4-2-2 根室―南千島起源の幼生の分散
モデルによる粒子追跡の結果を、2000年について放流10日後の粒子位置を図16に、放流40日後を図17に、そして2001年について、放流10日後および40日後の位置をそれぞれ図18と図19に示す。計算した3年全てにおいて、大部分の粒子は40日後には太平洋に流出した。特に、2000年には、ほとんど全ての粒子が流出し、根室―南千島海域にはほとんど残らなかった。
これは、シミュレーション期間において、2000年は2001年に比べて西風が強く(図20、22)、表層の流れ(図21、23)がその影響を強く受けたためである。根室半島周辺に着底した粒子は、国後島・色丹島・歯舞諸島および根室半島沿岸起源、すなわち根室−南千島海域起源であるが、択捉島からは到達していない。これは、根室−南千島海域は流れが弱くかつ変動するため混合と滞留がよいためであり、また択捉起源の幼生は太平洋に流出し易いからである。
図16. 根室−南千島海域起源の粒子の放流10日後の位置(2000年)
図17. 根室−南千島海域起源の粒子の放流40日後の位置(2000年)
図18. 根室−南千島海域起源の粒子の放流10日後の位置(2001年)
図19. 根室−南千島海域起源の粒子の放流40日後の位置(2001年)
図20. 2000年の風
図21. 2000年の表面流
図22. 2001年の風
図23. 2001年の表面流
4-2-3 粒子追跡の結果
・サハリン付近の粒子は予想に反して、一部が北海道沿岸に運ばれた。これはARGOSブイとの比較時にもみられた海盆規模の循環に運ばれている。これは谷口らのDNA解析の結果による遺伝的隔離の事実とは矛盾している。
・根室−南千島水域内の粒子は多くが太平洋に流出し、2000年は特に顕著であった。
・根室−南千島水域内では流速が遅く、流れの方向も次々と変化するため各地の粒子がよくまざる。
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