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4. 高潮時の潮汐測定と災害度合の解明実験
 高潮とは、台風や発達した低気圧に伴って海岸で海面が異常に高くなる現象をいう。高潮発生の原因は、図4-1に示すように気圧低下による海面の吸い上げと、風による吹き寄せである2。台風の中心気圧は周囲よりも低いため、周囲の空気は海面をおしつけ、中心付近の空気が海面を吸い上げるように作用する結果、海面が上昇する。気圧が1hPa低くなると、海面は1cm上昇する。また、台風に伴う強い風が沖から海岸に向かって吹くと、海水は海岸に吹き寄せられ、海岸付近の海面が異常に上昇する。
 ここでは水理模型実験により高潮の影響を評価する。水理模型実験では、台風による高潮を局所的に与える装置(台風シミュレーター装置)を考案し製作して行った。
 
図4-1 潮位上昇メカニズム2
 
4.1 台風シミュレーター装置の製作
 水理模型内に高潮を作り出す装置を考案した。この装置は、台風の一部を模擬したものであり「台風シミュレーター装置」と呼ぶ。
 図4-2に、台風シミュレーター装置の概観図を示す。装置は、台風模擬部、整流部、送風機部からなり、装置全体の大きさは5m×7mである。台風模擬部の形状は、底部を開けた正方形(チャンバー、大きさは5m×5m、高さ0.2m)であり、透明アクリル板(厚さ10mm)を用いて作成した。整流部は台風模擬部からの空気を整流して送風機部に送り出すために設け、送風機部はチャンバー内の空気を送風機(3台設置、能力1.5kw、インバータ制御)で吸い上げるために設置した。高潮は、このチャンバー内の空気を3台の送風機で吸い上げて負圧状態にして発生させる。なお、送風機から出る送風の大きさは、ボリュームスイッチにより可変することができる。
 台風シミュレーター装置は、任意の海域で使用できるようにクレーンに吊り下げて実験を行った。その時の状況を写真4-1(1)4-1(2)に示す。
 
2 佐伯浩:台風18号による大森大橋の被災について、土木学会誌、Vol.90、No.3、pp.51-54、2005.
 
図4-2 台風シミュレーター装置の概観図
 
写真4-1(1)台風シミュレーター装置(クレーン設置状況)
 
写真4-1(2)台風シミュレーター装置(実験スナップ)


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