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1-2 雲 浮かぶ水
 大気中の水は,水蒸気や雲(小さな水滴や小さな氷の粒からできています)として存在します。その量は1万2900km3で,地球全体の水の0.0009%を占めると計算されています。大気中の水は,陸地や海から水が蒸発することによってもたらされます。反対に,雨となって地上に降りそそぐことによって減少します。こうして,大気中の水は平均して約10日間という短い期間で,次々と入れ替わっています。
 
 
Q 雲はどうやってできるの?
A 私たちに見えている雲は,小さな水滴や氷の小さな粒の集まりです。海や陸からは,水がさかんに蒸発してたくさんの水蒸気ができますが,水蒸気は見ることはできません。しかし,水蒸気を含んだ空気が上昇しながら次第に冷えていくと,水蒸気が水や氷の小さな粒に変わり,雲として私たちの目に見えるようになるのです。
 
Q 雲や霧は湯気と同じ?
A 雲や霧は,主に小さな水滴の集まりからできています。白く見える湯気の正体も小さな水滴です。湯気は水蒸気(気体)だと思っている人がいますが,それはまちがいです。水蒸気は目では見えません。湯気は,お湯から蒸発した水蒸気がすぐに冷やされて小さな水滴に変わったもので,これが白く見えるのです。湯気が広がると,小さな水滴は再び蒸発して水蒸気に変わります。
 
Q 雨が降るしくみは?
A 日本付近で雨を降らせる雲の中には,小さな水滴と氷の小さな粒(氷晶)の両方が存在します。このとき,水滴から氷晶へ水蒸気が移動して氷晶が大きくなります。大きく成長した氷晶は落下し,水滴やまわりの粒もくっついて,地面まで落下するものが雪です。しかし,たいていは気温の上昇とともに落下の途中で融けて,雨となります。
 
 空気中に含むことのできる水蒸気の量は気温によって変化します。1m3の空気中に含むことのできる水蒸気の最大の量を,飽和水蒸気量(単位g/m3といい,気温が高いほど飽和水蒸気量は増加します。飽和水蒸気量を超えて水蒸気が供給されると,水蒸気は水に変わります。こうして水蒸気が水に変わることを凝結といいます。また,気温が下がる場合は,飽和水蒸気量が減少するために,空気中に含みきれなくなった水蒸気が水に変化(凝結)します。
 空気が上昇すると,気圧が下がるため,しだいに空気は膨張して温度が下がります。これを断熱膨張といいます。水蒸気を含んだ空気が上昇すると,しだいに温度は下がり,飽和水蒸気量が減少するために,空気中に含みきれなくなった水蒸気が小さな水粒や小さな氷の粒に変化します。これが雲の粒(雪粒)です。
 このように水蒸気が雲粒に変化するときは,何もないところより,煙や小さな塩の粒などが存在した方ができやすくなります。これを凝結核といいます。飛行機雲は,飛行機のエンジンから吐き出された排気ガスの粒子を凝結核として雲が発生したものです。
 雲の中では上昇気流が発生しています。雲粒はたいへん小さいため,わずかな上昇気流でも持ち上げられてしまい,なかなか落ちてきません。
 雨は多数の氷晶や水滴からつくられます。小さな水滴は,0℃以下になっても氷にならずに液体の水のままでいることがあります。これを過冷却水滴といいます。さらに冷やされると,一部は凍って氷晶になります。こうして雲の内部には凍らない水滴(過冷却水滴)と氷晶の両方が存在するようになります。同じ気温では氷面に対する飽和水蒸気量は,過冷却水面に対する飽和水蒸気量より小さいので,氷晶には回りの水蒸気が集まってますます大きくなるとともに,水滴は反対に水蒸気となっていきます。こうして成長した氷晶が落下する途中に,他の氷晶や過冷却水滴がくっついて雪になります。さらに雪がお互いにくっつくと,大きな雪片になります。この雪が落下途中に融けたものが雨です。このように,日本付近で降る雨は氷晶が大きな役割を担っています。このように降る雨を冷たい雨といいます。これに対し,熱帯地方など暖かいところでは,氷晶はできず,水滴の衝突だけで大きくなって雨が降ります。これを温かい雨といいます。
 
図2.1 雲の種類と生成高度
 
雲の種類とでき方
 雲は,地表付近から高さがおよそ13kmまでの大気中で発生します。地表付近に発生する雲は小さな水滴からできていますが,高いところに発生する雲は小さな氷の粒になっています。氷の粒からできている雲は,水滴からできている雲よりも明るい感じの雲になります。
 雲は高さと形で10種の雲形に分類されます。高さ5〜13km付近にある巻雪(すじ雲)・巻積雲(うろこ雲)・巻層雲(うす雲)という上層の雲,2〜7km付近にある高積雲(ひつじ雲)・高層雪(おぼろ雲)・乱層雲(あま雲)という中層の雲,そして2km以下にできる層雲(きり雲)・層積雲(うね雲)・積雲(わた雪)・積乱雲(にゅうどう雲)という下層の雲に分けられます。乱層雲から比較的穏やかな雨や雪が降り,上層にまで発達した積乱雲からは強い風を伴った激しい雨や雪が降ることがあります。
 雲が発生するのは,上昇気流が起きたときです。たとえば,太陽光線によって地面が温められると,地面近くの空気も暖められて膨張し,軽くなって上昇気流となります。上空では気圧が低くなるため,空気はさらに膨張して温度が下がります。このときに,空気中の水蒸気が小さな水滴に変わって雲が発生します。モグモグと発達した大きな積雲や積乱雲(これらをにゅうどう雲といいます)は,このような強い上昇気流によって発生した雲です。雲にさまざまな形が見られるのは,こうした発生のしくみや高さ,雲の粒のちがいなどによるものです。
 雲の色は太陽の光を反射したもので,日中はだいたい白く見えます。しかし,影の部分が灰色に見えたり,朝日や夕日が当たって黄色や燈色に見えたりすることがあります。
 
