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4.2 実験ケース
 大阪湾は高潮が多い海域であり、過去に室戸台風(1934年9月21日)、ジェーン台風(1950年9月3日)、第2室戸台風(1961年9月16日)によって大きな被害をこうむった。
 水理模型実験では、台風シミュレーター装置を使って大阪湾に高潮を与え検討を行った。
 実験では、先ず台風シミュレーター装置の機能を調べた。台風シミュレーター装置の送風機から発生する風速を調べるために、図4-3に示したNo.1〜10の位置において測定を行った。風速の測定には、アネモマスター風速計(KANOMAX製MODEL604型)を用い、台風シミュレーター装置のチャンバー下10cmの位置において、風速の大きさを可変(規模1、規模2)して行った。表4-1に測定結果を示す。規模1、規模2とも送風機に一番近いNo.1の位置で風速が一番大きく、送風機から離れるに従って風速は小さくなっている。この結果から、チャンバー内で渦が発生している様子はみられず一様に風が発生し、また模型水面上では更に風速は小さくなっているものと推測される。
 大阪湾の高潮の実験では、第2室戸台風の進路、風速分布を参考に台風シミュレーター装置の設置場所を決めた。図4-4は、第2室戸台風時の風速分布を示したものである3。図は、実測値より内挿した実測風であり、実験ではこの風速分布を参考にして岸和田沖に台風シミュレーター装置を設置した。なお実験では、装置の関係上、台風の一部を模擬して高潮を評価することにした。
 
図4-3 台風シミュレーター装置の機能測定(風速測定位置)
 
表4-1 風速測定結果(単位:m/s)
No.1 No.2 No.3 No.4 No.5 No.6 No.7 No.8 No.9 No.10
規模1 1.54 1.28 1.19 1.07 0.98 0.86 0.69 0.54 0.36 0.16
規模2 1.93 1.57 1.49 1.36 1.18 1.07 0.93 0.77 0.46 0.21
 
3 村上和男、森川雅行、堀江毅:ADI法による高潮の数値計算法、港湾技研資料、No.529、35p.、1985.
 
 図4-5は、台風シミュレーター装置の設置位置と水位測定位置を示したものである。実験は、潮汐なしの状態(基準水位、M2潮汐の平均値)と平均潮であるM2潮汐を与えた状態を扱い、その中で台風シミュレーター装置を作動させた。風速は規模1と規模2を検討し、Stn.1〜4の位置において水位の測定を行った。
 水位の測定は、潮汐なしのケースの場合、高潮を発生させる5分前(現地換算約13時間)から開始し高潮期間を含めて30分間(現地換算約80時間)行った。M2潮汐を与えたケースの場合は、高潮を発生させる2潮汐周期前から水位の測定を開始し、高潮期間も含めて8潮汐周期間行った。なお水位データは、A/D変換器を介してサンプリング間隔0.1秒でWindowsマシンに収録し解析を行った。
 
図4-4  第2室戸台風時における風速分布3
(9月16日13時)
 
図4-5  台風シミュレーター装置の設置位置(赤枠)と水位測定位置


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