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(4)試験結果
 
 IMO排出基準、つまりバラスト水管理条約の附属書規則D-2バラスト水性能基準では、船舶から排出するバラスト水中の生物濃度を表II.2.1-10のように規定している。
 本試験の結果では、水生生物量が多い海水(時期)においても、ハイブリッドシステム第1世代は、スリット部流速30m/sec以上、注入オゾン濃度2.5mg/以上、そしてオゾン注入位置をスリット板の上流にすることでIMO基準を達成する可能性が確認された。
 なお、オゾン注入位置がスペシャルパイプ(スリット板)の上流の方が下流よりも高い効果が得られる理由は、注入したオゾンの気泡が高圧ポンプやスペシャルパイプの作用によって微細化され海水に溶存あるいは海水と反応しやすくなるためと考えられた。
 
表II.2.1-10 IMO排出基準
対象生物 排出基準値 摘要
50μm以上の水生生物 生きた生物数10個/m3未満 サイズの基準は、生物の長さ、幅、厚さの中で最も小さい箇所のサイズを適用
50μm未満で10μm以上の水生生物 生きた生物数10個/未満
病原性コレラ(O-1,O-139) 1cfu/100未満 cfu(=colony forming unit):
平板寒天培地基に検水を塗布し形成される群体数
大腸菌 250cfu/100未満
腸球菌 100cfu/100未満
 
(1)流量・圧力等
 表II.2.1-11には、流量及び圧力の計測結果を注入オゾン濃度と共に示した。
 処理流量は、スリット部流速40m/secで20m3/hr前後で、30m/secで約15m3/hrある。また、スリット上下流における圧力損失(圧損)は、スリット部流速40m/secで0.95MPa前後、30m/secで約0.5MPaであった。
 
表II.2.1-11 流量・圧力等の計測結果
(拡大画面:25KB)
 
(2)水質等
a. 水中オゾン濃度
 表II.2.1-12には、処理水中の溶存オゾン濃度計測結果(3回計測平均)を示し、図II.2.1-4には、処理水中の溶存オゾン濃度の変化を示した。
 水中オゾン濃度は、スリットの下流でオゾンを注入したケースで、スリットの上流で注入したケースよりも長時間残存する結果となった。この理由は、高圧ポンプの上流側でオゾンを注入すると、ポンプのプロペラ及びスリット部をオゾンの気泡が通過する際に、剪断や、高圧ポンプからスリットまでの高圧環境下(約0.9Mpa)にさらされることで微細化され、海水との反応が促進されるためと推察される。
 
表II.2.1-12  処理水中の溶存オゾン濃度(mg/)計測結果(3回計測平均)
注入時のオゾン濃度 2.5mg/
スリット部流速 40m/sec 30 m/sec
オゾン注入位置 スリットの上流 スリットの下流 スリットの上流
ミキサーパイプ直後 0.99 1.01 0.96
スリット直後 0.27 - 0.20
停留タンク入口付近 0.06 0.30 0.04
停留タンク出口付近 0.02 0.16 0.01
貯水タンク満水直後 0.01 0.13 0.02
  〃    1時間後 0.02 0.09 ND
  〃    2時間後 0.01 0.08 ND
  〃    3時間後 0.03 0.08 ND
  〃    6時間後 ND 0.09 ND
  〃    24時間後 ND 0.01 ND
データは3回計測平均。“ND”は検出されなかったことを表す。
“-”はスリットの下流にオゾンを注入したため、計測していない。
 
図II.2.1-4 処理水中の溶存オゾン濃度の変化
(拡大画面:14KB)
注:いずれも注入時のオゾン濃度は2.5mg/で3回計測の平均値を図示。


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