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3 洋上救急往診の要請があった場合に海上保安部署で実施される事項
 傷病者発生船舶から洋上救急往診の要請があった場合、海上保安部署においては、概ね次の事項についての検討等が実施される。
 
(1)医師派遣の必要性について
 傷病者発生船舶等と連絡をとり、表−1「洋上救急患者質問表」(以下「質問表」という。)に基づき、患者の容態を把握するとともに、協力医療機関と連絡をとり医師等の出動要否について相談する。ただし、患者の容態を把握するための「質問表」を、別途、地区支援協議会等において定めている場合には、それを用いても差支えない。
 
(2)出動船艇・航空機等について
 患者容態や当該船舶の位置、海上保安庁の最寄りの航空基地からの距離、付近行動巡視船、気象・海象などを勘案し、出動船艇・航空機を選定する。また、海上保安庁の勢力のみでは困難な場合は、海上自衛隊US-1Aの災害派遣要請を行う。
 
(3)センター本部等への連絡及び協力について
 センター本部またはセンター支部に所要事項を連絡するとともに、医師の派遣要講等センター本部またはセンター支部が行う事項に関し協力する。
 
(4)医師等の出動要否に関する総合的判断について
 医師等の出動要否の判断は、海上保安部署が(1)輸送に関すること。(2)医療上の必要性に関すること。(3)船主等負担金の支払いに関すること。の三要素に関する調査検討結果を総合的に勘案して行います。また、同要否について判断をした場合は、速やかにセンター本部またはセンター支部に連絡されます。
(1)輸送に関すること
イ 協力医療機関の医師の現場到着時間と傷病者発生船舶の至近港への入港時間
ロ 医師の現場到着時間と巡視船等による傷病者のみの輸送時間
ハ 医師の輸送方法及び輸送距離
ニ 現場海域の気象・海象
(2)医療上の必要性に関すること
 通常、次により医療機関に判断を求める。
イ 洋上救急往診の要請に応じられる最寄りの協力医療機関に判断を求める。
ロ 既に傷病者発生船舶と傷病者の病状に関して医療無線等を実施している医療機関が、洋上救急往診の要請に応じることが可能であれば、当該医療機関に判断を求める。
ハ 医療機関に対して判断を求める場合において、患者の病状のほかに、必要に応じて輸送に要する時間、船主等の意向についても併せて連絡する。
(3)船主等負担金の支払いに関すること。(「2 傷病者発生時の処理要領」参照)
 
(5)医療機関への出動要請
 出動要請を行う協力医療機関は航空機等の出発航空基地の最寄りの病院を原則とする。なお、病状が切迫し往復所要時間を可能な限り短縮するために出動医師を派遣する病院と収容する病院が異なる場合も想定されるので柔軟な検討が望ましい。
 『例えば、羽田空港で搭乗した医師等が釧路等で降機することも考えられるが、医師等の釧路からの帰途に係る旅費等は、船主負担とすることを船主に事前了解を求める。』
 緊急を要する場合等、センター本部又はセンター支部による対応が困難と思料された場合は、海上保安部署は「センター本部又はセンター支部名」で医療機関への出動要請を行う。この場合、事後速やかにセンター本部又はセンター支部へ、次の事項を連絡する。
(1)出動要請時刻
(2)出動要請医療機関
(3)出動要請受諾の有無及び時刻
(4)出動医師、看護師の氏名及び年齢
(5)事案の概要
(6)その他必要事項
 
(6)往診要請者への医療活動に関する連絡
 医師等の派遣が行われる場合において、派遣される医師等の医療活動が適切に実施されるように、派遣される医師等の要望事項を医師等の派遣要請元に対して、予め連絡する。
 
(7)巡視船・航空機等の入港到着時の処理
 関係先に対する連絡、救急車の手配、医療機関に対する入港到着時刻及び傷病者の状況等の連絡を行う。
 
(8)各種情報の通報手段等
(1)洋上救急事案発生時には、表−2「海上保安機関連絡先」に掲げる海上保安庁機関の何れかが担当することとなり、出動する医療機関に明示される。従って、傷病者の容態、状況、往診に要する時間等の洋上救急に関する情報は、当該事案を担当する管区海上保安本部又は海上保安部に照会すれば入手することができる。
(2)出動する医療機関の医師が、傷病者に関する詳細な情報を必要と判断した場合には、当該事案を担当する管区海上保安本部又は海上保安部から、当該船舶に対して予め医療助言をした医療機関名を聴取し、専門的な情報を直接入手することができる。
 また、これらの医療情報は、状況に応じて担当の管区海上保安本部及び海上保安部を経由して直接入手することができる。
 
(9)巡視船・航空機に搭乗した出動医師等への給食等に関する通報
 洋上救急のため巡視船・航空機に乗船・搭乗した出動医師等、傷病者、付添人等に対し、当該巡視船・航空機から給食した食卓料或いは毛布、敷布等を貸与したことにより洗濯代等が発生した場合は、洋上救急終了後、可及的速やかに表−3「食卓料及び洗濯代請求書」に必要事項を記載し、当該巡視船・航空機から所属の海上保安部署を経由し、センター本部(又はセンター支部)に送付する。
(1)これらの各種情報は、電話により送受されるが内容の正確性を期すためFAXによる方法も利用できる。FAXによる方法で行う場合は、表−2「海上保安機関連絡先」の海上保安庁機関と医療機関等相互でFAX専用電話番号を確認することが必要です。
(2)出動医師等と医療機関との連絡
 出動医師等と医療機関との連絡は、当該事案を担当する管区海上保安本部又は海上保安部に当該巡視船の衛星通信呼出番号を確認し、直接の通信が可能である。なお、海上保安機関が中継し伝達することもある。
 
表−1 洋上救急患者質問表
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