日本財団 図書館


4)腐食影響に対する対応
 オゾン高濃度部分については、ステンレス鋼等耐オゾン材料で対応する必要があるが、中・低濃度の部分に関しては、オゾン濃度・影響時間等を考慮して材料を選択することになる。以下には、各装置に適すると思われる部材、処理等を示す。
 
(1)オゾンガス配管
 処理システム中のオゾンガス配管については、高濃度かつ影響時間が比較的長いことからオゾン耐食性が要求され、陸上と同様にステンレス鋼管又はオゾン耐性コーティング管を採用する。なお、排オゾンの暴露への配管も安全のためステンレス鋼管又はオゾン耐性コーティング管の採用を勧奨する。
(2)バラスト水配管(オゾン)
 オゾン注入部からスリットまでは、高濃度オゾンの腐食性を考え、ステンレス鋼管又はオゾン耐性コーティング管を採用する。スリット後方から脱気槽までの配管部は、実験結果よりオゾン濃度は0.3mg/程度まで下がるため、亜鉛メッキ鋼管でも問題ない。
(3)バラスト水配管(臭素酸イオン)
 脱気槽以降のバラスト水配管部は、臭素酸イオンの影響領域となる。臭素酸イオンの腐食影響は海水よりやや高い程度である。通常の海水ラインと同様に亜鉛メッキ又はエポキシ系塗料によるコーティングで問題無い。
(4)バラストタンク
 臭素酸のみの影響で、通常の海水タンクと同様にエポキシ系塗料によるコーティングで問題ない。仮に低濃度のオゾン海水が混入した場合でも1時間以内に消滅するため、塗料の防食効果の低下影響もなく、塗膜が影響を受ける事もない。
(5)バラストポンプ、バルブ
 バラストポンプは高濃度のオゾンを含んだ海水を送り出すため、ポンプケーシング及びインペラーなど、海水と接触する部分は耐食性のある青銅又はステンレス製とする。また、高濃度部のバルブ等も同様の材質のものを使用する。
(6)その他装置(オゾン注入装置、スペシャルパイプ、排オゾン装置、オゾン発生装置等)
 基本的には、耐食性のあるステンレス材を使用する。
 
5)トラブル時の船体への影響
 オゾン発生装置、オゾン海水ライン等には、漏洩が発生しない様十分な検査が行われるが、オゾンガス、オゾン海水が漏洩した場合の船体への影響及び対応策としては、以下の(1)〜(5)が考えられる。
 
(1)装置(オゾン注入装置、スリット板、排オゾン装置、オゾン発生装置等)
 装置については耐食性のある材質を使用する。
(2)漏洩ガスによる火災の危険性
 オゾンが漏洩した場合、或いは酸素製造装置から酸素が漏洩した場合には、火災の危険性が高くなる。しかし、オゾンは臭気があり、人により漏洩を感知できる。また、オゾン発生装置周辺及び機関室の底部には、オゾン濃度計を設置し、オゾン濃度が上昇した場合は自動的に警報が鳴るシステムとする。警報が鳴った場合、オゾン発生装置を停止させ点検を行うことにより、連続的で多量のオゾン漏洩を防ぐことができる。極微量の漏洩であれば、オゾンは大気中で自己分解されるので問題ないと思われる。機関室に関しては機動通風されていることからオゾンは希釈され、船外へ排出されることになる。
(3)漏洩ガスによる船体への腐食影響
 上記のように、オゾンの漏洩による滞留はないため、問題ないと考えられる。
 船体、装置等は、基本的に塩害に対するコーティング(塗装)が施されており、仮にオゾンが滞留しても短期間ならば、ほとんど影響を受けない。
(4)漏洩バラスト水による船体への腐食影響
 船体、装置類は基本的に塩害に対するコーティング(塗装)がされている。オゾンが使用されるのはバラスト水積み込み時の時間だけである。また、高濃度のオゾン水も短時間で水中分解するため、仮に漏洩したとしてもほとんど腐食影響を受けることはない。
(5)その他の影響
 何らかのトラブルが発生し、バラスト水へオゾンが過剰注入された場合であっても、海水中のオゾンは短時間で分解するため船体に影響を与えることはほとんどないと思われる。脱気槽でオゾン気泡を除去しきれず、オゾン気泡が多量にバラストタンクに入った場合でも、オゾンは自己分解するためほとんど腐食影響を受けることはないと思われる。
(6)重大事故発生時
 オゾンは不安定なため貯蔵に適さない。そのため、オゾンとして貯蔵することはなく、生成したオゾンはバラスト水に注入するか、あるいは排オゾン装置を経由して排気する。このため、オゾン発生装置が停止する場合はオゾンは配管内に残った量のみとなる。
 機関室火災、機関室浸水等の重大事故が発生した場合、オゾン発生装置にはエマージェンシーストップが作動し、オゾンの生成もストップする。このため、オゾンの大量流出の危険性は無い。仮に配管内に残ったオゾンが全て漏洩したとしても船体に影響を及ぼす量ではない。
 
