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2. 企業戦略と各種施策
2.1 総論
 プレジャーボート市場は、主にボート製造とエンジン製造(主として船外機)、そしてP&A(部品及びアクセサリー)製造(舶用機器)という3つの業界で構成される。市場競争は2004年から2005年にかけて特に激化した分野もあり、歴史的に見て大きな変革期にあるのではないかと思える局面がいくつかある。代表的な例は、ブランズウィックによる相次ぐ企業買収と、船外機の排ガス規制強化にともなう品質競争である。この2点は、最近の米プレジャーボート市場における最も目立った動向である。
 第2章では、米国プレジャーボート市場の動向を、取り得る企業戦略の施策ごとに「企業買収、企業提携」、「生産拠点の海外進出、流通システムの効率化」、「品質競争力の強化」、「販売促進」、「ダンピング提訴」とに分け、それぞれについての動向を追跡することで各企業の戦略を浮き彫りにする。
 
 「企業買収、企業提携」に関しては、プレジャーボート業界1位のブランズウィックは、元々ボートの種類ごとに中小零細のボートメーカーが乱立していたボート業界で、すべての種類のボートを自社で提供できるように、数々のボートメーカーを買収している。それとともに、エンジン業界第1位のマーキュリー・マリーンをも傘下に入れ、そして舶用機器メーカーも買収して、ボート、エンジン、舶用機器をすべて自社で賄えるよう、企業買収によるパッケージ戦略に出ている。
 それに対して、それ以外のメーカーである、ボート業界2位のボート専門メーカーのゲンマーや中小零細の独立系ボートビルダー、エンジン大手のボンバルディアや日本船外機メーカーは、ブランズウィックの動きに反発している。これは、製品の競争力の観点というよりも、ブランズウィックが総合的な供給体制を確立することで、他のメーカーを排除し市場支配することを警戒することによる。
 
 「生産拠点の海外進出、流通システムの効率化」に関しては、やはりブランズウィックが、生産コスト削減を主な目的としてメキシコにボート工場を、また、マーキュリー・マリーンは中国と日本にエンジン工場をそれぞれ開設している。また、さらにブランズウィックは、中国でボート工場を計画している。
 しかし、米国では雇用機会の喪失に対する社会の目は厳しく、ゲンマーらはこの生産拠点の海外流出への世論の反発に乗じて、ブランズウィックの動きを牽制している。
 
 「品質競争力の強化」に関しては、特に船外機での競争が激しい。米国環境庁(EPA)のさらに厳しくなる排ガス規制をクリアするため、各メーカーともしのぎを削っている。排ガス対策には、一般的に4ストロークエンジンが有利であるため、その分野が得意な日本の船外機メーカーが優勢である。しかし、業界1位のマーキュリー・マリーンは、急ピッチで4ストロークエンジンの戦力アップを図っている。一方、業界3位のボンバルディアは、2ストロークエンジンの燃料噴射をコントロール制御することで排ガス規制を乗り切り、4ストロークエンジンに対抗する構えである。これにエンジンの始動性、静寂性等の顧客満足度競争が加わり、品質競争は激化している。
 他方、ボートに関しても、大型化、運搬の容易性等について顧客の嗜好がある。
 
 「販売促進」に関しては、ヤマハ・マリーンが、ディーラー研修制度を組織的に行っている動きが顕著である。
 
 「ダンピング提訴」に関しては、マーキュリー・マリーンが、日本船外機メーカーのダンピングにより、米国メーカーが被害を被っているとして提訴を行った。ブランズウィックとマーキュリー・マリーンは、日本船外機メーカーを非難したが、ゲンマーを始め独立系ボートビルダーは、日本船外機メーカーを擁護するとともに、ブランズウィックを冷評した。結果として米国国際貿易委員会(ITC)は、「シロ」との判断を下したが、この提訴は、船外機の品質競争と、さらにはプレジャーボート業界を2分するブランズウィックと、それ以外の勢力の争いを浮き彫りとするものとなった。
 
