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「学校ぐるみノーメディアの取り組み2年目の今」
埼玉県蕨市立中央東小学校 成田 弘子
 
1. はじめに・・・取り組みのきっかけ
 私の勤務している蕨市は、面積が約5平方キロメートルにおよそ6万8千人が住む、日本で一番人口密度の高い市です。その中で、住宅地の中にある中央東小学校は、市内では比較的落ち着いているといわれているところですが、ここ数年の子どもたちの様子から、大きな変化を感じていました。具体的には、「言葉が乱暴」「けんかっ早い」「相手の話が聞けない」などの現状です。
 そのころ、新聞に紹介された、清川さんの「人間になれない子どもたち」を読み、「これだ!」と『目から鱗』の思いでした。さらに、森昭雄さんの「ゲーム脳」の本と講演、そして2004年10月2日に日大主催の公開講演会『IT社会と子どもの未来』を聴く機会に恵まれたことが、この取り組みの大きなきっかけとなりました。
 
2. 学校ぐるみの取り組みに・・・発信するのは、教師から
 清川さんの本にあった「ノーテレビデー」を知った私は、2004年の夏休み前に教育相談部からの提案として保護者に「夏休みはノーテレビデーをつくって、その日に子どもとのふれあいをしましょう」と呼びかけをしました。
 しかし、呼びかけだけではなかなか取り組みにつながらないことを実感していた頃にちょうど日大公開講演会を聞き、「この問題は、すぐに、もっと具体的に保護者に発信していくことが必要だ」と痛感したのです。
 幸いなことに、この公開講演会には、同じ職場の同僚3人で参加したので、早速「2歳まではテレビを消してみませんか」のビデオを購入し、「ビデオを使ってもっと強力に推進していこう」と話し合いました。
 まず、先生方に理解を深めてもらうことが大事と考え、校内の教育相談・生徒指導部に具体的な取り組みを提案したところ、“取り組みの項目を小刻みにしてだんだんとステップアップしよう”ということになり、「アウトメディア大作戦にチャレンジカード」(資料参照)を作りました。
 次は、保護者に理解を深めてもらう方法として、各クラスごと(学年懇談会で実施したところもあります)に冬休み前の懇談会で担任から、ビデオ視聴と「なぜ、私たちはこの取り組みが大切だと考えるか」という説明、そして「チャレンジカード」による取り組みを進めることを確認し合いました。
 又、子ども達には、保健の先生から身体測定の前に「テレビやゲームの時間が長いとみんなの体にどんな影響があるか」という内容の話を全クラスにしてもらいました。
 冬休みが終わって提出された各家庭のチャレンジカードは、「チャレンジしたコース」「子どもの感想」「親の感想」が記入されていました。それを私と保健の先生で読んでいると、それぞれに家庭での取り組みの苦労や様子が浮かんできて「これを何かの方法で保護者に返していきたいね」「アウトメディアのお便りにしてはどうかな?」と話がまとまり『アウトメディアだより』が誕生しました。(資料参照)
 この『アウトメディアだより』は、“アンケートの集計結果のお知らせ”や“家庭からの感想の紹介”そして次の取り組みについての説明など、学校からの発信の場になっています。
 
3. 具体的な取り組みの流れ
(1)2004年夏休み前・・・
教育相談部から呼びかけのお便り発行し、懇談会で説明
〔メニュー〕
・『テレビやゲームとのつきあい方をみなおしませんか?』
・日本小児科医会の「子どもとメディア」の問題に対する提言
*夏休みはノーテレビデーをつくって、その日に子どもとのふれあいをしましょう。
(2)2004年冬休み前・・・
各クラスごとに担任から懇談会で取り組みを呼びかける
〔メニュー〕
・ビデオ『2歳まではテレビを消してみませんか?』
・私たちがこの取り組みをしようと考えた理由(子ども達が変わってきた)
・中央東小の「アウトメディア大作戦にチャレンジしよう!」カードを使った具体的な取り組み方の説明
(3)2005年1月から・・・「アウトメディアだより」発行
〔内容〕
・冬休みのチャレンジカードに記入されていた『子どもの感想』『親の感想』と取り組み前(2004年2学期)のアンケート結果を6年生から学年ごとに紹介(NO1〜NO6)
(4)2005年春休み前・・・
「今年の春休みも 続けてアウトメディア大作戦にチャレンジしよう!」カードと清川さんの講演会のお知らせ(アウトメディアだよりNO.7)
(5)2005年5月・・・
「家庭の日」(毎月第3日曜日)は、「アウトメディア大作戦にチャレンジして家族のふれあいをもちましょう!」の呼びかけ(アウトメディアだよりNO.8)
(6)2005年6月・・・
取り組みの中でこれから考えていきたいことを提案「子ども達とケータイの付き合いについて」(夏休み前にアンケート実施)(アウトメディアだよりNO.9)
(7)2005年7月・・・
「7月8月家庭の日と今年の夏休みも、アウトメディア大作戦にチャレンジしよう!その時間を活かして、家族のふれあいを深めましょう!」と呼びかけ(アウトメディアだよりNO.10)
(8)2005年9月25日TBSラジオ「メイコのいきいきモーニング」に放送予定
 
4. 今後の取り組み
 2学期の予定として2つ考えています。1つめは、夏休み前に実施したケータイのアンケートを元に取り組みを始めること。2つ目は、この取り組みを始めて1年になる時期に家庭での様子をアンケートで把握したいと考えていることです。この結果を元に続け方を検討していきたいと思っています。
 さらに蕨市内への広がりという点ですが、今年度は、私の勤務する中央東小学校を含め3校が、それぞれ取り組みました。それら3校の養護の先生が“学校保健会”に働きかけて「蕨市全体の取り組みにしよう」と動いています。
 私も「他校の先生が少しでも取り組みやすいようになれば」と考え、中央東小学校で使った説明の資料や小児科医会の提言、チャレンジカードなどをフロッピーに入れ、「使ってください」とプレゼントしています。
 2005年4月10日に、私が参加している蕨市男女平等推進会議に提案して実現した清川さんの講演会を、市教育委員会や市会議員の人たちが聞いて「推進していこう」という方向になっているので、これらの動きがつながってくるといいなと思います。
 

蕨市立中央東小学校教諭(前任校で障害児学級を4年間経験)。4年前に中央東小に異動し、現在4年生を担任。
最近の子どもたちの様子の変化を考えている時に、清川輝基さんの著書『人間になれない子どもたち』に出会い、「目から鱗」の思いを持った。その後、「ゲーム脳」の森昭雄教授主催の日大公開講演会に参加し、「メディア漬けの子どもの生活」の深刻さを保護者に伝えていくことの必要性を痛感。教育相談部からの提案として、中央東小全学年で、アウトメディアの取組中。


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