(2)労働(船員)安全対策
 
 試作システムを設計するにあたり、活性物質オゾンが船員に与える影響とその安全対策についてまとめる。
 大気中のオゾン分子(O3)は、時間の経過とともに自己分解し、安定した酸素(O2)に戻る。この分解は、オゾンの酸化作用を受ける有機物・無機物及び水分の存在により速くなり、半減期は数時間から十数時間程度である。そのため、大気の汚染や使用後の処理の必要がなく、環境に影響を与えないことから二次公害の心配もない。
 しかし、人への有害性は次の2つが想定される。試作システムを設計する上で、これらの障害が船員に影響を及ぼさないように以下の安全対策を考慮する。
 
◇ オゾン含有空気の吸引による呼吸器系の障害
◇ オゾン含有空気が眼に触れることによる眼の障害
 
1)漏洩オゾン対策
 
 システム全般においては、漏洩オゾン濃度計をオゾン発生装置周辺及び移送経路付近に設置し、漏洩オゾンを常時監視する。万一、漏洩オゾンが検知された場合は、船橋及びシステムの配置されている箇所において可視可聴警報を発令し、発生装置の運転停止及び船員の退避を促すことができる装備を配置する。
 また、オゾンは酸化力が強いため、システム上でオゾンが直接接触する部分に適切な酸化腐食対策を施すことで、常にシステムの健全性を維持し、オゾン漏洩に至るトラブルの未然防止を行う。
 
2)火災、浸水対策
 
 一般に船舶において想定されるトラブルは、火災と浸水が挙げられるが、機関室が火災の場合、同室内に設置予定の試作システムは、燃料ポンプなどと同様に機関室外より非常停止できる機能を備え、火災を増長させるオゾンの発生を停止させるものとする。一方、機関室が浸水し、システム稼動中に浸かったとしても、電気装備品がショートして停止するのみである。
 
3)装置の安全対策
 
 システムの装置毎によるオゾン漏洩の可能性を分析し、船員の安全を確保するための対策は以下の通りである。
 
(1)オゾン発生装置
 オゾン発生装置は、製造工場で組立て完成されることから、試運転等の品質管理を十分に行うことができる。したがって、本装置からのオゾン漏洩の可能性は低いと考えられる。万一、トラブルなどにより漏洩オゾンが検知された場合、発生装置の運転を自動的に停止させることができる制御機能を具備する。また、オゾンは自己分解するという特性から、貯蔵せず使用する都度生成するため、装置の破損などによる漏洩オゾンの継続的流出という事態は発生しない。
(2)オゾンガス配管
 本系統は、ステンレス鋼管を用いて極力継手部を少なくし、オゾン漏洩の危険性を可能性な限り低減する。さらに、配管を組立てた後、圧力保持試験などにより十分な品質管理を行い、安全性を高める。万一、オゾンの漏洩が発生した場合は、不用意にオゾン含有空気を吸引又は眼への暴露を避けるため、配管の位置を人が容易に近づけない場所か、なるべく低い位置に敷設する。さらに配置で安全を確保できない場合は二重管などの対策を考慮する。
(3)オゾン注入装置
 オゾン注入装置は、試運転などによる十分な品質管理を行い、安全性を高める。さらに、オゾンガス配管と同様に、不用意にオゾン含有空気を吸引又は眼への暴露がないよう、装置を人が容易に近づけない場所か、なるべく低い位置に設置する。さらに、配置で安全を確保できない場合は、覆いをかぶせるなどの対策を考慮する。
(4)バラスト配管(オゾン注入装置〜脱気槽)
 配管は耐食性に配慮してステンレス鋼管などを用いるが、オゾンガス配管と同様に極力継手部を少なくし、オゾン漏洩の可能性を低減する。さらに、配管を組立てた後に、圧力保持試験などにより十分な品質管理を行い、安全性を高める。また、オゾンガス配管と同様に、配管は人が容易に近づけない場所か、なるべく低い位置に敷設する。さらに、配置で安全を確保できない場合は、二重管などの対策を考慮する。
(5)脱気槽
 本装置は試運転などにより十分な品質管理を行い、安全性を高める。なお、本装置にて気液分離された未反応のオゾンガスは、排オゾン処理塔に導き、処理されるよう配慮する。また、オゾンガス配管と同様に不用意にオゾン含有空気を吸引、又は眼に暴露することがないように、脱気槽を人が容易に近づけない場所か、なるべく低い位置に敷設する。さらに、配置で安全を確保できない場合は覆いをかぶせるなどの対策を考慮する。
(6)バラスト配管(脱気槽以降)
 配管内を流れるバラスト水は、オゾンをほとんど含有していないため、この配管は通常の海水配管と同様に亜鉛めっき鋼管などを用いるが、なるべく継手部を少なくし、オゾン漏洩の可能性を低減する。さらに、配管を組立てた後に、圧力保持試験などにより十分な品質管理を行い、安全性を高めていく。
(7)バラストタンク空気抜き管
 空気抜き管からのオゾン漏洩は、大気への放出であり、船員に障害となるような高濃度のオゾンの蓄積は起こらない。但し、船員の安全に万全を期すため、漏洩オゾン濃度計を空気抜き管出口付近に設置し、漏洩オゾンを常時監視するなどの対策を考慮する。


前ページ 目次へ 次ページ





日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION