4-2 ハナサキガニ浮遊幼生の分散
粒子は、産卵場所付近の浅瀬に格子あたり40個ずつ配置し、最初の10日間に順次流した。総個数4280個の粒子を5月〜6月にわたって、1999、2000、2001の3年について、追跡した。放流地点は、サハリン島東岸および南千島沿岸の水深50m以浅の浅瀬である。流速データは、表層20mの鉛直平均流速の日平均値を用いた。放流後50日以降60日までの間に浅瀬の格子上にいる粒子は着底させた。
4-2-1 サハリン起源の浮遊幼生の追跡
粒子の初期位置を図12に示す。2001年について放流後20日後の位置を図13に、放流後40日の位置を図14に、放流後60日の位置を図15に示す。
図12. サハリン起源の粒子の初期位置
図13. サハリン起源の粒子の放流後20日の位置(2001)
図14. サハリン起源の粒子の放流後40日の位置(2002)
図15. サハリン起源の粒子の放流後60日の位置(2002)
サハリン島東岸から放流された粒子のうち、サハリン東南部の粒子は、どの年も、放流20日後に南に移動を開始し、60日後には北海道および南千島の沿岸に着底した。この結果は池田ら(2005)によるDNA解析の結果と完全に矛盾している。
サハリンから北海道および南千島への輸送経路は主として海洋モデルの海盆規模の反時計回り循環によって形成されている。このモデルは宗谷暖流と親潮の再現には成功していない。
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