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1-1-4 生産・技術動向
 大型造船所を中心として生産効率化の取り組みも進展している。
 ブロック建造時の先行艤装を進め、船台期間の短縮に注力しており、CSSC傘下の主力造船所では4,250TEU型コンテナ船の最短建造期間は292日となっている。
 ただし、多くの造船所においては、豊富な建造量を反映して、ブロックストック場の広さを感じさせないほど、船体ブロックが所狭しと大量に置かれている。CSSCの公表資料によれば、CSSCの中核造船所における生産性は、現在40時間/CGT程度で日本の2割強に相当すると考えられる。
 一方、生産船種の面では、2005年12月に中国のLNG船建造第一船が進水したほか、VLCC等の大型船の受注も伸びており、低い人件費という強みを生かして、受注船舶の大型化・高付加価値化を進めている。
 
1-1-5 生産設備の拡張
 2015年には建造能力2,400万DWTを目標に、各地で設備拡張計画が目白押しであり、主な計画の概況は以下のとおりである。
(1)長興島造船基地
・総投資額300億人民元(国有大型企業による投資で既存造船所を移転)
・2008年に稼働開始、2015年までに800万DWTの製造能力
・第一期工事:4本のドックで年間建造能力450万DWT、敷地面積560万m2(注:うち一本は修繕用の可能性も)
(2)広州南沙龍穴造船基地
・第一期投資額は45億元、ドックは2基で年建造量200万〜300万DWTの計画
1号ドック(長さ420m、幅106m)、2号ドック(長さ400m、幅92m)
・2008年末完成予定
(3)青島海西湾造船基地
・総投資額74億元、計画敷地面積570万m2
・50万DWTドック(長さ530m、幅133m)、30万DWTドック(長さ480m、幅96m)
・2008年操業開始予定
(4)渤海造船所
・新規ドック建設中:長さ480m×幅107m×深12.7m
・2008年春以降完成の見込み
 その他、各地で新造船設備の新増設工事が進められているほか、船舶修繕設備の新増設工事も目白押しである。
 
1-1-6 国境を越えた国際分業の進展
 中国国内では、中国と韓国、日本等との国別比較で語られる事の多い造船業であるが、実際には海外の造船事業者による船体ブロックの工場や造船所の経営も急速に進んでいる。2005年には、韓国の大手造船企業が煙台市への投資(先ずはブロック工場として開始)を正式決定したほか、韓国大手企業系列の中小型船造船所が受注生産活動を本格化したり、大手韓国企業の既存の船体ブロック工場も生産量を急増させる計画である。
 一方、日本の造船関連企業においても、中国での船体ブロックの運営及び製造したブロックの日本への輸出が見られ、大量の新造船工事を抱える日本造船所による船体ブロック調達システムにビルトインされつつある。
 
1-2 今後の中国政府による造船政策について
 中国政府は造船業を国の重要な産業の一つとして位置づけ、その発展を促進するため、(1)船舶輸出時の増値税の還付、(2)輸入舶用部品の関税優遇、(3)輸出船舶に対する売手信用及び買手信用の供与、(4)中国水上運送企業が遠洋船舶を国内造船所で建造する場合の借入金に対する利息補填及び増値税の還付など、主として税制、金融等の面でサポートを行ってきた。これらの中には第10次5ヵ年計画期間の終了とともに実施期限が満了するものもあり、現在、中国政府において第11次5ヵ年計画期間中の新たな発展計画及び支援措置が検討されている。
 発展計画そのものは、未だ公式には発表されていないが、以下の事項などが盛り込まれる見込みである。
(1)自主技術開発の推進
・超大型鉱石船の設計・建造(対象は全長325〜345m、型幅54〜60m、喫水20〜23m、積載重量30〜36万トン級等)
・30万トン級超大型FPSOの設計・建造
・大型自動ジャッキアップ式掘削プラットホームの設計・建造
・船舶知能化大型ディーゼルエンジンの国産化研究・製造
・船舶発電システムの研究・製造(7〜11万トン級の原油タンカー等を設計対象)
(2)船舶工業の構造調整と産業改善スピードを高めるため投融資、技術導入等について重要な措置を講じる
・船舶工業への投資奨励(企業所得税の減税等)
・外資企業との合資(研究開発機構の設立を含む)を奨励
・株式制による船舶融資リース機構の設立を奨励
・鉄鋼企業との同盟を奨励
・三大造船基地の整備推進
 
