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競艇沿革史

 事業名 組織運営と事業開発に関する調査研究
 団体名 日本財団(The Nippon Foundation  


法改正と場内改装
 垣本局長就任後の繰出金をみると、三十五年度は八、〇三六万円、三十六年度は一億三、〇三六万円、三十七年度は一億〇〇六三万円とはなはだ好調であった。
 昭和三十七年四月、公営競技調査会の答申によって、競走の公正円滑な実施を確保するための、規制の強化、体育事業その他の公益増進を目的とする事業振興のための交付金制度の設定、交付金による造船関連事業、体育事業に関する業務などを行なわせるため、日本船舶振興会の設立等等の法律改正が行なわれ、同時に競走施行の時限的効力の規定が削除された。
 毎年法の継続施行について、陳情運動をくり返していた各施行者にとっては、すくなくともこれは安心感を与えた。その後施行規則の一部改正(三十八・二・二十六)がありギャンブルホリディや勝舟投票の形式変更、さらに競走場の施設の改善について施設改善調査会が発足した。
 これは、競走の公正かつ安全な実施を確保し、あわせてその運営の健全化に資するためのものであった。
 調査会はその四月、全国の競走場の現地調査を実施し、改善すべき事項について勧告をおこなった。
 下関市のうけた勧告は次のとおりである。「――ここ数年間の収益金に対する施設の改善費を見ますと、逐年その比率が高くなっておりますが、他競走場に比して低く改善を要する個所が可成りありますので、この二ヵ年を目標に、積極的に施設改善に重点をおき、これを促進する必要があります。特に現在主審並びに執行本部のある所を全面的に再検討し、最も合理的かつ有効なものとなすこと、場内駐車場の区画整理をおこなうことであろうと思います。・・・」
 つけ加えて、改善計画とその経費を一ヵ月以内に提出するようにとあった(三八・一一・七)。事業局ではこれに従って計画を立案した。
 しかしその実施については、内部事情が許さなかった。
 それは市財政が悪化し、事業局案による三億余円は容認でき難く、もしこれを遂行しようとすれば、一般会計へ悪い影響を与える懸念があった。
 さらに木下市長が就任直後で、その公約にいささか背馳するということもあった。
 木下市長は、十二年続いた福田市長に代わって、三十八年五月に就任した。革新系を中心とした背景をもっていただけに、立候補において「競艇廃止」をその公約の一つとしていた。就任直後の五月二十八日第二回臨時議会において、つぎのように所信を表明した。
「(前略)私が選挙の時、すでに言明いたしましたように、今日続いております競艇の問題がございます。この競艇が本市の財政にむかって年々一億以上の寄与をしておるということは重大な意義をもつものでございまして私が先ほどのべました健全財政とこの競艇を廃止するこのことには、大きなギャップが出てくることと存じております。そういう観点からいたしますと、私は競艇はきわめて重大な意味におきまして、なるべく早い時期に廃止したいと申しましたところに、苦労がありはしないかという恐れがあるのでございますが、競艇というものは戦後の一つの出来事でございまして、一つの現象でございます。あのままのトバク行為を何時までも続けてゆくということは、これはたとえ本市の財政に少なからぬ寄与をしておるというものの、そのまま続けていくということは到底認容することができないのであります。
 財政を助けるという意味からのみ見るならば何時までたってもこれを廃止するという時期はこないと考えます多少の困難はございましても、これをできるだけ早い時機に廃止すべき心構えを堅持しておる者でございます。ただこれを廃止すると申しましても廃止するには幾多の研究と用意がいることと存じております。したがいまして私はこれには沢山の調査をする必要があると考えており、その調査は、止める事を前提として、如何にすればこれを最も円滑なる方法で止めることができるかという意味において調査をすすめ、その結果により適当な時期にできるだけ早目にこれをとり止めていくという方針を堅持していく覚悟であります。(下略)」
 市長はすぐに、あすにでも廃止するという風にはいわなかったが、「廃止」という言葉の響きが関係者に大きいショックを与えていたので、これと正反対に近い、設備の改善においそれとふみ切れるものではなかった。
 昭和三十九年二月、いくらたっても計画を提出しない下関市に対し、全国モーターボート競走会連合会から、次いで三月には九州海運局長から、四月に入ると施行者協議会や海運局下関支局から、促進方の督促が相次いできた。さらに七月には、運輸省の石島補佐官が来関して、このまま放置して開催取消を受けるか、改善して事業を継続するか二者択一を迫られた。
 ここにおいて市長は、ついに改善もやむなしとし、市財政にきわめて影響を与えず、改善調査会の意向にそってゆくということになった。そこで勧告案を中心に再検討が行なわれ、三ヵ年継続事業一億七、〇〇〇万円案ができあがった。三ヵ年継続というのは、予算上の事で、実質的には一年有半、つまり四十年一月に着工し、スタンド・舟券売場・執行本部・主審台などは八月に完成し、緑地その他は四十一年四月に完成するというのであった。これならば、現在の売上げ実績からみて無理のないものと判断したわけである。
 さらにこの際、競走水面の浚渫をしておけば、将来工業用地の造成が進んでも支障がないであろうとの配慮から、一、八〇〇万円の浚渫費をも見込んだのであった。
 昭和四十年一月二十一日、議案第十五号工事請負契約の審査をした経済委員会は、つぎのように報告をおこなった。
「競艇施設改善を三ヵ年計画でおこなうという工事請負契約を、鹿島建設株式会社と締結するもので(中略)実は御存知の通りこの工事は出来上って代金を支払うというものでなく、長期にわたって分割で支払う条件がついているため、大手業者に請負わせるという、やむを得ないものがあるのであります。なお工事期間申もレースを開催することにし、現場の事故はもちろん、一般入場者の事故がないように注意することを要望いたしました。(下略)」
 報告は多数の賛成により可決された。かくて改装工事は進められることとなった。
 場内の改装は事故もなく、きわめて順調に進み、その完工を記念してレースがおこなわれた。
 一方繰入金をみると、四十年度において、二億五、〇〇〇万円となり、前年度より五、〇〇〇万円の増、さらに翌四十一年度は三億二、〇〇〇万円となった。これは明るい近代施設に改装した影響が小さくないであろうと思われる。
 四十一年四月に観光事業局の機構改革が行なわれ、競艇事業に専念させるため、観光行政が分離され、競艇事業所長として岡山樵一が就任した。
 先にみた改装記念レースは、新所長の手によって行なわれ、五、三〇〇万円という売上げ記録の更新があった。まことに華々しい門出であった。
 
他市町への貸与
 設備改善の工事が順調に進んでいるころ、山口市長が下関市を訪問し、競艇場の借用について申入れを行なった。
 木下市長はこの申出を受入れることによって、二日間開催が延長されることに不満を感じ、これをことわった。
 ところが間もなく、美禰市からも同様の申入れが、議会への陳情となって出てきた。
 他市町へ貸与することによって、開催日数が二日延長でき、それによって収益が出ることはわかるが、従事員の勤務や、他の類似競走場との競合が多くなり、そのため売上げが減少するのではないかなど、かなり問題が残るので、十分な検討を要することであった。
 陳情をうけた議会は、これを経済委員会に付託して審議することとした。委員会は事業局の意見をききながら慎重に審査した結果、十月九日の本会議につぎのように報告した。
「陳情第四号(十月四日付け)美禰市より法令の許す範囲において、下関競艇を借り上げて開催し、その収益で美禰市の財政を救いたいということでありますが、委員会としては、現行十二日開催を、他市に貸すことにより施行規則第三条ノ二に認められるところにより十四日開催となります。競艇開催日数の延長に対しては、強い不満もでましたが、この二日間の開催収入によるところの本市の財政状況からして、事情やむを得ないことであり併せて実質的に陳情者である美禰市の財政窮乏をも救うべきであるとの両意見が、議論の中心となったのであります。
 審査の途中において、特に陳情者を招きまして事情や条件などを聞き、審議の参考にいたしましたし、二日の日延べによる収入予想等々審議をし、十四日開催を前提として本陳情を採択することといたしました。」
 この報告に対し古谷議員は、
「十二日もやむを得ずやっているという市当局の意見の申で、開催日数がふえてゆくということは、教育上あるいは人びとの生活に与える影響というものが非常に大きいと思う。勤労意欲を市民から失わせ、あるいは民主的な良心を骨抜きにする様なものをギャンブルは作り出している。(抄記)」
 森田議員も反対の意向を表明し、市長の意志を尋ねた。これに対して市長はつぎのようにのべた。
「この問題につきまして、少しく経緯をお話ししておきますと、山口の市長がまず借りたいといって参りましたが、私は日頃から不賛成でありますのでお断りしました。その後美禰市から同様申出がありましたがこれ又お断りしました。ところが陳情となって議会に出、経済委員会で審査され、決議されたわけですが、私としてはこれが四〇〇万〜五〇〇万の金が入ってくる、市の仕事をするためには、大変助かるわけですが、こういうばくち収入というものそれ自体が好ましくない、現在もやむを得ずやっている、精一杯しんぼうしてやっておるというのに私は自分自身にいい聞かせる言葉がありません。」
 市長のこの言葉に、貸与反対の意志をもつ議員の発言が続出した。
 陳情採択をきめた委員会の結論が、もし否決されるということになれば、今後の議会運営の上から、大きな支障を生むわけである。この点を懸念したか畠中議員は、今一度審議することを動議として提出した。