 ここでは、これらの動きを見る。
 
2.2 企業買収、企業提携(ブランズウィック・ボートグループ)
 企業買収で最も顕著な動きは、ブランズウィック・ボートグループ(Brunswick Boat Group)による中小ボートメーカーの買収劇である。ブランズウィックは、過去2〜3年の間に20を超えるボートメーカー又はボートブランドを相次いで買収した。とりわけ、最も注目され業界地図に影響を与えたのは、ゲンマー・ホールディングス(Genmer Holdings)から、ランド(Lund)、クレストライナー(Crestliner)及びロウ(Lowe)という3つのブランドを買収し、これまで世界最大のプレジャーボートメーカーだったゲンマーを抑えて世界最大にのし上がったことである。
 ここでは、そのブランズウィックの動向とそれに対する他のメーカーの反応を見ていく。
 
(ブランズウィックの記録的買収劇)
 ブランズウィックが近年買収したボートメーカー又はボートブランド及び関連企業を列挙すると次のようになる。
▽Sea Pro Boats(海水プレジャーボート、18〜33フィート)
▽Sea Boss Boats(海水プレジャーボート、18〜33フィート)
▽Lund(アルミ製フィッシング小型ボート)
▽Crestliner(アルミ製パーティーボート、6〜12人乗り)
▽Lowe(アルミ製フィッシング小型ボート)
▽Albemarle(フィッシングボート)
▽Triton Boats(アルミ製淡水バス釣ボート、12〜35フィート)
▽Boston Whaler(近海フィッシングボート)
▽Trophy(近海フィッシングボート)
▽Palmetto(海水プレジャーボート)
▽Sea Ray(プレジャーボート、18〜68フィート)
▽Bayliner(グラスファイバー製ボート)
▽Tahoe(モーターボート)
▽Maxum(スポーツボート)
▽Hatteras(ヨット)
▽Sealine(モーターボート、モーターヨット)
▽Meridian(ヨット、モーターヨット)
▽Baja(パワーボート)
▽Land 'N' Sea(パーツ アンド アクセサリー)
▽Attwood(パーツ アンド アクセサリー)
▽Navman(海洋GPS)
▽MX Marine(海洋GPS)
 
 ブランズウィックの企業買収の目的として、ジョージ・バックリー(George Buckley)会長の言葉を借りるならば、「空白を埋めるため。」に、ほぼすべてのボートの種類で、ボートメーカー又はボートブランドを買収してきた。
 また、同会長はブランズウィックの方針を、「ボーティング業界のトヨタになる。」、「トヨタのように、強力なディーラー網を背景に、車体やエンジン、部品にいたるまで良質な製品を低価格市場でも高価格市場でも世界中で他社より安く提供し、そして販売後のカスタマー・サービスでも、他社より充実した内容を顧客に提供する。」(AP通信、3/28/2005)と語っている。
 このことは、次の買収劇にも現れている。
 例えば、海水プレジャーボート分野に弱かったブランズウィックは2004年後半、シー・プロ・ボーツ(Sea Pro Boats)とシー・ボス・ボーツ(Sea Boss Boats)という姉妹会社2社を合計5,100万ドルで買収した。買収された両社の2004年売上高合計は約8,000万ドルである。ブランズウィックのダン・クウベラ(Dan Kubera)広報担当は、「海水プレジャーボート分野が、ボート市場全体の中で最も成長している分野であり、その2社を買収したことで市場での存在感を大幅に強めることができる。」(ミルウォーキー・ジャーナル・センチネル(Milwaukee Journal Sentinel)、1/5/05)と語っている。
 同様に、近海フィッシングボート分野が弱ければボストン・フェラー(Boston Whaler)を買収し、淡水バス釣り市場に弱ければトリトン・ボーツ(Triton Boats)を買収してきた。
 また、最大の関心を集めたのは、既述のとおり、ランド、クレストライナー及びロウという3つのアルミ製ボートブランドを、業界最大手のゲンマーから1億9,100万ドルで買収したことである。
 
 ブランズウィックは度重なる買収を経て、2005年に、海水ボートグループ(Saltwater Boat Group)と淡水ボートグループ(Freshwater Boat Group)という2つの部署を立ち上げた。そして、これまで買収したボートメーカーやブランドをそれぞれの部署に組み込み、人員や製品種を整理している。ボストン・フェラーやトロフィ(Trophy)、シー・プロ・ボーツとシー・ボス・ボーツ、パルメトゥ(Palmetto)は前者に組み込まれ、トリトン・ボーツは後者に組み込まれている。
 
 ブランズウィックによる一連の買収劇は、2005年第2四半期(4〜6月)の決算報告に明るい結果をもたらした。7月29日の同社発表によると、同期における売上高は、前年より18%増加の7億4,420万ドルを、営業利益は同じく前年より31%増加の7,480万ドルを記録した。グラスファイバー製ボート分野とアルミニウム製ボート市場の好調で、ベイライナー(Bayliner)とトリトン・ボーツの売上げ増加が貢献した。
 バックリー会長は、「空白を埋める。」までは買収を続ける方針を公表している。「中型スポーツフィッシングボートと平底ボート、動力付きヨットが、まだ埋まっていない市場だ。」(Knoxville News、6/10/2005)と語っている。
 
(ボートとエンジンのパッケージ戦略)
 ボートメーカー、ボートブランドの買収は、ブランズウィック傘下のマーキュリー・マリーン製エンジンの市場拡大の効果をも狙ったものである。
 シー・プロ・ボーツとシー・ボス・ボーツの買収に際して、クウベラ広報担当は、当面ブランズウィックはこれまでどおり、シー・プロ・ボーツとシー・ボス・ボーツのボートに、マーキュリー・マリーン製以外のエンジンの搭載を容認するが、将来的には・マーキュリー・マリーン製に移行してもらいたいと話している。ちなみに、シー・プロ・ボーツとシー・ボス・ボーツが生産するボートサイズは主に18〜33フィート(5.48〜10.06メートル)であり、両社は従来ヤマハのエンジンを主に採用してきた。一方、マーキュリー・マリーン製船外機の対象となるボートサイズは10〜25フィート(3.05〜7.62メートル)で、現状ではシー・プロ・ボーツとシー・ボス・ボーツのボートをカバーできない。この発言には、将来的にはカバーできるようエンジンのラインナップを増やし、マーキュリー・マリーンの市場拡大を狙うとの意味が込められている。
 
(パーツアクセサリーヘの進出と流通網強化)
 ブランズウィックは、ランド・アンド・シー(Land 'N' Sea)とアトウッド・マリーン(Attwood Marine)を買収したことで、パーツアクセサリー(P&A)部門を2003年から本格化させた。それとともに、流通業者のベンロック(Benrock)の資産を買収したことで、ランド・アンド・シーとアトウッド・マリーンの流通機能を拡充させた。
 
 また、ブランズウィック傘下のブランズウィック・ニューテクノロジーズは、海上用GPSメーカーのナブマン(Navman)を2004年に買収した。ナブマンは、ブランズウィック・ニューテクノロジーズ・マリーンエレクトロニクス(BNTME)部門に吸収された。
 BNT ME部門は、2005年第2四半期(4〜6月)の売上高を前年同期比65%増とした。この売上高の80%をGPS関連機器の販売で占めていると言われ、早くもナブマンの買収効果が出た。
 更に、BNT ME部門は、MXマリーン(MX Marine)を2005年4月に買収し、GPSブランドとして既に有していたノーススター(Northstar)にナブマンを加え、今回の吸収によるMXマリーンを加えて3ブランドで出荷することになった。MXマリーンは、GPSとDGPS(Differential GPS)ナビゲーションシステム(商業ボート向けアンテナ、ディスプレイ、レシーバー、コンパスを含む)を抱える。
 
 そして、ブランズウィックは2005年7月、米北東地域におけるP&A流通業者であるケロッグ・マリーン(Kellogg Marine)を買収した。
 ケロッグ・マリーンは、本部をコネチカット州オールド・ライムに置き、そこに経営本部と9万平方フィートの倉庫を有する。300以上のP&A納品業者と取引があり、従業員200人を抱える。
 ケロッグ・マリーンは、旧経営陣はそのままのかたちでブランズウィックのランド・アンド・シー・アンド・ベンロックという部門に組み込まれた。これで、ブランズウィックは北米に16ヵ所のP&A流通施設を運営する北米最大のマリーンP&A流通網を構築したことになる。
 ブランズウィック・ボートグループのダスタン・マコイ(Dustan McCoy)社長は、「コネチカットに流通拠点の一つを置くことによって、P&Aを米東海岸とカナダ市場に向けて同日または翌日配達しやすくなる。」(ボーティング・インダストリー(Boating Industry、07/12/2005)と語っている。
 
