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特別講演2-「ヨーロッパにおける新生児聴覚スクリーニングの現状」
Hearing Screening in Newborns and Infants - Current Status in the European Area
Ferdinando Grandori, CNR Institute of Biomedical Engineering
ARSI-Onlus (Association for Research on Infant Hearing No-profit), Milan, Italy
ferdinando.grandori@polimi.it
 
Abstruct:
 
 In the nineties a sort of revolution changed the way the health care systems provide services on hearing loss, its effects and patient care. All the professionals in the field agree that this was mainly due to the implementation of national - or large scale - newborn hearing screening programmes.
 The creation of integrated Hearing Detection and Intervention (HDI) programmes has been greatly accelerated by the development of equipment and protocols as well as by increased level of awareness among clinicians, health authorities, agencies and associations.
 This presentation summarizes the basic steps in the relatively recent evolution of EHDI programmes, with an emphasis on technological achievements of the past five years or so in screening, diagnosis and intervention and on protocols for the various elements of care. One interesting by-product ofthe whole process is a measurable increase of the level of quality for the audiological services for adults, in nearly all countries of the European area. Finally, it will be shown that the present status of EHDI programmes is also a result of joint European efforts in the field as well as of the mass screening initiatives in the USA, where over than 94% ofthe newborns are screened for hearing.
 
Abstract: 19世紀は、難聴に対しての患者へのケアシステムが大きく変化した時代である。全ての専門家達が、新生児聴覚スクリーニングについてのプログラムを普及すべく、国全体で取り組むべき問題だと認識した。そのプログラム(HDI: Hearing Detection and Intervention)は必要とする器材、方法を含め技術者、健康事業関係者、代理店関係者、組合関係者などへ浸透していった。
 今回の発表で、このEHDIプログラムの基本的なスクリーニングの発展過程と、最近5年間の技術的発展、診断、一連のプロトコールも含み説明する。この一連の過程において、一つ興味深い点は、難聴検査についてヨーロッパでの大人に対するケアも挙げられることである。最後にこのスクリーニング検査は、先駆けとなったアメリカ(94%のスクリーニング率)での教えをもとに、ヨーロッパ全土の協力体制により成しえた事業である。
 
スライド1: ヨーロッパ諸国においての新生児聴覚スクリーニングの現状
 
スライド2: EHDIプログラムの施行後10年の試み。
なぜ、どのように、だれが、いつ、スクリーニングを進めていくか。
 
スライド3: 難聴の発生頻度は中等度の難聴も含め、約3/1000人存在する。
 
スライド4:
 約1〜3/1000人の難聴児が出生しており、出生時の合併症の頻度として、他の疾患と比較すると最も頻度が高い疾患である。5才時での難聴を有する率をみると、1/250人以上存在しコミュニケーション障害や学習障害など疑われ難聴が、遅れて発見されてきた。
 
スライド5: なぜか(2)
・以前のUNHSによるスクリーニングによって難聴が発見される平均年齢は2.5〜3才であった。
・早期に難聴が発見されることによる利益は大きく、言語、学習、社会、感情において良い影響を与えている。
・早期発見によって、乳児医療、幼児医療にかかる費用は削減されることにつながる。
 
スライド6: なぜか(3)
・科学的、臨床的な面から見ても早期発見による効果は大きい。
・EHDIシステムは、世界的にもスタンダードになりつつある。
 
スライド7: 新生児スクリーニングにおいて、以下の点より発展を遂げることができた。
・信頼性の高い統計解析
・処理機能の優れた聴覚器材
・人工内耳の発展
・プログラム機能を備えたデジタル補聴器の開発
・広く使われている補助装置の充実化
・障害者としての援助体制の充実化
 
スライド8: どのように検査を進めていくか
スライド9:
 OAEを1回もしくは2回施行する。その際に要再検と出た場合、AABRを施行する。それで再度、要再検という結果が出た場合は難聴という診断にいたる。
スライド10:
 AABRのプロトコールについて、要再検と出た場合、難聴の詳しい診断へと進む。
 
スライド11: 2つの異なる経過をたどるプロトコール
1)リスクを合併する場合(NICU管理など)AABRをメインに施行する。
2)正常児の場合は1回、2回のAOAEとAABRを施行、もしくは初めからAABRを施行する。
 
スライド12: 正常児に対するプロトコール
 最終的な目標としては、正常基準へ達するということ。
・1ヶ月以内にスクリーニングを施行する。
・なるべく出生した児を把握しフォローする体制を整える。
 
スライド13: 正常児に対しての将来のプロトコール。
 AOAEとAABRを一度で測定可能とし簡便かかつ精密度を上げることがある。
スライド14: Echo-screenという器材は、OAEとAABRが同時に測定できる。
スライド15: 実際にそのEcho-screenを使いスクリーニングを施行している。
スライド16: 一連の流れのポイント
・検査器具の自動化
・スクリーニングの流れを母、看護師、NICUなどへ受け入れいれてもらい体制を整える。
・ノイズに対する処置
・スクリーニングにおいての改善点をいつも考慮する。
 
