海域を3次元のメッシュに分割し、主に2種類の解法により、3次元の流れ場が求められている。
 1種類目の解法は、3次元の基礎方程式を解いて解を求めるものである。なお、「準」という名称は、鉛直方向の流速成分wを運動方程式を解かずに、連続式の収支から求めていることに由来する。
 この解法による座標系は水平方向にx、y軸をとり、鉛直方向にz軸をとる。メッシュで分割された各流体の要素をセルと呼び、第1層(最上層)で水位上昇を表現し、他の層は隣り合うセルと直交する。
 座標系の概念図を図1.1.2に示す。
 
図1.1.2 準3次元モデルの座標概念図
 
1)運動方程式
 
 
2)連続式
 
 
3)海面の条件
 
 
 ここで、t: 時間、x,y,z: 水平鉛直座標軸、u,v,w: 各座標軸方向の流速成分、us,vs,ws: 海表面における各座標軸方向の流速成分、Ax,Ay,Az: 各座標軸方向の渦動粘性係数、P: 圧力、ζ: 水位、g: 重力加速度、ρ: 密度である。
 
 次に、2種類目の解法は、平面2次元モデルと準3次元モデルを組み合わせた方法である。プリンストン大学により開発されたモデル(POM: Prinston Ocean Model)がこれに該当し、このモデルのソースファイルが公開されている事から、国内でもPOMを用いた解析例が多く存在する。
 POMを例に見ると、計算は外部モードと内部モードの2種類モードからなり、外部モードが運動方程式、連続方程式を鉛直方向に積分しており2次元計算になっている。内部モードでは運動方程式、連続方程式を3次元で数値的に解く様にモデル化されている。計算は外部モードで水位と代表流速を求め時間進行する。この水位と代表流速を定期的に内部モードにフィードバックして3次元の流速分布求める。そのため、準3次元モデルに比べて計算時間が短くなるという利点を有する。
 座標系は、水平方向にx,yの直交軸をとるが、鉛直方向にはシグマ(σ)座標系をとる。メッシュで分割された各流体の要素をセルと呼び、水位変化を全層で分配して表現し、隣り合うセルは必ずしも直交しない。座標系概念図を図1.1.3に示す。
 
図1.1.3  平面2次元モデル+準3次元モデルの座標概念図(σ座標系)
 
4)POMの基礎式
(ア)外部モード(external mode)
ア)運動方程式
 
 
 ただし、
 
 
 ここで、x: 内部モードのx式を全層で積分した平均、y: 内部モードのy式を全層で積分した平均である。
 
イ)連続方程式
 
 
(イ)内部モード(internal mode)
ア)運動方程式
 
 
イ)連続方程式
 
 
 ここで、H:水深、η: 水位、D: 水位+水深(H+η)、σ: σ座標(-1≦σ≦0)、t: 時間、x,y: 座標軸(x,y: 水平)、U,V,ω: 各方向の流速成分、,: 鉛直積分した水平方向の流速成分、AM: 水平渦動粘性係数、M: 鉛直積分した水平渦動粘性係数、KM: 鉛直方向の渦動粘性係数、p: 圧力、g: 重力加速度、ρ: 密度、T: 水温、S: 塩分量、AH: 熱もしくは塩分に関する水平渦動拡散係数、KH: 熱もしくは塩分に関する鉛直渦動拡散係数、f: コリオリ力、<wu(-1)>,<wv(-1)>: 海底摩擦応力である。


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