日本財団 図書館


2-9 ハッチカバー
2-9-1 中国ハッチカバー製造業界の概況
 中国造船所は近年の操業量アップに伴い、ハッチカバーの生産を専業メーカーに委託する傾向が見受けられる。専業ハッチカバーメーカーでは、大型ハッチカバーの生産を主として、小型のものも製造している。
 
 業界関係者への調査の結果、2004年の中国におけるハッチカバーメーカーによる同製品の国内売り上げ高は、80,000トン〜90,000トン程度と考えられる。
 
(1)2004年の国内ハッチカバーの生産現状(下表は国内販売量による順位である)
注:売上高には委託生産加工分を含まない。
 
 中国ハッチカバー業界は上位生産企業の生産販売量が多く、比較的集中度が高い。
 
◆ 中国におけるハッチカバー生産量の分布
 中国におけるハッチカバーの生産は、華東地区、特に江蘇省と浙江省に集中しており、全体の9割を占めている。これは華東地区が中国造船業の主な生産基地の一つであること、ハッチカバー生産メーカー上位が同地区にあることによる。
 華東地区で生産されるハッチカバーはほとんどが大型ハッチカバーである。
 
地区 2004年度総販売量(トン) 比率
江蘇 79,750 70.71%
浙江 20,414 18.10%
重慶 5,000 4.43%
上海 4,060 3.60%
遼寧 3,000 2.66%
江西 560 0.50%
小計 112,784 100%
(出典:傑勝調べ)
 
 ハッチカバーはメーカーによる直接販売であり、主な生産企業の顧客は以下のとおりである。
 
 
2-9-2 中国におけるハッチカバー製品の輸出入状況
 中国において生産されるハッチカバーは、一部輸出にもまわっている。一方、輸入は関係者に確認したところでは殆どないと見られる。
 
2-9-3 中国ハッチカバー業界の展望
 中国造船業の著しい発展に伴い、中国ハッチカバー業界の発展速度も速い。今後、輸出の増加も見込まれる。
● 近年、国内の大手造船所は、ハッチカバーに関し自社生産から専門生産企業への委託生産に移行する過程にある。これが、規模の大きい、専門生産企業の発展チャンスをもたらしている。
● 地方企業の中には、世界的なハッチカバーメーカーであるマックグレゴー(MacGREGOR)社と合作し、専門の製造ラインを建設しているところもある(南通蛟龍重工発展有限公司)。ハッチカバーの品質と技術は急速に改善され、企業の競争力を強くするとともに、輸出にもつながっている。
● 中国における低い生産コスト、地理的な利便性に鑑み、海外の企業も中国にハッチカバー等の製造工場を建設、更なる拡張計画もある。
 
2-9-4 中国ハッチカバー大手生産企業に対する調査
2-9-4-1 三星重工業(寧波)有限公司
(1)主な製品
 船体ブロックとハッチカバーの生産をしている。製品は全て輸出されている。
 特に、船体ブロックが主である。単一ブロックの平均重量は150トン以下で、全部造船所向けのものである。船体ブロックの2004年の売上高は同社の売上総額の75%を占める。
 ハッチカバーは大型のものであり、単一製品の平均重量は35トンぐらいである、売上高の25%を占める。
 2004年の売上収入は435百万人民元(=65.3億円)、販売利益総額は66百万人民元(=9.9億円)であった。
 
 2004年の主な生産品は以下のとおりである。
製品種類 生産量 売り上げ高 製品総販売額(万元)
船体ブロック 96,000トン 96,000トン 32,649
ハッチカバー 20,414トン 20,414トン 10,883
総計 - - 43,532
(出典:傑勝調べ)
 
(2)生産設備
名称 加工能力
(トン/年)
主な設備の製造国
直列マルチヘッド切断機、油圧機、湾曲矯正機、ハッチカバー転換プラットホーム、自動溶接機、OTC C02溶接機械、サンドブラスタ設備、ラッカー、800トンガントリークレーン、各種クレーン 130,000 韓国、日本、中国
(出典:傑勝調べ)
 
(3)資機材の調達
(主な調達区域)
 生産に必要な原材料は殆ど全て韓国の三星重工業有限公司から支給され、韓国から輸入する原材料は総量の97%を占めている。
 
(4)販売先
 製品は全て輸出され、殆どが韓国の親会社向けである。
 韓国市場の売上高が企業製品販売総額の97%を占めて、その他は日本向け等である
 ただし、同社は2006年以後、ハッチカバーを中国市場で販売する計画も有している。なお、船体ブロックについては当面中国国内での販売計画はない。
 
(5)製品輸送
 同社の製品及び原材料は、全てはしけにより輸送される。積載重量5千トン〜1万トン、幅23メートル以上、長さ70メートル以上のはしけで輸送しており、現在同社の埠頭は水深約6メートルである。こうした要求を満たす海運会社は限られており、昨今の生産量増加に対応して輸送手段を確保することが課題となっている。
 
(7)今後の事業計画
● 三期に分けて工場を建設予定である。先ずは、船舶部品の生産からはじめ、将来的には船舶全体を生産する計画もある。
● 一期建設工事は2003年に完成した。二期建設工事は2004年6月に着工、2005年7月に終了し、生産を開始した。投資額は一期が4,000万ドルで、二期は4,400万ドルで工場面積は約二倍になった。主要製品(ハッチカバー、船体ブロック)の生産能力は一期の8万トンから15万トンに引き上げられた。うち船体ブロックは単一ブロック重量150トン以下から、3,000トン等級の超大型船体ブロックまで造れるようになり、従業員は900人から1,900人まで増員された。
 
 今後3年間のハッチカバー製品の生産計画は以下のとおり。
2005 2006 2007
生産量(トン) 25,000 30,000 40,000
(出典:傑勝調べ)


前ページ 目次へ 次ページ





日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION