日本財団 図書館


2-1-2 中国における舶用ディーゼルエンジンの輸出入状況
(1)舶用ディーゼルエンジンの輸入状況
 2006年3月現在、中国は既に3,500TEU型コンテナ船主機関を自国生産している。また、メーカーによれば、既に5,600TEU型コンテナ船のエンジンまでは製造する能力を有するとしているが、生産量的には、国内の急増する新造船工事に対応できないでおり、2万馬力以上の大型2サイクル低速ディーゼルエンジンは殆どが輸入である。中国国内の統計のみからでは輸入国を特定することは難しいが、ロイドの情報等によれば、韓国、日本からの輸入が多い。
 一方、4サイクル機関についても大出力機を中心に輸入が多いとされており、主な輸入メーカーはCummins、WARTSILA、ヤンマー、MAN-B&W等であった。
 輸入金額は、エンジン全体で3.4億米ドルであった。
 なお、中国国内の統計データによれば、輸入ディーゼルエンジンの中国国内舶用ディーゼルエンジン市場における比率は(注:残念ながら輸入エンジンの出力内訳が不明のためエンジン全体で計算した)
 台数ベースで;13.8%
 出力ベースで;33.2%
に達する。
 部品単体の輸入に関しては、全体で5,250万米ドルで、主な輸入品は、クランクシャフト、シリンダライナ、燃料加圧装置、調速機、軸受け、噴射ポンプ等でされている。
 
(2)舶用ディーゼルエンジンの輸出状況
 2004年の中国からの輸出舶用ディーゼルエンジンは、税関統計によれば811台、15.5万kwであった。
 なお、船舶工業統計によれば225台、5.7万kwと両者の間には大きな開きがあるが、これは、後者の統計対象範囲が限定されているうえに、補足率にも関係があると推察される。
 
注:代表的な国との輸出入データであり、個々の国の合計と総合計は一致しない。
【参考データ】税関統計に基づく国別輸出入内訳
 
注:代表的な国との輸出入データであり、個々の国の合計と総合計は一致しない。
 
2-1-3 中国舶用ディーゼルエンジン業界の展望と課題
 中国舶用低速ディーゼルエンジン業界は造船業の発展に伴い急速に拡大してきているものの、2004年竣工の中国における建造船舶(2,000DWT以上)のうち、中国製の主機関を搭載した船舶は55%、主機関馬力べースでは国産エンジンの比率は40.7%にしか過ぎない。また、中速ディーゼルエンジン業界についても、近年、建造船舶の大型化が進む中で、これら船舶の大出力の補助機関は、殆どが外国ブランドの製品となっている。
 新造船工事の増加が見込まれる中、現在、外資導入をしながら生産能力拡大のための設備投資が進められようとしているが、業界の抱える問題点を中国側の視点でまとめれば以下のとおりである。
(1)主要部品の国内調達の遅れ
 低速ディーゼルエンジンのクランクシャフトは最近まで全て輸入品に依存していた。また、国内初の舶用低速ディーゼルエンジンクランクシャフト生産企業である上海船舶用クランクシャフト公司は2004年に国内初の船舶用クランクシャフトを生産した。しかし、同社の第1期プロジェクトでは年間生産能力は40本しかなく、国内需要を満たすことはできず、当分、舶用低速ディーゼルエンジンの生産企業は、クランクシャフトについて輸入中心の調達が続くと考えられる。
 また、中速ディーゼル補助機関についても、増圧機、調速機、軸受け、噴射ポンプ等の重要部品の輸入が多く、技術面での自立が遅れている。
 
(2)舶用ディーゼルエンジン分野への投資が比較的遅れている
 低速ディーゼルエンジンの生産量は伸びており、滬東重機は中国で第5位の舶用低速ディーゼルエンジンメーカーに成長したが、それでも生産出力べースでは114万PS(2005年)で、世界最大の低速ディーゼルエンジンメーカーである現代重工の五分の一にしか過ぎない。特に大出力エンジンの生産量が少ない。
 一方、中速エンジンについては、外国企業による中国工場の設置、中国企業への生産ライセンス供与の進展により、今後、国内生産品の市場シェアは高くなると予測されるが、自社開発特許技術の中速ディーゼルエンジンについては、技術開発、設備投資ともに遅れ気味である。


前ページ 目次へ 次ページ





日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION