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競艇存廃問題
売上げ不振にからむ尼崎競艇廃止運動!
 昭和二十九年十二月十二日阪本勝市長の後任として就任した薄井一哉市長は、競艇廃止を市政方針として第一声をあげた。又昭和三十五年六月二十三日、松戸競輪場に勃発した騒擾事件に端を発したいわゆる「公営競技廃止論」はあたかも燎原(りょうげん)の火の如く全国にまん延していったのであるが、特に尼崎市においてはこれらの反映の刺激が著しく、市内各種の教化団体、革新系団体等が声を揃えて一斉に「競艇廃止」を呼びかけ、この運動は日増しに激しさを加え、又このような風潮は忽ち尼崎市当局を嵐の渦中に巻き込み、その勢いの赴くところ楽観を許さないものがあった。市議会も遂にこれらの陳情を一応採択せざるを得ない立場となり、昭和三十五年一月尼崎市議会は「競艇廃止条例」を可決、同年三月九日市長は又「競艇廃止」の声明を発すると同時に、文書をもって競走会長宛にこの旨通告して来たのであった。よってこのままの状態で推移するにおいては、尼崎競艇は昭和三十九年三月には当然自動的に廃止され、競走会又その存立の目的対象を失い解散のやむなきに立ち至ることは明らかであった。
 競走会では競走場設立当初から全面的に協力に努め、今日を迎えたのであるが、その実効も報いられぬまま、事業の中途にして尼崎市当局の廃止方針は実に遺憾である。競走会では多数の従業員を擁しておりながら、これらの生活補償の財政的能力に乏しく、又転職対策も一般財界の不況とからんで、一層困難を予想されて来たのであった。
 尼崎市当局の一方的な態度によって当競走会は忽ち窮地に陥らんとして来たのである。
 
対策・・・政策と実績面
 一刻も偸安(とうあん)を許さないこの重大問題に直面した向井会長以下深くこれを憂い、殊に向井会長は、入院加療中の病躯にもかかわらずこれを押して先頭に立ち、尼崎市当局と連日の如く折衝を重ねた。競走会従事員の生活補償と転職問題等に関して交渉する一方、競艇存続問題のみだけでなく、受任業務以外の啓蒙運動として競艇場周辺の小、中学校九校に図書費又は体育費の援助を行ない或いは水難救済に、社会福祉事業に貢献する等、年々継続事業として実施し、市民感情の緩和と理解に努めて来たのである。
 一面、売上げの上昇が競艇存続に不可欠の魅力である関係上、公正レースの推進をモットーとしてファンの確保に重点をおき、事故の絶滅を期して、一糸乱れぬ団結の下に競技の運営に当り、期間中は何らの事故もなく売上げに貢献したのである。
 又この難問題と当初から取組み、時には市民の立場からあるいは競走会の幹部として、陰に陽に活躍をつづけ前途の業務に懸命の努力を払い、上司の補佐の重責を全うした本岡芳一常務理事の功績も長く本誌に記録すべきものがある。
 
好転・・・尼崎競艇存続決定
 競走会ではこうした苦難の歳月とたたかううちに開設十周年を迎えたのであるが、この頃になってようやく積年の努力が報いられたか、昭和三十七年度を契機として売上げ向上の兆候が見え、以来逐年、上向きの一途をたどり、今日では全国一、二位を争うまでに至った。さすがにけんけんごうごう、巷(ちまた)にやかましかったいわゆる「競艇廃止論」も、市民感情の好転と共に次第にその声をひそめて来たのであった。
 昭和三十八年十二月十九日、尼崎市議会は衆目注視の中に絶対多数決をもって「競艇廃止条例廃止」という奇妙な異例の可決をなし、ここに過去四年間にわたって波乱を極めた尼崎競艇は、存廃論に終止符を打ち、明るく一八〇度転換したのである。
 このようにして尼崎競艇が鮮かに転換が出来た要因は施行者の善処は勿論のこと、中央、地方の政界でよく理解と後援を得たこと、関係監督官庁の理解あるご指導に合わせて、多年にわたる競走会長以下役職員の熱烈な血のにじむ存続運動と、その裏付けとなる競技の公正推進への努力が大きく反映して実を結んだものであるといえよう。
 
競走場内諸設備の大改築並びに競走会諸制度の改正等
 尼崎市は競走存続に決定と同時に、場内諸設備の全面改築拡張を断行し面目を一新したのである。競走会又これと同調して受託業務の完全受け入れ体制を期するため、従業員中、有資格登録員の養成充実に努め(六・四制)、又施行者との事務連絡をより密にするためと選手管理の合理化を図る目的をもって、従来の神戸市内にあった事務所を尼崎市蓬川町に建設、これに選手宿舎を併設することとして着工、昭和四十一年三月完成した。
 その他、物的人的両面の改善を断行刷新し又自衛対策強化のため、全連が主催する警備訓練に職員を参加させ、団体教練その他の訓練を毎朝会毎に実施し、あらゆる善導運動を通じて団結の強化と能率の向上を図り、又従業員及び選手会員の家族ぐるみの善導運動を度々実行して、上下一体の原則に基づき業界のよりよき発展のため最善の努力を傾注しつつあり。
 ここに競艇の今日の躍進ぶりの一端を公表してご参考に資する。
昭和四十三年四月 一日平均
一〇九、六六〇、七八五円
同   年五月 一日平均
一四六、六七六、二二八円
同   年五月十九日(記録更新)
三一〇、五五四、六〇〇円
同   年六月 二日(記録更新)
三一二、〇〇七、二〇〇円
 
新事務所“水光ビル”(41年3月完成)
 
年譜表
昭和二十六年度
 四月と六月に神戸商工会議所を中心に関係者宮崎彦一郎氏他有志の参集を求め、モーターボート競走会設立の打合わせを行なう。
7・1 モーターボート競走会設立事務所を神戸商工会議所内に置く。
8・17 社団法人兵庫県モーターボート競走会設立発起人総会(設立認可申請)
10・1 運輸大臣より(官文第一一〇八号)をもって認可。
10・11 社団法人兵庫県モーターボート競走会創立総会。
会長  宮崎彦一郎
副会長 小田万蔵
 同  岡村冊二
理事長 小林勝利
5・27 通常総会(神戸)
12・23 第一回理事会(神戸)
昭和二十七年度
 五月モーターボート競走場を尼崎市大庄湿地帯に設立に決定、競走会全面協力。
5・27 通常総会(神戸)向井繁人氏理事長に就任決定。
6・19 理事会(神戸)
6・30 理事会(神戸)
 八月尼崎競走場設置工事完成。
8・1 尼崎、伊丹両市長とモーターボート競走実施につき委任契約締結。
9・14 初開催(月十八日)
初日 三、八六〇、一〇〇円
平均 六、七八七、四八〇円
3・1 理事会(神戸市)競技実施上の参考に資するため、向井理事長他、役職員を大村、津等の先進開催地に派遣見学。
昭和二十八年度
4・20 定款一部改正(役員増員方)
4・30 事務所を神戸市葺合区旭通四丁目八番に移転。
5・12 村尾市松氏会長に就任。
5・20 臨時総会。
6・10 通常総会(役員改選)
6・25 臨時総会。
 八月 尼崎競艇場内東側空地選手宿舎建設。
3・30 臨時総会(定款一部改正)
 その他十二回、改善対策に関する打合会開催。
昭和二十九年度
5・7 理事会。
5・21 通常総会。
6・20 海の記念日行事に協力。
7・12 理事会。
10・1〜6 開設二周年記念レース実施。
10・21 神戸みなと祭協賛、港内モーターボートパレード。
10・29 事務所を神戸市生田区海岸通四丁目五六永宝ビルに移転。
11・12 第二十八回理事会開催。
11・22 臨時総会
12・12 薄井市長「競艇廃止」を公表、競走会競走存続方申入れる。
1・23〜26 全国連合会主催で、高野山における選手訓練講習会に役職員が参加。
3・5 役職員報酬、手当等の減額支給、又は停止。
昭和三十年度
4・1 委任契約中窓口事務一部競走会負担に改約。
5・17 理事会、通常総会開催(神戸市において役員改選)
6・25〜30 オール女子レース実施。
7・19 モーターボートによる明石岩屋間横断航走実施。
7・29 近畿ブロック会議開催(尼崎)
10・10 委任契約更改(負担区分改訂)
10・21 神戸みなと祭協賛、神戸港内パレード。
2・27 精鋭化の宣誓式。
昭和三十一年度
5・21 監事、経理監査。
5・23 理事会、通常総会。
6・8 運営自粛懇談会(大阪)
9・7〜12 開設四周年記念レース実施。
9・25 写真コンクール募集開始。
10・20 神戸港内、パレード実施。
12・13 選手精鋭化、事務打合会(大阪)
1・23 理事会(三四)(神戸)
2・27 売上げ向上対策協議会(尼崎)
3・29 第三五回理事会、臨時総会(神戸)
3・31 特別レース実施に関する打合会。
 その他改善対策に関する実務担当者会議、年間十八回実
 
昭和三十二年度
4・1 「宣伝業務」の一部競走会負担。
5・24 理事会、通常総会(役員改選「重任」)
5・28 第三回全国地区対抗特別レース実施。
9・12 開設五周年記念レース実施。
10・14 下半期事業計画。
12・10 理事会開催(神戸)向井理事長辞表受理。
12・28 理事会、臨時総会開催(下半期事業計画、予算)
1・29 理事会、臨時総会開催(上半期事業報告並びに決算)
3・26 海運局業務監査。
3・29 向井繁人氏副会長就任決定。
3・31 理事会、臨時総会(下半期事業報告並びに決算報告)
その他3・5 年間行事、教養訓練改善対策等に関する打合会。
昭和三十三年度
5・30 理事会、通常総会(事業報告、決算報告)
6・26〜7・1 近畿地区対抗特別レース実施。
7・25 村尾市松会長辞任。
7・29 臨時総会(村尾会長辞任承認、向井副会長を会長に推せん決議)十二月五日承諾申請。
9・1 尼崎競艇場周辺の小中学八校に対し体育費援助。
10・21 神戸港内でパレード実施。
1・29 理事会、臨時総会実施(役員改選「重任」)
2・10 舶監第六三号をもって向井繁人氏会長就任の件認可。
3・27 定款改訂(事業計画、予算決算、役員就任の認可制)
 その他研究会啓蒙などの会合二十四回実施。


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