日本財団 図書館


刊行によせて
 当工業会では、我が国の造船関係事業の振興に資するために、競艇公益資金による日本財団の助成を受けて、「造船関連海外情報収集及び海外業務協力事業」を実施しております。その一環としてジェトロ船舶関係海外事務所を拠点として海外の海事関係の情報収集を実施し、収集した情報の有効活用を図るため各種調査報告書を作成しております。
 
 本書は、当工業会が日本貿易振興機構と共同で運営しているジェトロ・上海・センター舶用機械部にて実施した「中国における舶用工業製品の市場構造に関する調査」の調査結果をとりまとめたものです。
 関係各位に有効にご活用いただければ幸いです。
 
2006年3月
社団法人 日本舶用工業会
 
はじめに
 中国の造船業については、急速な成長を遂げている一方で、舶用工業の育成の遅れを指摘する声が多い。いたずらに生産トン数ばかりを増やしても、調達品を海外に大きく依存した状態では、中国造船産業の付加価値は伸びず、国民経済への寄与も少ないと考えられるからである。このため、中国では、以前から自主技術開発による国産ブランドの育成が強く叫ばれてきた。
 しかしながら、既に高度に成熟した舶用機器の分野で勝ち残ってきた海外の舶用機械メーカーに対抗するための力を備えるには、時間的にも、また資金面でも余裕がない。こうした中で、最近では海外の大手メーカー誘致による工場建設、或いは海外メーカーからの技術導入にシフトしてきている。今年始まった第11次5ヵ年計画期間においては、ますますその傾向が明確化するものと予測される。
 さて、本調査では、造船業に比べて格段に情報量の少ない中国の舶用工業についてその概要を明らかにすることを目的として行ったが、在籍船舶数と調査結果である舶用機械生産量の関係、或いは調査結果と造船統計との関係などで、一部不明な点もある。しかしながら、中国の場合、広大な国土に散在する全ての企業統計を網羅することは困難を極める作業であることから、正式統計に合致しない数字を全て誤りであると断言することも早急に過ぎると考えられる。
 なお、本レポートの作成に当たって、第一章及び第三章に記載のデータは当部が収集したものであるが、第二章に掲載されたデータについては、当部が自ら集めた資料に基づくもの及び訪問調査を行った企業に係るものを除き、上海杰勝商務諮詞有限公司にデータ収集を依頼して集めたものである。
 今回の調査結果が、日本の関係事業者の方々による中国舶用工業理解の一助となれば幸いである。
 
ジェトロ・上海・センター 舶用機械部
ディレクター 赤星貞夫
 
1. 中国造船関連産業の現状
1-1 2005年の中国造船業界
1-1-1 受注・建造データ
 2005年の全国造船竣工量は1,212万DWTと、初めて1,000万DWTの大台を超えた。また、年間の新造船受注量は約1,699万DWT、手持工事量は3,963万DWTと約3年分を確保している。2005年の中国の受注量は、日本が豊富な手持ち工事を抱え受注活動にブレーキがかかったこともあり、DWTベースで初めて日本を抜き、韓国に次ぎ世界第2位となった。
 なお、イギリスのクラークソン社による世界造船業の統計データによれば、中国の造船竣工量、新造船受注量、手持工事量は、それぞれ世界市場シェアの17%、23%、18%を占めるとされている。
 
図1 最近4ヵ年の中国造船業の主要生産指標
出典:中国船舶工業行業協会
 
1-1-2 船舶輸出の状況
 
図2 中国造船建造量の国内・輸出別内訳
出典:中国船舶工業行業協会
 
 建造量のうち輸出船舶が752万DWTで全体の62%を占めているが、その中には、いわゆる中国船社の支配船や、香港、シンガポールといった中華圏向けの船と、欧州向けの船が多いのが特長である。2005年の船舶輸出総額は約47億米ドル(浮体構造体等を含む)であった。
 中国機電輸出入商会のデータによれば、輸出先国の上位(金額べース)は、シンガポール6.56億米ドル、ドイツ5.97億米ドル、香港5.46億米ドル、マーシャル群島共和国2.49億米ドル、マルタ2.189億米ドル、以下、ギリシャ、デンマーク、韓国、英国、フランスとなっており、日本は第13位であった。
 また、輸出船を船種別にみれば、上位は以下のとおりである。
 
順位 船種 隻数 金額(億米ドル) 輸出総額に占める割合(%)
1 ばら積み船 139 15.28 32.4
2 プロダクトタンカー 73 7.16 15.2
3 コンテナ船 48 6.61 14.0
4 原油タンカー 8 2.95 6.3
 
1-1-3 二大国有企業集団のウェイト大
 CSSC、CSICの二大国有企業集団は、建造量で66%、受注量で71%、手持工事量で68%を占めている。特に、CSSCは建造量513万DWTで全体の42%を占めている。
 
表:2005年造船所別建造量上位10社
順位 会社名 形態 2005年建造量
(万DWT)
1 大連船舶重工集団有限公司 CSIC 232.8
2 上海外高橋造船有限公司 CSSC 217.0
3 滬東中華造船集団有限公司 CSSC 117.0
4 江蘇新世紀造船株式有限公司 地方 76.0
5 江南造船集団有限公司 CSSC 59.4
6 渤海船舶重工集団有限公司 CSIC 46.7
7 南通中遠川崎船舶工程有限公司 合弁 41.8
8 広州広船国際株式有限公司 CSSC 40.1
9 上船澄西船舶有限公司 CSSC 39.3
10 中国長江航運集団金陵船廠 地方 25.1
出典:中国船舶工業行業協会


目次へ 次ページ





日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION