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3.4 数値シミュレーション
 本論文ではLPV制御の有効性を検証するために、数値シミュレーションを行った。風速データとしては、九州大学応用力学研究所のフィールド試験で計測された実風速データから、運転モードの風速領域に合致したものを選択した。モード2の制御目的は、風力発電機を最適周速比(λopt=4.51)で運転することであるので、周速比の時系列データの結果をFig. 10に、一方で、モード3の制御目的は、風力発電機の出力を定格出力(Prated=300)に押さえ込むことであるので、出力の時系列データの結果をFig. 11に示す。比較のために、(1)式で示した回転数の2乗に比例する制御(従来制御)5)の結果も付記する。
 数値シミュレーション結果の定量的な評価のために、次のような分散評価指標として定義する。
 
 
 (24)式の第1式は最適周速比4.51からの、第2式は定格出力300からの分散値を表す。さらに、モード2における制御性能評価のために、次のような評価指標を導入する1)
 
 
 これは、時刻tまでに、流体力学的に獲得可能な風の総エネルギーに対して、どの程度の風エネルギーが実際に獲得されているかを表す指標である。それらの評価指標の結果をTable2,3に示す。
Table 2 Performance index in mode 2
σ2 EP (300)
Conventional Control 0.439 0.926
LPV Control 0.083 0.979
 
Table 3 Performance index in mode 3
σ2
Conventional Control 252.839
LPV Control 65.162
 
Fig. 10  Comparison conventional control with LPV control in mode 2
(a) Wind profile in mode 2
 
(b) Conventional control
 
(c) LPV control
 
Fig. 11  Comparison conventional control with LPV control in mode 3
(a) Wind profile in mode 3
 
(b) Conventional control
 
(c) LPV control
 
 モード2の制御こおいては、Fig. 10から、LPV制御は従来制御に対して最適周速比近傍での運転を実現しており、Table 2の結果からも、最適周速比からの分散が、従来制御が0.439に対し、LPV制御は0.083と、LPV制御は従来制御に対して、約1/5の分散値となっている。さらに、獲得エネルギーEP(300)の比較で見ても、従来制御は0.926に対し、LPV制御は0.979と約6%の改善が見られる。また、モード3の制御についても、Fig. 11から、LPV制御は従来制御と比較して、出力変動が大きく低減している。Table 3の定格出力300からの分散を見ると、従来制御は252.839であるのに対して、LPV制御は65.162と、約1/4に分散が抑えられている。ここで、Fig. 11の(b)、(c)には、出力値が300からオフセットを残して制御されているように観察されるが、これは、関数近似による数値誤差の影響と考えられる。


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