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・採取した貝などを入れる道具
○タマリ
 採取したアワビなどを溜めておく網の袋。
○ウキダル
 タマリを結びつけておく木製の樽で、浮きの役目をします。
○ツイシ
 タマリの先端に付けて、タマリが水中で垂直に保つように、また、海上のウキダルが流されないように固定したおもり。
 
タマリ
 
ウキダル
 
 素潜り漁の歴史は『魏志倭人伝』に「好んで魚鰒を捕らえ水深浅と無く皆沈没して之を取る」と記されていることから、邪馬台国の時代である紀元3世紀頃(弥生時代末期〜古墳時代初期)には、盛んに素潜り漁が行われていたことがわかります。千葉県内でも、勝浦市こうもり穴洞穴遺跡の3世紀前後の土層からアワビの貝殻が多量に出土していますので、『魏志倭人伝』の記述のとおり、その頃にはアワビなどの素潜り漁が盛んに行われるようになっていたと考えられます。
 現在、素潜り漁を行う人々を海女(女性)・海士(男性)と書いて「アマ」と呼びますが、「アマ」とは、古代では「海人」、つまり漁撈活動や海産物の生産、水運に従事する人々を指す言葉として使われていました。素潜り漁を行う人々に限定して「アマ」と呼ぶようになるのは、アワビの経済的な価値が高まる江戸時代頃からのようです。
 海女は漁船を利用する「フナアマ」と漁船を利用せず岸近くで操業する「オカアマ」に大別されます。また、採取する対象によって、「カイアマ」、「テングサアマ」などとも呼ばれています。これらの集団は年齢や技能の差異によってさらに小集団に分類され、各集団ごとに海女小屋を備えています。フナアマは、小集団ごとに漁船と船頭を漁の期間中だけ契約し、漁場への往復に利用します。海士はそれぞれが漁船を所有し、個人単位で操業しており、細かな呼び分けはありません。潜水深度は、海女は12mくらいまでですが、海士は20mを超えることもあります。漁期は、おおむね4月中旬から9月中旬までです。
 海女のスタイルは、明治時代の中頃まではイソコシマキのみでしたが、その後ジュバンやサルマタを着用するようになり、次第に重ね着をするようになりました。現在では、ウエットスーツを着ている所もあります。
 
(2)貝採り漁
 貝採り漁は、海中の砂地に潜むアサリ・ハマグリ・バカガイなどの貝を採貝具により掻き取る漁法です。
 資料番号24「貝採り」(時田直善)では、海中で貝を掻き取る用具を曳く女性の姿が描かれています。背景には砕ける高い波が描かれているため、九十九里浜地域のハマグリ漁の様子が想像されます。ハマグリ漁だとすると、描かれた採貝具は「ハマグリガッタ」または「カッチャキ」と呼ばれるものと考えられます。ハマグリガッタは、鉄製のカゴにホと呼ぶ鉄製の歯を付け、柄を付けた採貝具です。カッチャキはカゴ部が無く、腰にスカリと呼ぶ網袋を下げておき、掻き取ったハマグリを入れます。「貝採り」の絵画にには、腰に網袋またはカゴのようなものが描かれているので、採貝具はカゴ部の無い「カッチャキ」かもしれません。
 
スカリ
 
 貝採り漁の漁法には、絵画に描かれているような人力で採貝具を曳く方法と大型の採貝具を船で曳く方法があります。採貝具は、房総半島沿岸においても対象とする貝の種類及び使用地によって名称が異なりますが、形態的にはほぼ共通しています。
・アサリを対象としているもの
○コシマキタブ(浦安市)
 人力で曳く鉄製の歯を付けたカゴ、柄はスギ材製。
 
コシマキタブ
 
○オオマキ(浦安市・船橋市)
 船で曳くカゴ。
○コシマキカゴ(木更津市)・アサリマンガ(富津市)
 人力で曳く鉄製の歯を付けたカゴ、柄は鉄製。
 
・ハマグリを対象としているもの
○ハマグリカキ(浦安市)
 人力で曳く鉄製の歯を付けたカゴ、柄はスギ材製。
○ハマグリガッタ(旭市)
 人力で曳く鉄製の歯を付けたカゴ、柄はスギ材製。
 
ハマグリガッタ
 
○カッチャキ(旭市)
 人力で曳き、カゴ部が無く、鉄製の歯でハマグリを掻き出す。柄はスギ材製。
○マンガ(八日市場市)
 船のオモテとトモに付けて、船上のロクロを回して曳く。2台1組で鉄製のツメが60本付き、ツメで掘り起こし、装着した網袋でハマグリを採集する。
 
・バカガイを対象としているもの
○バカマンガ(富津市)
 人力で曳く鉄製の歯を付けた採貝具。貝だまり用にフクロを付けている。
 
・ナガラミを対象としているもの
○タチガッタ(旭市)
 人力で深さ2m位の海中に潜水しながら採集する。3m以上の長い柄を付けた鉄製の網カゴ。
 
・カキを対象としているもの
○カゴ(船橋市)
 砂地にいるカキを船上から曳いて採る鉄製で一枚刃が付くカゴ。


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