(独立系ボートメーカーの反発)
 しかし、ブランズウイックの一連の買収劇は、独立系ボートメーカーやパーツアクセサリー供給業者にとって、脅威として映る。
 全米量大の独立系ボートメーカーの業界団体である全米マリーン製造者協会(United Marine Manufacturers Association: UMMA)のケント・ウールリッジ(Kent Wooldridge)会長は会員メーカーに対し、「ブランズウイックは独立系ボートビルダーを倒産させようとしているため、ブランズウィックの製品を買わないように。」、「ブランズウィックがエンジン部門とボート部門を完全に切り離し、市場原理にゆだねるなら問題はないが、そうでなければ、ブランズウィック製品をボイコットして抗議する。」(AP通信、3/28/2005)と呼びかけている。
 さらに、「マリーンエンジン業界と直接間接両方のつながりを持つコングロマリット(ブランズウィックのこと)が、米国内のプレジャーボート製造業界の50%以上を手中に収めた。」とあからさまに嫌みを公言している。
 
 また、業界2位となったゲンマーのアーウィン・ジェイコブス(Irwin Jacobs)会長も、「ブランズウィックは業界を不和にさせている。」、「マーキュリー・マリーンや傘下におさめるその他のマリーンエンジンのために、ボートブランドを見境なく買い上げているだけで、市場は必ず反抗するだろう。」(AP通信、3/28/2005)と話している。
 それに対しブランズウィックのバックリー会長は、「マリーン製品の品種群を強化するのが我が社の方針である。なぜならば、ビジネス的に理にかなっているし、消費者がボーティングを楽しむコストを下げることができるからだ。」(Milwaukee Journal Sentinel、4/05/2005)と反論した。
 
 これら独立系ボートメーカーの反応は、ブランズウィックを単に大きなボートメーカーで手強い競争相手として脅威を感じているのではなく、エンジンやパーツアクセサリーの供給者として捉えており、これらの供給を止められればビジネスが成り立たなくなることに不安と脅威を感じているとことによるもの思われる。
 
 ちなみに、ブランズウィックがゲンマーの3つのボートブランドを買収したことが注目を集めたことは既述のとおりであるが、ブランズウィックが度重なる企業買収により収益を拡大させている一方で、ゲンマーはこの売却で負債を返済し、財務状況が一気に健全になった。この売買に関して、ゲンマーのジェイコブス会長は「自分がこれまで取引した競合社の中でもっとも高慢。」(AP通信、3/28/2005)とブランズウィックを批判している。この買収劇は、同じビジネスの競合者同士でも売り手としてのメリット(売却益と事業規模の縮小)と買い手としてのメリット(事業規模の拡大)が噛み合えば、まったく逆の立場で企業買収が成立し得ることを示している。
 
(BRP、ヤマハ、ブランズウィックとの取引を停止)
 一方、エンジンメーカーであるボンバルディエ(Bombardier Recreational Products: BRP)は、ゲンマーからブランズウィックに移ったランドとランド・カナダ(Lund Canada)、クレストライナー及びロウという3つのボートブランドに船外機を供給する契約を更新しない決定を下し、2004年6月30日付けで取引を打ち切った。
 業界紙ボートインダストリーによると、BRPのロック・ランバート(Rock Lambert)氏は、それらのボートブランドがブランズウィックの所有となった今、マーキュリー・マリーンがブランズウィックの傘下にいる以上、いずれはマーキュリー・マリーン製船外機が搭載されることになるという見方を解約の理由に挙げている。
 それと同時に、BRPは「長期的ビジネス関係の構築に集中する。」ため、今後は独立系ボートメーカー及び独立系ボートディーラーを支援することを戦略の一環に据える。それとともに、BRPの主要製品である「エヴィンルード(Evinrude)」と「ジョンソン(Johnson)」という船外機との良好なビジネス関係を重視するボートメーカーやボートディーラーとの関係構築に傾注する方針を固めた。
 
 これらのボートブランドヘのエンジン供給停止は、BRPにとって収入減につながるとの深刻な懸念として指摘されており、BRPの業績についてすでに問題が表面化している。
 2004年11月10日付けナイト・リダー(Knight Ridder)によると、BRPでは同社全体の約11%にあたる800人を解雇し、船外機の部品を製造していた米国内の2工場を閉鎖した。
 800人のうち600人はカナダで、100人は米国、そして残る100人は北米以外で解雇された。売却された2工場は、ウィスコンシン州ディラヴァン(Delavan)とノース・カロライナ州スプルース・パイン(Spruce Pine)に所在する。人員整理と工場売却の理由は、石油を含む原材料費が上がったことと、カナダドルが米ドルに対して強くなったため、売上高が浸食されたことによるとされている。2004年の1年間にカナダドルは米ドルに対して10%近くも強くなっている。
 BRPの工場は、ケベック州ヴァルコート(Valcourt)とウィスコンシン州スターテヴァント(Sturtevant)の二つが北米の主要製造工場として残る。
 
