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1-4 地下水 湧く水
 地下水は,地下水面以下の隙間を満たしていて,重力で動くことができる水です。地球の地下水の量は2340万km3と計算されていて,世界の水の量に占める割合は1.688%です。地面に降った雨は土の粒子の隙間や岩石の割れ目を通ってゆっくりと移動し,湧水として再び地表に現れることもあります。
 
 
Q 土の中にある水はすべて地下水なの?
A いいえ,ちがます。「地下水面以下の隙間を満たし」,「重力で働く」ことができるという2つの条件を満たしている水だけが地下水と呼ばれます。
 
 土の中には,土の粒など(固体)や土と土の隙間に空気(気体)や水(液体)が存在しています。地下水面より上にあって土の粒子の間を部分的に埋めている水のことを土壌水(土中水)といいます。地下水は,地下水面以下の,土粒子の隙間や岩石の亀裂や空洞を満たしていて,重力で動くことができる水です。したがって,地下水面以下にあっても土粒子に吸着された状態の水(吸着水)や,鉱物の結晶水のように容易に取り出すことのできない水は地下水とはいいません。
 地表面近くにあって,その地下水面の圧力が大気圧と釣り合った状態の地下水を不圧地下水といい地下水の上部に難・非透水層があり,大気圧よりも大きな圧力がかかっている場合は被圧地下水といいます。
 地下水が多く存在するのは,砂や礫のように透水性が大きいところや,固い岩石でも亀裂や割れ目が多いところで帯水層といいます。透水性のやや小さいシルト(砂と粘土の中間の粒径を持つもの)は半透水層,粘土は難透水層,水を通さない岩盤は非透水層とよばれます。
 
図4.1 地下水と土壌水の関係
 
 井戸水は帯水層から地下水をくみ上げているものです。井戸の中でも,地下水がこんこんと湧き上がっていて,ポンプを使わなくても使うことができるものもあります(自噴井戸)。千葉県では養老川の上流,小櫃(おびつ)川および小糸川沿いでこの自噴井戸を数多く見ることができます。
 また,地下水が自然に再び地面に出てきたものを湧水(わきみず)といいます。千葉県では崖下沿いに多く見ることができます。
 
Q 上総掘りって何ですか?
A 機械を使わずに,竹など自然にあるものを道具にして,人の力で井戸を掘る方法です。この方法だと少人数で深さ数百メートルまで掘ることができます。上総地方には自噴井戸が多く,井戸を掘ったあとは地下水が自然に湧くという自然のエネルギーをうまく利用した方法です。
 
上総掘り
 明治時代に千葉県の小櫃川小糸川流域で考案された井戸の掘削技術です。もともと慢性的な水不足地域だった上総では,長年水資源開発が望まれていました。この地域は地下数百メートル(被圧地下水帯)まで掘ることができると,大量の水が自噴する井戸が手に入ることが分かりました。当時の技術で数百メートル掘るのはとても無理かと思われましたが,この地域の地層がやわらかいため機械力がなくても容易に掘ることができることと,丈夫な孟宗竹を手に入れやすかったことから可能になったものです。その後改良が加えられ,明治時代中頃に「上総掘り」技術は完成しました。
 
図4.2 上総掘りイメージ
 
 この技術は3,4人の少人数で数百メートルの深さまで掘削できるものでした。この地方の名を冠して「上総掘り」と呼ばれ,全国各地に普及しました。その後機械によるボーリング技術の普及に連れ,上総掘りは次第に忘れ去られていくようになりましたが,日本の数々のNGOによってアジア・アフリカ各国に紹介されてたくさんの上総掘り井戸が生まれ,開発途上国の水資源問題解決に役立っています。
(小川かほる・安曽潤子)
 
活動 やってみよう
地下水学習キット
 
 
 子どもたちが地下水の流れや,湧水,自噴井戸のしくみなどを,実際に触れて学習できるように開発したものです。
実験(1)雨を降らせて見よう
 霧吹きで森のところに雨を降らせます。井戸の中の浮き注)の動きを見てください。崖の下から水が湧いてきます。これが湧水です。
 注):浮きの位置まで砂粒の間に水が溜まっていることがわかります。
実験(2)井戸水をくみ上げてみよう
 まわりの井戸の浮きの動きがどうなるかよく見てください。
実験(3)井戸を作ってみよう
 このキットのどこに井戸を掘るといいかな?
 
地下水迷路
 
地面に降った雨はどこにいくのかな?
水になって土の中を探検しよう。


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