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競艇沿革史

 事業名 組織運営と事業開発に関する調査研究
 団体名 日本財団(The Nippon Foundation  


初開催から騒擾事件
 一日平均六五〇万円の売り上げを予定し、人々の期待と与望とを集めて開催となったものの、第一回の成績は意外に振わなかった。その原因の一つは、北九州のファンに対する宣伝の禁止もあったが、下関とその近郊にファンが少なかったことも大きいものの一つであった。
 そこで宣伝も単に開催日を知らせるという以外に、ボートレースの面白さを知らせることが必要と考えられ、映画班を作り、ボートレースのカラーフイルムや、劇映画を各地に上映して歩いた。しかしこれといった効果もすぐにはあらわれなかった。
 入場人員をみると、初日の三、二五〇人は別としても、平日で大体二、五〇〇人が入っているから、今から考えてもそう少ない人数でもなかった。第一回の集計による一日平均売上げ額三六一万円、入場者三、〇〇〇余人で、人は集まったが売上げは低いことを示している。売上増進についての会議が、毎日くりかえされ、市長も意見交換に参加した。
 宣伝車は街の隅々から、近くの町村に軍艦マーチをまきちらし、開催を知らせる打ち上げ花火で景気をあおりたて無料バスでファンを運ぶ。こうして日曜日などは、四、〇〇〇〜五、〇〇〇人の入場者で賑やかなふん囲気が盛りあがったのに、財布の口は依然として固かった。あるファンは当時を回想してつぎのように語った。
「スタンドなどは、がっちりしていてよかったが、日除け、雨除けがなく、それに埃がひどかった。家に帰ってみると頭の中まで砂でざらざらした。」
「レースの面白さは、波や風で思わぬ番狂わせが出るところにあるんだ、という風に考えていたが、ここはまるでタライの中でやっているようで、スリルを感じなかった。しかし馴れてみると、波や風の条件に左右されない方が本当のレースではあるのだが」「大体九州から大口が入らない。地元の者はレースに馴染んでない、どちらかというと見物が多かった。」
第二回(十一月)の成績も余り芳しいものでなかった。
第三回(十二月)は十二日開催の予定を組んだ。十二月二日付全連総第二九六号はこの間の経緯を伝えている。
「首題に関し先に十二日開催の申請に接していますが、別紙昭和二十九年九月六日付舶工第一八八号の通牒の変更に関し未だ運輸省より正式に通牒されて居りませんので昭和三十年一月の開催には未定として保留致しておきました。然し当会としては貴申請通り十二日開催することに予定して配分その他の準備を致しておりますから御諒承され度く・・・」
 一月レースも十二日を予定し、北九州方面にも宣伝を行ない、多くのファンを集める大きい期待があった。十二月三十一日夜、宣伝係長の指揮でビラ貼りや、立て看板の配置が行なわれた。
 一月レース一節六日間の平均売上げは五三〇万円で、元旦返上で意気込んだ割りには良くなかった。ところが二節の四日目に八六八万円という記録が生まれた。いまからみれば一レース分くらいにしか当らない売上げであるが、当時としては全く予想外で、関係者一同は大いに喜んだ。
 それは成人の日であった。朝から珍しく雪が降っていた。事務所では、この天候で、レースに支障はないにしても、果たして人が集まるだろうかと心配した。
 緊急連絡会議が開かれ、レースは中止しない、湯呑場に熱いお茶を用意する。穴場前に火鉢を配置する、ことに決まった。しかし、それだけではまだ物足りない気がした。そこで先着一、〇〇〇人に「うどん券」を出すことを追加した。これは寒いのに足を運んでくださるファンに感謝の気持ちと、一方には、客足がどんな風になるかも見たいという気持ちからでもあった。
 十時を少し回ったころ、一番の無料バスが着いた。満員であった。それをきっかけとして、電車や汽車で人足が続いた。予定した「うどん券」はわずか三十〜四十分の間に出尽してしまった。
 十時三十分、第一レースの展示航走がはじまるころから雪も降り止み、レースの進行とともに時々うす陽がさしはじめた。そして回を重ねるごとに順調に伸びた売上げは、ついに今迄のものを飛びこえ、新しい記録を作った。あとでわかった事であるが、これは雪で中止になった門司競輪のファンが、足をこちらにむけてくれたおかげであった。一同に大入袋が配られ、明るい笑顔が各職場をうずめた。
 こうして三十年の第一回は終わった。これより売上げはしだいに上昇し、六回には九六〇万円、八回には一、二八〇万円という風に記録の更新がおこなわれた。
 六月、事業局人事に異動があり、課制が廃止されて、局長の下に富永、柴田の両次長が就任した。
 一方、一般会計への繰入れは、先行投資の戻しをしないで一、〇〇〇万円が予定通り実行された。
 売上げが上昇しても、舟券売上げの利益だけでは、大きなことは出来なかった。議会側は、今一段の売上げ増進もさることながら、財政をもっと助けるためには、この際オーナーを市のものにする必要があるとした。
 市も議会のいうオーナーについては同感であったが、開設当時の約束もあり、にわかにそれに関して交渉をはじめることはちゅうちょされた。しかし度重なる議会側の強い要望に、市長もついに決心し、オーナーの譲受けについての交渉をはじめた。
 もともとこのオーナーは、開設にあたって東氏一任ということであった。それは施設などの先行投資が八、〇〇〇万円余になるところに、オーナーに必要なボート、エンジンを持つということになれば、少なくも一、四〇〇〜一、五〇〇万円の資金が必要である上に、整備職員の問題もあった。こうなると先行投資は実に一億円となり、一見多額の感を与える。
 また予算的にも、先にみたように、施設は全額起債となり、初年度調弁費のほかボート、エンジン購入費まで加えると、どうしても一日売上げを七〇〇万〜七五〇万円にもしてゆかねば、若干の繰入れを見ることができない計算になる。こうなると売上げの妥当性を追及される虞れがあり当初ではあったし、余り自信がなかった。こうした配慮から、あえてオーナーを持たなかったのが偽わらざる当時の気持ちであった。
 オーナー譲受けの交渉は、再三くり返され、市長も直接交渉に臨んでその立場を訴えた。そこで、東氏もついに折れ、整備を請負うことによりこれを手放すことになった。
 昭和三十二年度の予算をみると、歳入の項に賞金収入が組込まれ、繰出金八、六〇〇万円が計上してある。
 売上げは、三十一年中に一、三九〇万円という記録更新があり、三十二年に入って第一回レースで一、五〇〇万円と更新、そして八月までの売上げは一日七三〇万円となった。八月一ヵ月だけの平均売上げは、八二五万円で、予定された一日売上げ(予算による)七七〇万円をやや上回るものと予想された。ところがわずかなきっかけに端を発して大騒動がおこり、市民の間にあらためて存廃が論議されるに至った。
 昭和三十二年第八回開催の最終日(九月一日)午後の第七レースであった。本命と目された四号艇の河井優選手のボートは、スタート直前エンジンが故障した。本人は手直しをしながら通常申合わせのスタートコースを通らずスタートラインに入り、そのまま走った。途中で六号艇は失格し、ゴールでは二号艇一着、一号艇二着、河井の四号艇は六着となった。
 審判所の判定によって、穴場では二−一、五、五〇〇円の配当を放送した。ところが約三、〇〇〇人あまりの観衆は、口々に「八百長だ」と騒ぎ出した。そしてその内の五〇〇人くらいは、本部の建物を取囲み、石や木片を手当り次第に投げはじめた。八百長だと激昂したファンは、選手控室や事業局の事務所などに、柵をのり越えて入りこみ、石や木片でめちゃめちゃに壊した。これを取鎮めようと出動した警官に対して砂の目つぶしを喰わせ、場内の掲示板を押倒し、本部を囲んでいた一団は、柵を押破って審判所へ乱入、スタート用の大時計を海へ投げ込んだ。また他の一団は、警棒をふるって、これらを制止しようとした警官をもみくちゃにした上、岸壁から海に投げこむなど、全く暴徒と化してしまった。
