新居書留帳 第四集
遠州新居 無人島漂流者の話
地域の暮らしを記録する会
はじめに
新居町は歴史豊かな、伝統の由緒深い町です。
日本唯一の保存建物「関所」の中には、町内の庄屋から新居町奉行所に届けられた書類が保有されていました。これも全国的に比類ない新居町文化財です。江戸時代からのこのような町内各家の日常こまごました事件(参宮、祭礼、縁組、奉公、旅立ち、行方不明、建て替え、等々)の届書が「諸事控」の名で綴じられていて、通称「御用留」と言って来たものです。その量膨大で、昭和五十四年から始められた『新居町史』編さん事業では「町方記録」の名のもとに、元文三年(一七三七)から明治三年(一八七〇)までが、第五〜八巻の三千六百頁に収められました。これについて監修者児玉幸多先生は「小さな町の記録として、これほど詳細なものは稀で新居町の記録としてばかりでなく、江戸期後半の町方生活を知るためには、全国的にも貴重なものと言えよう。旧庄屋方から新居町に引きつがれて今日まで保存されてきたことは幸いなことであって(後略)」と言われました。内容は興味津々尽きないものです。「新居書留帳」第四集はその「町方記録」の中から、前代未聞、元文四年、江戸城吹上御殿で、八代将軍徳川吉宗に拝謁した新居の船乗り「甚八・仁三郎・平三郎」三人の、世界的稀な記録を各種の資料から掘り下げるものとしました。
今、変転やまない現代、新居町のプライドを見失わないために、不撓不屈(ふとうふくつ)の三人の物語を知っていただいて、歴史と伝統を大切にすることが出来れば幸いです。
二〇〇四年一月 地域の暮らしを記録する会
《写真撮影・提供》
小林 郁(日本海事史学会会員)
長谷川 博(東邦大学理学部助教授)
前田裕二(地域の暮らしを記録する会)
《挿絵》
寺崎廣業(明治期の画家)復刻
河合 健(地域の暮らしを記録する会)
(敬称略)
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