 通例担当の委員会の決定した事項が、本会議で否決されるということは、例を見ない事であったが、この日の空気は怪しく、もし賛否を問うてこれが否決されでもすると、まことに工合の悪いものになるのである。そこで採択を結論とした経済委員会も、再付託ということに従わざるを得なかったのであった。
 ふり出しに戻った陳情は、その後提出された豊浦町(六号)・萩市(八号)・菊川町(九号)の陳情と共に一括審査となった。
 昭和四十一年六月五日の第二回臨時議会で、三輪経済委員長は次のように陳情採択と報告した。
「(前略)四十年陳情四号・六号・八号・九号の審査の結果について御報告申上げます。去る三月三十日の本会議におきまして、中間報告という名のもとではありましたが、詳細を御報告申上げ、質疑がとりかわされたのであります。委員会といたしましては、陳情の四件は、当局に深甚なる善処方の要望を付して採択と決定いたしました。(下略)」
 古谷議員はこんども反対の趣旨をのべた。
「競艇場を他市に貸して二日間延長することは、今まで競艇の弊害というものは、これを社会、教育的に見てもあるいは生活的に出ておるのであります。その中で二日増しということは、長府の地元からもほとんどの市民が反対している。委員会としてどういう風に審議したかこれが第一点。第二点は、競艇を貸し二日延長することは財政的な利益が市にも一部あることはわかるが、他市に貸して十四日やることによって、十二日に入る利益と比べて低くなると、誰が責任をもつのか。二日延長で利益が増大するという調査などについて、どう御審議されたのか。(下略)」
 これに対し三輪委員長は、
「先の中間報告にもあるように、社会政策面から反対ということで、地元議員にも意見をきいたわけであります。また射幸行為ということの本質論にも及ぶわけですが、仮りにボートを廃止したとしても、射幸心というものの追放ができねばなりません。利益は全国的なものを調査して、利益を得るということがわかっております。」
 さらに古谷議員は、市長は二日延長をやるべきでないと当初の本会議でいわれたが、今委員会は違った結論を生じているがどうか。また財政困難を幾分か助けるものの、市は財政再建を正しくやるため、準用団体となっているので財政的なものも正しい態度でやるべきだと、ほこ先を市長にむけた。
 これに対して市長はつぎのように答えた。
「競艇については、当初から望ましいことではない、なるべく早くやめねばならぬ、これは日本中何所でも通用する言葉だと思います。しかし市の状態からして、社会悪というマイナス面はあっても、まことにやむを得ないという気持であります。この二日貸与についても、やはりこれが市の財政上の助けになるということで、前向きで見て行かねばならぬと思います。議会の多数の方々のお考えと意見が一致し、また私自身も再建という途上では、好ましからざることをあえてがまんするという、実際面の行動がでてくるのであります。」
 こうして委員長報告は、賛成多数で可決された。
 市長の廃止の理想も、現実はそれと違った方向へ進んだ。一つには議会の決定がそれを許さなかったという点もあろうが、議会に責任をおしつけるのではなく、議会の考え方や意見は、市政遂行の指標であるとする市長の考え方が、そうさせたのであった。
 とにかく、美禰市が申出をしてから数えて九ヵ月を経過して貸与問題は落着したのであった。
 四十二年第三回の内、三月十八日からおこなわれた後節の二十七・二十八の両日を、美禰市ほか一市二町競艇施行組合の開催とし、二一三万二、七四四円を収得した。
 昭和四十二年五月、井川克巳市長が就任した。そして八月の機構改革において、かつての観光事業局に戻して部とし、競艇事業所に直接担当者をおくこととした。一日付けで観光事業部長桶尾頼三・競艇場長白石正明が任命された。
 十一月には、競艇の収益金の一部をもって財政調整基金とするため、条例を設けた。その基金は一億一、三〇〇万円であった。
 あれから十三年、競艇事業の歩みは必ずしも単調ではなかった。ふりかえって見ると短いようであるが、またこの間には、職場を去って半ば忘れられた人、鬼籍に入った人も数人に止まらない。しかし、それらの人びとの努力が今日を招来したのである。
 いつまでも続き、発展することを願うのは、これに従事する人達ばかりではなく、市の財政を助け、市政の発展により大きく寄与することを待望する市民すべての思いでもある。
 しかし、将来の下関市にとって、この場所は、長府臨海工業地帯として、繁栄の担い手として、市民の期待がかけられている所である。この埋立地一帯に工場群が立地したとき、この競艇場が果たしてこのままの姿でいられるだろうか。かつて福田市長はこれを一つの橋頭堡とするのだといった。それを裏書きするのか、いま長府臨海工業地帯は国の先行投資に呼応しつつ、埋立てが進められている。だから将来、計画に従って埋立てが完成し工場が立ち並んだ時の事も考えておかねばならぬのではないか――。だが現実は今日もモーターの爆音とともに、ファンの手に札ビラが乱舞しているのだ。


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