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6. 津波波形の形態の違いによる津波伝播特性の解明実験
 第5章では、模型水を静止した状態で水理模型に設備されている起潮装置のゲートを1回動かし、津波を発生させた。数値実験でも静止水面の状態から、断層モデルにより津波を発生させている。しかしながら、瀬戸内海では潮汐が卓越しており、静止水面での状態と異なることが予想される。
 そこで、潮汐が起こっている状態で津波を発生させ、その影響を評価することにした。なお水理模型実験では、津波を発生させる装置(津波発生装置)を考案し製作して行った。
 
6.1 津波発生装置の製作
 水理模型内に津波を作り出す装置を考案した。この装置は、任意の場所で津波を発生させることができるもので「津波発生装置」と呼ぶ。
 図6-1に、津波発生装置の概観図を示す。装置の形状は、底部を開けた円筒形(チャンバー)である。円筒形の大きさは、直径2m、高さ1mであり、厚さ6mmのステンレス板SS400を用いて製作した。津波の発生は、チャンバー内の空気を真空ポンプと電動バルブで制御する方法を採った。具体的には、チャンバー上部に設置した真空ポンプによりチャンバー内の水位を周辺より高くし、同じくチャンバー上部に設置した電動バルブにより瞬時にチャンバー内の水位を変化させる方法である。なおこれらの作動ボタンは、本装置より30m離れた位置で遠隔操作することができ、津波の大きさもチャンバー内の水位を変えることで可能である。
 写真6-1に、津波発生装置のスナップショットを示す。
 
図6-1 津波発生装置の概念図
 
写真6-1 津波発生装置
 
6.2 実験ケース
 紀伊水道から入ってくる津波を検討するために、津波発生装置を紀伊水道の中央部に設置した。その時の状況を写真6-2に示す。津波発生装置の設置場所は、和歌山県御坊より南側へ8km(模型で4m)、西側へ20km(模型で10m)の位置である。
 実験では、先ず津波発生装置の機能を検討した。模型水を静止させた状態(基準水位)で、図6-2に示すようにチャンバー内の水位高さを30cm(規模1)、45cm(規模2)、60cm(規模3)と変化させて津波の規模を調べた。
 次に、M2潮汐を再現した中で「規模3」の津波を紀伊水道の満潮時に与え、津波の到達時間や最大高さを評価するために主要港湾55地点において津波波高の測定を行った。津波波高の測定位置は、第5章で示したゲート操作による津波実験の測定位置と同じにした。津波波高データは、A/D変換器を介してサンプリング間隔0.1秒でWindowsマシンに収録し解析を行った。
 
写真6-2 津波発生装置の設置位置(紀伊水道中央部)
 
図6-2 津波発生装置による実験条件


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