4-1-2-3 東サハリン海流域/中部
この小領域は、東サハリン海流が沖合い流軸と沿岸流軸に別れる海域である。アルゴス・ブイの場合、高い頻度は流速5-15cm/s付近にある。(図9)
図9. 東サハリン海流中部における流速の頻度分布
アルゴス・ブイの平均流速(表2)は、モデル粒子の約2倍であるが、滞在時間は約1.2倍である。これは、アルゴス・ブイのひとつ(空色の軌跡)が東サハリン海流に乗るまでに手間取ったためである。
4-1-2-4 東サハリン海流域/南部
この小領域は、東サハリン海流が分岐したあとの沿岸流軸の海域に相当する。この小領域では、アルゴス・ブイの流速は10-15cm/sに最高頻度を持ち、流速が30cm/sより速いものが約20%を占める。(図10)
図10. 東サハリン海流南部における流速の頻度分布
4-1-2-5 千島海盆
この小領域では、アルゴス・ブイの軌跡は時計回りの中規模渦の存在を示し、モデル粒子の軌跡は反時計回りの海盆規模の循環を示している。これらの流れのパターンに対応して、ブイの流速頻度分布は平らであり、モデル粒子は5-15cm/sに頻度のピークを示している。(図11)
図11. 千島海盆における流速の頻度分布
表2. 
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アルゴス・ブイとモデル粒子との平均遠度と平均滞在時間の比較
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AREA |
Mean Speed(cm/s) |
Staying Day(day) |
ARGOS |
MODEL |
ARGOS |
MODEL |
Converge area of ESC |
13.4(±10) |
11.6(±9) |
56.5 |
26.7 |
North of ESC |
19.5(±16) |
13.2(±10) |
14.3 |
29.7 |
Central of ESC |
14.9(±13) |
8.7(±7) |
23.8 |
29.1 |
South of ESC |
18.5(±14) |
9.7(±8) |
27.8 |
33.6 |
Kuril Basin |
21.1(±14) |
13.1(±9) |
77.1 |
89.9 |
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4-1-3 比較の結果
・冬季のオホーツク海西部の海流、特に東サハリン海流の流れはおおむね再現できている。
・東サハリン海流域ではモデルのブイの速度は遅い。これは岸近くでのアルゴリズムが悪いためと思われ、今後の課題である。
・アルゴス・ブイの軌跡では北緯50度付近から東に向かう流れが起こっているが、モデルでは再現されていない。
・アルゴス・ブイの軌跡では、千島海盆には時計回りの中規模渦が多数存在しているが、モデルでは千島海盆に海盆規模の反時計回りの循環が存在している(過去の知見でも反時計回り循環は存在)。これはモデルが潮汐を含まないため、中規模渦の形成機構である、潮汐による渦度の生成(Nakamura et al., 2000)、あるいは強い潮汐混合による傾圧不安定(Ooshima et al., 2005)が、再現されていないためと考えられる。
・親潮と宗谷暖流は、このモデルでは再現できていない。
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