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III. 南千島海域におけるハナサキガニ幼生の輸送シミュレーションの方法
サハリン漁業・海洋学研究所:ニコノフY.Y
北海道大学博士課程:クラスネンコA.S.
 
 本研究の目的は、数値的な手法を用いて、ハナサキガニの幼生の着生場所として最も可能性の高い場所を特定することである。
 
物理モデルについて
地理的データ
 数値シミュレーションを行ったのは(東経145度、北緯43度)(東経149度15分、北緯44度45分)の地点で区切られた長方形の区域においてである。海底の地形は下図に示すとおり。
 
 
モデルについて
 南千島列島海域の物理―地理的な条件に対し、今日広く利用されている三次元流体力学モデル、プリンストン大学海洋モデルを使ってシミュレーションを行った。
(POM MELLOR G.L, 2004)
 モデリングに当たって、均等なメッシュを84×54のサイズにとり、その正方形のセルの一辺は4,000mになっている。鉛直方向には、五つの比率の層(1:1:3:5:5の割合)をとった。計算は三次元モデルで行い、モデリングの時間は30昼夜である。外部モードのタイムステップは1秒、内部モードのタイムステップは30秒である。
 
POM parameters
 
 POMモデルで用いたアルゴリズムは次の条件を想定し、物理モデルの部分に導入した。水平方向の海水の混合速度は、水面上の風に依存している。海底では、混合の鉛直速度がゼロであるとした。陸上との境界では、岸に対して垂直方向の速度の成分は存在せず、同様にこの境界では熱や塩分のフラックスもないものとみなす。モデルのオープンバウンダリー(開放境界部)には、モデルの一番端のセルの指標と同じに、無限に水があると想定した。
 
POM parameters
 
 昨年と比べてモデルに次のような改良を加えた:
・太陽放射をモデルで計算した、つまり昼と夜で違いがある。
・モデル地図を拡大した(択捉島を加えた)。
・外部の海流を加えられるようにした(例えば、宗谷海流)
・モデルの中に実際のカニの幼生の分布を入れた
・水温とクロロフィルのデータに衛星のデータを加えた。
 
初期の流体力学的、および大気分布
 大気の特徴はモデリングを行うに当たって常に一定とし、初期の温度と塩分濃度の配分は下記のとおりに決めた。
・大気圧:1009.2ヘクトパスカル、
・気温:5.6℃
・湿度:80%
・雲量:0.72
・西の風:風速毎秒1.5m
 温度場の構築には次のデータを用いた。
・南千島での調査の資料
(サフニロ2005年、5月12〜15日)
 
Map of oceanographic station (SakhNIRO, 12-15 may 2005)
 
・TeraScan衛星のデータ
 離散的なデータは線形三角分割法によって補間した。
 
Initial temperature distribution (SakhNIRO, satellite TeraScan)


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