スライド17: その他のスクリーニングのポイント
・結果の集計
・後に発症する難聴に対しての対策
・早期発見された児への対応プログラム
・改善を見出し解決方法を見つける
・教育環境の問題
・EHDIは発展段階にある。
 
スライド18: EHDIシステム
 スクリーニングは出生後1ヶ月以内に済ますことが必要。診断を3ヶ月以内に、そして6ヶ月からその後の対応としての療育などを開始する。
 
スライド19: EHDIシステム
 耳鼻科のみではなく、聴覚言語士、遺伝学専門家、早期教育関係者、社会福祉サービス関係、聾学校関係者、親の会、出生した病院など、多くの機関や人が関わって成り立っている。
スライド20: 早期発見とその後の療育にかかる費用(Milan Program)
 一人あたりのコストは、正常児では5.5〜7ユーロであるが、なんらかの異常がでた場合の児は5100ユーロの費用がかかる。
 
スライド21: (スライド7と同じ)
 新生児スクリーニングにおいて、以下の点より発展を遂げることができた。
・信頼性の高い統計解析
・処理機能の優れた聴覚器材
・人工内耳の発展
・プログラム機能を備えたデジタル補聴器の開発
・広く使われている補助装置の充実化
・障害者としての援助体制の充実化
 
スライド22:
・この分野での重要な点の一つは、技術面の発展が著しい
・この数年間で培ってきた結果は確実であるため、有効に活用できる価値がある。
 
スライド23: 新生児スクリーニングEuropian Consensus Development Conference
 
スライド24: ECDCでのポイント
・1/1000人以上の新生児に難聴という問題が発生している。
・障害の程度は40dB以上だとある程度の日常生活上に障害が出うると判断している。
 
スライド25: 省略
スライド26: 省略
スライド27: 省略
スライド28:
 新生児でのスクリーニングで異常が指摘された場合、それが先天的か進行性の難聴か判断が困難である。
スライド29:
・新生児スクリーニング施行は、その児の一連の長い人生にわたって視野を広げてみると、スタート地点にすぎないという認識が必要である。
・聴覚スクリーニングの質の向上についての具体案は、検査に対しての技術能力の向上、結果報告の精密さなどであり、常に念頭におくべきである。
 
スライド30:
 新生児聴覚スクリーニング施行の時期については、早けれぱ早いほど良い。その早期発見によって次の対応への手助けになる。
スライド31: 年表
NIH(National Insitutes of health in the USA)
JCIH(Joint committee on infant Hearing)
AAP(American Academy of Pediatrics)
NHSP(Newborn Hearing screening Program)
 
スライド32: European Commissionによって多大なるサポートがされている
スライド33: European CommissionのQOLについてのプロジェクト
スライド34: ヨーロッパにおける新生児スクリーニングの現状
スライド35: 施行している地域の説明(ヨーロッパ諸国)
スライド36: 地図上でその地域を説明
スライド37: それぞれの地域での試み
スライド38: 続き
スライド39: 続き
 
スライド40: ヨーロッパ諸国での現状
・聴覚検査の精密さは、国によって差がはげしい。
・EHDIがヨーロッパ諸国で浸透しつつあるが、その現状はその国の経済状態と比例していない。
・スクリーニングが浸透するには、地域、国レベルでの対策が必要となる。
スライド41: 続き
・これらの一連のプロセスは、小児科医、耳鼻科医、言語聴覚士、それぞれが主導権をにぎって実行されるものではない。
・EU諸国では、すでにそれぞれのチームの協力体制が整いつつある。
・それらの流れから、聴覚系のサポート体制として成功している兆しがある。
・UNHSのコンセプトを生かし更なる発展が望まれる。
スライド42: 続き
・このUNHSが関連するスクリーニングを取り入れている国は、更なる改善点を見つけ出し充実させる必要がある。
・このような取り組みは、国、地域でのレベルで対策を練る必要がある。
 実際に遅れをとっている国が存在する(ドイツ、イタリア、スペイン、スウェーデンなど)
 
スライド43: 出版と宣伝
スライド44: Ferdinando Grandoriによるポーランドでの公演風景
スライド45: ポーランドでのスクリーニング2周年記念(検査率98%)
スライド46: クロアチアでのEHDI導入セレモニー式典
 
スライド47: (スライド16と同じ)一連の流れのポイント
・検査器具の自動化
・スクリーニングの流れを母、看護師、NICUなどへ受け入れいれてもらい体制を整える。
・ノイズに対する処置
・スクリーニングにおいての改善点をいつも考慮する。
 
スライド48:
 今までは、ヨーロッパを中心に活動を続けてきたが、今回のシンポジウムがきっかけで、海外(日本)での新生児聴覚スクリーニング(埼玉県立小児医療センター)での試みを知るきっかけとなった。
 
スライド49: NHS2006でのアナウンスメント内容の紹介
 
スライド50:
 このようなシンポジウムなどの開催が年々増加傾向にある。このような啓蒙活動が、各地域への浸透がスムーズに図れる。その為今後もこのような会の発足が増えることを期待している。
 
日本語訳:埼玉県立小児医療センター耳鼻科 安達 のどか
監訳:埼玉県立小児医療センター耳鼻科 坂田 英明


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