湯気は雲や霧と同じ水の粒
 水が沸騰して立ち上る湯気は,雲や霧の粒と同じ,水の小さな粒がたくさん集まったものです。しかし,沸騰している湯のすぐ上は透明で何も見えません。その上から真っ白な湯気ができています。水蒸気は目に見えず,それが冷えて水滴になると白い湯気になるのです。
 そして,立ち上った湯気は再び見えなくなります。水滴が蒸発して再び水蒸気になったのです。地上(1気圧)では,100℃以上では水はすべて水蒸気に変わり,それ以下の温度では空気中に含むことができる分だけ水蒸気になります。雲や霧は空気中に含むことができなくなった水蒸気が水滴(あるいは小さな氷)となったものなのです。
 
露・霜・霜柱
 夜,放射冷却(物が外へ熱を出して(放射)冷える(冷却)ことをいい,ここでは地面の熱が夜どんどん大気中に出ていってしまい温度が下がり,それが空気中に伝わること)によって気温が下がってくると,空気中の水蒸気の一部が液体の水に変化(凝結)して,地面や草など,地表近くにあるものに付着します。れがつゆ(露)です。氷を入れたコップの周りに,空気が冷やされて付いた水滴と同じです。
 霜は,晴れて冷えた冬の朝に,地面や植物などに付着する氷の結晶をいいます。これは,空気中の水蒸気が直接氷の結晶になったもので,これを昇華(ものが固体から液体にならず直接気体,またはその逆,気体から固体になる現象)といいます。
 霜柱は,土中の水分が土の粒のすき間を通って上昇し,地面近くで冷えて氷になったものです。そして先にできた氷や土を押し上げるように柱状に成長します。霜柱は,水が毛管作用で上昇しなければならないので土の中の温度は0℃よりも高く,地表面の温度が0℃以下のときにできます。
 露と霜は空気中の水蒸気からできたものですが,霜柱は地中の水分が凍ったものです。
 
 
Q 天気予報はどうやって出す?
A 地球上の多くの場所で気温,気圧,湿度,雲量,降水量,風向,風速などを観測しています。また気象衛星や気象レーダーなどからも情報を得ています。そのデータから,コンピュータなどによってその後の大気の状態を予測し,これまでの経験などを踏まえて,予報官が各地の天気予報を出しています。
 
 天気予報がない時代は,観天望気(かんてんぼうき)といって,雲の変化や風の向き・強さ,そして湿気などさまざまな自然の状況から,その後の天気を予測していました。
 しかし現代では,人間の直接の観測以外にも,たくさんの自動気象観測装置があり,ラジオゾンデ(気象観測用の気球)やレーダー,気象衛星などを利用して,天気予報を出すようになりました。地上天気図によって,地表付近の風や雲の広がりが予想できます。また高層天気図によって,高・低気圧の動きや盛衰,気温の変化,台風の動きを予想しています。また,雨雲の分布を知るレーダー画像や,地球規模で雲の様子を知ることができる気象衛星画像も予報に大きく役立っています。しかし,気象現象はたいへん複雑であるため,人間のこれまでの経験による判断も天気予報には必要です。
(武田康男・田辺浩明・小川かほる)
 
 
活動
ダイヤモンドダストをつくってみよう
【手順】
1)冷凍庫内に黒い布(紙)をはってマイナス20℃くらいまで冷やす
2)懐中電灯で光をあてながら,息を吹きこむ。中の様子を観察する
3)白い雲のなかで,エアキャップをつぶす。変化を観察する。
 
【解説】
 小さな氷の粒が輝きながら空を漂うのがダイヤモンドダストです。透明な雪の結晶や小さな氷の粒が太陽の光を受けて輝いているものです。とくに,冷えた朝,晴れた空から降るものがきれいです。気温が氷点下十度以下で,水蒸気がたくさんある時に起こりやすいです。よく見るとプリズムのように色分かれしていることがあります。
 ダイヤモンドダストは室内でもつくることができます。冷凍庫やドライアイスなどで冷やした容器に息を吹き込んで,氷点下十数度で過冷却水滴がたくさんある状態をつくります。その中でエアキャップ(通称パッチン)などを割ると,その衝撃(断熱膨張)でまわりの過冷却水滴が一瞬で凍り,小さな氷の粒となります。そこに懐中電灯などで光をあてると,キラキラとたくさんの輝きがみられます。


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