 選手控室や事務所を壊した一団は、制止する警官を押しのけて、ボートの繋留場に入り、エンジンをかけて海へ放流するなど、手の施しようのない狂態となった。
 このため、警備を受持っていた長府警察署は、全署員に召集をかけるとともに下関・水上・彦島の各署に応援を求め、八〇人余が駆けつけて鎮圧に当たったので、三時半ごろようやく騒ぎはおさまった。
 しかし、それでもまだ二、三十人ばかりは、レースの不正を叫んで事務所前に座りこんで動かなかった。そこで主催者側は協議の結果一人当たり五〇〇円の見舞金を出し、やっと七時すぎ平静に戻った。
 この事件について、長府署では器物損懐・公務執行妨害で捜査をはじめたが、海に投げこまれた宮崎警部補は一ヵ月の重傷、早川巡査部長は額に一週間の負傷、事業局の柴田次長ほか数人は、ファンから殴打され、施設の損害は、電話機五台、大時計一個、窓ガラス八〇〇枚、またレース中止による損害、居残り組に対する見舞金などで、合計二〇〇万円余であることが分かった。
 市首脳部、議会はこの原因の糺明と善後措置を協議した。あいにく市長が上京中であったので六日帰任をまって結論を出すこととし、とりあえず補修を早速に行なうことをきめた。
 この騒動の原因は、四号艇のエンジン不調による進入路の問題と、この措置に不満をもったファンの気持ちが爆発したものであるが、たまたまこのころ、全国一斉に競輪の八百長摘発が行なわれ、近くの門司や防府でも手入れがあった。それやこれやの影響で疑念をもたせたのであろう。
 警察本部刑事部長は、つぎのようにいっている。
「群衆心理とはいえ無茶な騒ぎだ、主催者側の応急措置も適切でなかったようだ。この騒ぎをおこしたレースも八百長事件の多い時であるから、果たして不正かどうかよく調べる。」
 ショックを受けた市民の間から、競艇廃止論もおこった。
「一日におこった騒ぎは、競艇はじまって以来の不祥事だが、これらの競艇、競輪などの主催者側は、いずれも地方自治体の財源発掘を理由にさかんにファン獲得につとめている。しかしこれらの公認トバクにはいつも暗い影がつきまとい、家庭悲劇の原因ともなっている。」
(九月二日付け朝刊、第三者のいい分より)
 また、市の財政も建直ったという今日、再検討すべきである。競艇をはじめる昭和二十九年ごろは財政が悪く、その建直しのためということであったが、その目的を達成した現在、廃止すべきだ、という意見もあった。しかし内実は、毎年一般会計への繰入れはあるものの、建設費の内五、〇〇〇万円くらいが未償還であった。
 議会側もこの点について検討を重ねたが、市制七〇周年記念事業や、国道海底トンネル完成に伴ういろいろな事業を行なわなければならぬので、今にわかに廃止しては困るという意見が強かった。
 この騒動のあと、九月十三日からの第九回レースは、自粛のため三日間の休場となった。
 事業局の一部人事異動が行なわれ、九月十八日付けで中邑局長、柴田次長の配転、富永次長の局長代理となった。
 売上げは鈍化し、結局三十二年中の平均は、七三〇万円にとどまった。
 昭和三十三年六月、機構改革が行なわれ、事業局は、水族館、ロープウエーを含め観光行政も担当して観光事業局となり、局長に阿月健治が就任した。
 阿月局長の在任期間は約一ヵ年半で、大騒動のあと始末と、売上げ増進への努力が払われた。騒動のほとぼりもさめてか、廃止論もかげをひそめ、売上げは日を追って順調に伸びていった。
 決算上の繰出金は、三十三年度は六、八四六万円、三十四年度は六、七三六万円となり、別に観光事業(火の山開発)に約一億円を支出している。
 昭和三十四年十一月、観光事業局長には、垣本四郎が就任した。


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