 同様にまた、ヤマハ・マリーンも、ランド、クレストライナー及びロウという3つのボートブランドに船外機をOEM供給する契約を2004年6月30日付けで解約した。理由はBRPと同じである。ゲンマーに所有されていた頃、同ボートブランドは、エヴィンルードとジョンソンをはじめ、ヤマハ、スズキ、ホンダ、マーキュリー・マリーンの船外機を搭載できる選択肢を持っていた。しかし、ブランズウィックがそれら同ブランドを買収したことで、ブランズウィック傘下のマーキュリー・マリーン製船外機が優先されることになるだろうという考えから、OEM契約を更新しないことを決定した。さらに、マーキュリー・マリーンとはダンピング訴訟という問題も抱えていたことも契約打ち切りの動機と考えられる。
 
(マーキュリー・マリーン、カミンズと合弁事業)
 2002年2月14日、マーキュリー・マリーン(ブランズウィックの船外機部門)は、総合エンジンメーカーであるカミンズのマリーン部門であるカミンズ・マリーン(Cummins Marine)と50%ずつ出資する合弁事業立ち上げることで合意した。「カミンズ・マークルーザー(Cummins MerCruiser Diesel Marine LLC)」をサウス・カロライナ州チャールストンに設立した。世界市場向けに、プレジャーボート市場だけではなく、商業用船舶市場を視野に、主としてディーゼルエンジン及びその関連機器を製造する。
 カミンズのプレスリリースによると、合意内容では、カミンズが15リッター以下のディーゼルエンジンと電子系統機器及び付随する関連機器を供給し、マーキュリー・マリーンが、1.7、2.8、4.2、7.3リッターのディーゼルエンジン、スターンドライブアプリケーション、スマートクラフト(SmartCraft)インテグレイション・ハードウェアを供給する。
 換言すれば、ディーゼルエンジンの機種開発を共同で行い、市場を開拓する。マーキュリー・マリーンのパトリック・マッキー(Patrick Mackey)社長は、船舶用ディーゼルエンジン市場のトップメーカーになることを目標にやってきたことを強調するとともに、この合弁事業によって顧客に対し広範囲な製品供給とサービス提供を実現できる最高の位置に立てる、と発表した。
 一方、北米の船舶用ディーゼルエンジン市場で最大手のカミンズは、ディーゼルエンジン全般の技術開発では最強であり、それをマーキュリー・マリーンとの合弁によって、自社のディーゼル技術をボート用エンジンに組み込むことで、ボートエンジン市場での地位向上へと新たな収入源確保を狙うものである。
 
(ブランズウィックの欧州市場拡張)
 2005年6月、ブランズウィックはさらに、ポルトガルのリジッド・インフレイタブル・ボート(RIB)の製造会社であるスープラ(Supra-Industrial Textil, Lda.)の51%を買収した。ブランズウィックは1999年にスープラの49%を所有し、その際、残りの51%を将来買収できるというオプションを契約内容に盛り込み、今回、そのオプションを行使したものである。
 「今回の買収は、我々のマリーンビジネスにとって重要な欧州市場で、欧州ブランズウィック(Brunswick European Group)を加速的に成長させる戦略の一環。」(プレスリリース)とバックリー会長は発表した。スープラ買収によって、これまで出荷できなかった地域に、スープラ製ボートと自社製品を出荷できる流通網を広げることを狙っている。
 6月21日付けボーティング・インダストリーによると、RIB市場は、ボーティング市場において成長目覚ましい分野であり、スープラ買収によって「市場全体より好調な成長を常に記録してきた欧州ブランズウィックに、更なる強みをもたらすだろう。」と欧州ブランズウィックのビクトリア・ライシュ(Victoria Reich)副社長は語っている。スープラは従業員150人で、ボートサイズが2.4〜12メートルのRIBを年間3,500隻製造する。
 ブランズウィックの欧州市場戦略は、今後さらに活発になる見込みである。バックリー会長による7月末の発表では、同社は「2006年から欧州市場に注力する」方針で、それは同時に、米国における「空白」市場をほぼ埋めてきたため、同社にとって進出する分野がほとんどなくなってきたことを意味する。


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