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3. 舶用機械の輸入に関する税制
 本章に於ける記述は、第10次5ヵ年計画期間中の措置であり、第11次5ヵ年計画期間中の扱いについては、本稿執筆時点で公表されていない。しかしながら、これらの措置は、現時点で、中国造船業の国際競争力を支えるために不可欠なものとなっていると見られ、今後も何らかの形で継続される可能性が高いと推測される。
 
3-1 関税
3-1-1 輸出船に搭載される舶用機器
 現在、舶用機器・部品については、品目毎に関税率が定められている(例:舶用ディーゼルエンジン6%、その部品5%等)が、これらを輸出船建造に用いる進料加工*用のものとして特別に管理することにより、中国の造船所は保税扱いで輸入することができる。
*: 中国企業(外国企業が設立した現地子会社も含む)が外国から原材料を外貨を払って輸入し、完成した製品を外国に輸出する加工貿易のこと。このため、輸出製品を製造するために輸入した原材料の関税及び増値税は免除の優遇を受けられるが、輸入した原材料及び製品を税関の許可無く中国国内では販売できない。
 このような加工貿易の形態は、造船所に限らず一般的に認められている制度であり、中国における輸出加工貿易促進の観点から、保税区域の中、外の何れにも関わらず行われており、実体上、中国全体が保税区域扱いのような状態となっている。
 
3-1-2 国内建造の遠洋船舶に係る特例
 国内向けの船舶用に輸入される舶用機器・部品については、関税が適用される。(別添:関税表を参照)
 ただし、国内では生産できない又は性能要件を満足できない舶用機器・部品を輸入する場合は、中国遠洋運輸集団公司(COSCO)、中国海運集団総公司(China Shipping)、中国対外貿易運輸集団総公司(Sinotrans)が国内で建造する外洋航行船に限り、輸入関税を1%に低減する(実際の税率が1%より低い場合は、当該税率によって徴収する)との特例が講じられてきている。
 
(参考)財政部の“十五”期間における国内販売遠洋船舶用設備についての関税徴収政策に関する通知
 
 当該政策は財政部によって発布され、国務院“十五”期間における国内販売遠洋船の輸出税徴収に関する具体的実施方案である。そのうち、国内販売遠洋船舶は、国家計画委員会の批准により中国遠洋運輸(集団)本社、中国海運(集団)本社、中国対外貿易運輸(集団)本社が国内で発注建造した遠洋船舶と定義する。当該政策の有効期間は2002年1月1日から2005年12月31日までとする。全文は以下のとおりである。
 
2002年2月28日 財税〔2002〕9号
税関総署:
 国務院関税税則委員会の第四回全体会議を通過するとともに、国務院の批准により、国家計画委員が批准し建造する国内販売遠洋船舶向けに輸入が必要となる、国内で生産できない、或いは国内ではその性能要求を満足できない重要部品及び設備については、1%の輸入関税(1%より低い場合、実際の税率によって徴収する)を徴収し、輸入増値税は規則に基づき徴収する。
 具体的管理弁法は『“十五”期間における国内販売遠洋船舶の重要設備及び部品の輸入税減免徴収に関する暫定規定』(付属参照)によって執行し、そのうち、2002年全年の輸入総金額は15,070万USDであった。
 関連税関はこれにより執行する。
 副本配布:国家計委、外経貿部、国防科工委、国家経貿委、中国機械工業連合会。
 
3-2 付加価値税の優遇
3-2-1 輸出船に搭載される舶用機器等
 輸出船用に輸入される舶用機器等については、輸入時の増値税(通常は税関に納めなければならない)が免除される。
 また、造船所が輸出船用に国内で調達する舶用機器等については、調達時に国内納入事業者に対し、製品価格に増値税(17%)を一旦支払わねばならないが、毎月毎の仕入れ税額控除又は還付が認められている。(補足:中国税関輸出入規則においては、例えば、ディーゼルエンジンについては出口退税が13%とされているが、これはディーゼルエンジン単体での輸出の場合の還付率であり、船舶に搭載して輸出する場合は、17%の仕入れ税額控除又は還付が認められる)
 