 また、これに先立ち、2005年12月、国務院は『「促進産業構造調整暫定規則」の公布・実施に関する決定』を出し、国家発展改革委員会はそれに関連する「産業構造調整指導目録(2005年版)」を公布・実施した。当該規則は、産業構造調整の考え方と方向を明確にし、奨励、制限、淘汰の三種に分類し、その原則に基づき産業構造を調整することを要求するものである。船舶工業では7項目が奨励業種に、2項目が制限業種となった。
 奨励業種に分類されたものは、
・高技術、高性能、特殊船舶と10万トン以上の大型船舶の設計と建造
・1万トン以上の客船、フェリー、Ro/Ro船、コンテナ・客船、鉄道連絡船の建造
・5,000m3以上のLPGタンカー、LNGタンカーの建造
・3,000TEU以上のコンテナ船の建造
・舶用動カシステム、発電システム、特殊補機の製造
・大型遠洋漁船及び海上掘削船、採掘プラットホーム、FPSO等の海洋開発装備の設計と建造
・船舶制御と自動化、航海・通信設備、計測機器等の舶用設備の製造
である。
 一方、制限業種に分類されたものは、
・国家船舶工業中長期計画に列挙されていない民用大型造船施設プロジェクト(幅42m以上の船舶ドック及び船台であって、10万DWT以上の船舶を建造可能なもの、並びに付属舶用施設)
・国家船舶工業中長期計画(注:現時点で未公布)に列挙されていない舶用ディーゼルエンジンの製造プロジェクト
である。
 規則によれば、奨励業種については、引き続き、関税免除、輸入増値税還付等の国家優遇措置を受けることが出来るとされている一方で、制限業種については新規投資を禁止することとなっている。また、外資企業については、外資関連法律の規定によることとされているが、具体的な運用についてはまだ明確にされていない。
 
1-3 2006年の中国造船業の展望について
 現在、中国造船業は3年分以上の手持工事量を抱えており、主要造船所が生産性の向上に努めていることから、2006年の建造量は1,400万DWTを越える可能性が高い。
 一方、新造船受注の面でも、現在整備中の新造船設備向けの受注活動が本格化する見込みであり、国際造船市場への影響が注目されるところである。国際造船市場が数十年ぶりの好景気からスローダウンした場合に、引き続き中国造船業が順調に受注を積み上げていけるかどうかについては、海外船主からのリピート発注確保の可否が鍵になるであろう。
 一方で、中国造船業は資機材の海外調達比率が高いと言われているが、今後、中国が世界の造船強国となるためには、生産性の向上に努めつつ、資機材の国内調達率の引き上げや、将来の人民元切り上げなどへの適切な対応を図っていくことが課題であろう。
 
1-4 中国舶用工業の現状
 中国舶用工業は中国造船産業チェーンの中でとても重要な役割を担っており、中国造船業の今後の発展に影響を及ぼす産業である。近年、中国造船業の発展につれ、舶用工業はある程度の発展を遂げているが、まだ中国造船業の発展に追いついていないのが現状であり、中国舶用工業は造船業発展のボトルネックになっていると言っても過言ではない。現在、中国国産機器の搭載率は40%にも満たないと言われており、造船大国の日本、韓国のように95%以上、80%以上という割合には遥かに及ばない。
 中国舶用工業の抱える問題点は以下のとおりである。
(1)舶用メーカーは自主開発の技術が少なく、コア技術はほとんど国外業者に独占されている。
 ここ数年、舶用メーカーはライセンス生産、技術導入(買取)、合弁などの方法で次々と海外の有名なメーカーと合作している。しかし経験が少ないため、国内建造の船舶に搭載される機械の中核技術はほとんど外国企業に独占されている。
 
(2)中国資本の舶用メーカーの多くは事業規模が小さく、企業体力も弱い。
 現在、南方の上海、南通、江蘇の三泰(泰興、泰州、泰県)に多くの舶用メーカーが集中している。北方では大連船舶工業公司傘下に比較的大型の企業がある。これらの企業の多くは、生産規模が小さく、資金力も弱いことから、大規模な設備投資、研究開発投資が行えず、ナショナルブランドの育成は進んでいない。


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