(参考)『国家税務総局 輸出船舶、大型プラント電気機械に対する増値税還付(免除)問題に関する通知』
 
備考:情報源―国家税務総局
 
 (当該政策は、国家が国内造船企業の輸出船舶に対して実施する具体的支持政策であり、その目的は輸出税還付により国内造船企業が海外用船舶を受注することを奨励し、国家の外貨獲得の為である)
 
国家税務総局 輸出船舶、大型プラント電気機械についての税還付(免除)問題に関する通知
 
国税発[2004]79号
 
2004-06-23 国家税務総局
 
各省、自治区、直轄市、計画単列市国家税務総局:
 
 『国務院 第三回行政審査批准項日の取消しと調整に関する決定』(国発〔2004〕16号)は輸出品の税還付(免除)A類企業審査批准規定を取り消した。国務院の決定を真摯に貫徹し、対外貿易の輸出を支持するとともに、輸出税還付政策の連続性を保持するため、研究を経て、もとのA類企業の条件を具備する輸出企業は輸出税の先還付・後徴収方法を継続的に執行することを決定した。具体的通知は以下のとおりである。
 
一、同時に以下の条件を満たす生産企業は、「輸出税の先還付・後徴収」方法を実行することができる。
(一)船舶、大型プラント電気機械を生産し、生産期間が通常一年以上であること。
 
(二)年間外貨獲得額が3,000万USD以上であること(西部地区は2,000万USD以上)。
 西部地区とは、重慶市、四川、貴州、雲南、陜西、甘粛、青海省、チベット、寧夏、新疆、内モンゴル、広西自治区及び湖南省湘西トゥチャ族自治州、湖北省恩施トゥチャ族ミャオ族自治州を指す。
 
(三)過去に輸出還付税を騙し取った問題が発生していないこと。
 
(四)企業が一定規模の資産を保有し、税金詐欺事件或いは税金還付ミス問題が発生した場合、還付(免除)税額を抵当に入れることができること。
 
(五)企業財務制度が整っていること。
 
二、上述生産企業が輸出する船舶、大型プラント電気機械は、その税還付証をまだ全部を揃えていない情況において、輸出契約、販売明細帳簿等の資料に基づき、輸出税還付の主管税務機関(以下税還付部門と称する)に輸出税の免除・控除・還付申請手続きを行うことができる。税還付部門は現行の輸出税還付(免除)管理に関連する規定に基づき輸出税の免除・控除・還付管理の審査手続き、審査批准手続きを行うことができる。
 
 企業は税還付証が全部揃ったあと、すぐに所在地の税還付部門にこれを提供し、税還付部門は企業の税還付証、書面証書(輸出品通関票、輸出外貨収入審査票等)や関連電子情報を含み、一つ一つ繰り返し審査しなければならない。再審査に誤りがなければ、税金の免除・控除・還付を認める。再審査に誤りがあれば、多く免除・控除・還付した税金は取り戻し、少なく免除・控除・還付した税金は補填する。
 
 企業が輸出契約規定の期日を超えて当該取引の外貨収入が未収の場合、税還付部門はすでに免除・控除・還付した税金を一律に返還させるとともに、企業の徴税主管機関に国内販売品税徴収を通知する。
 
三、本通知は2004年6月1日から執行する。
 
3-2-2 国内建造の遠洋船舶に係る特例
 CSSC及びCSICが建造する中国遠洋運輸集団公司(COSCO)、中国海運集団総公司(China Shipping)、中国対外貿易運輸集団総公司(Sinotrans)向けの外洋航行船に限り、特例が認められており、これらの造船所は一旦、これらの船舶の売り上げに係る増値税を国に納める必要があるが、中央政府は、当該増値税相当分を補助金として各造船所に支給している。
 
 一方、CSSC及びCSIC以外の造船所においては、増値税相当分に係る補助金の交付制度がないため、勢いが輸出船の建造に集中しがちであり、これが地方造船所等における輸出船建造に拍車をかける一因となっている。


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