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4. 波浪・高潮推算の評価
 本章では、周防灘を対象とし、この海域に強風をもたらした3事例の台風、T9918、T0314、T0418号について、(1)2次元台風モデルとマスコンモデルの組み合わせ(以下、従来モデル)による海上風と海面気圧場の推算値を外力とした場合、(2)数値予報モデルによる海上風と海面気圧場の推算値を外力とした場合の波浪・高潮推算結果を比較・評価した。なお、数値予報モデルにより求めた気象場は、初期値から48時間後までの推算結果を用いている。
 
4.1 波浪・高潮モデルの概要
(1)波浪推算モデルの概要
 波浪推算モデルには、第三世代波浪モデルWAM Cycle4を用いた。モデルの概要を表4.1、計算条件を表4.2、計算領域を図4.1(1)から(3)に示す。
 
表4.1 モデルの概要
方程式の外力等 風から波へのエネルギー輸送項:Janssenのquasi-linear理論
エネルギー消散項:Komenらの理論
非線形相互作用によるエネルギー輸送項:4波共鳴(DIA)
海底摩擦によるエネルギー消散項:JONSWAPの経験式
地形性砕波項:なし
移流伝播 1次風上差分
 
表4.2 計算条件
座標系 緯度経度座標
領域 広領域 中領域 周防灘領域
計算範囲 N 15〜40
E 120〜145
N 30〜36
E 128〜135
N 32°40'〜34°20'
E 130°40'〜135°40'
従来モデル 従来モデル 従来モデル/数値予報モデル
格子数 81×61 61×37 251×111
格子間隔 30分(約50km) 10分(約17km) 1分(約1.7km)
計算時間間隔 20分 10分 1分
深浅 深海 深海 浅海
浅海物理 なし なし 浅水変形、屈折
周波数分割数 35成分、f(1)×1.10(I-1)(f(1)= 0.04177248)
周期成分 約24秒〜0.9秒
方向分割数 16成分
 
 領域2から領域3へネスティングする際、方向スペクトルはf-5乗則に従って周波数を周波数帯を高周波側に拡張し、スプライン補間によって方向分割数を上げた。
 
図4.1(1)広領域(30分メッシュ、81×61)
 
図4.1(2)中領域(10分メッシュ、61×37)
 
図4.1(3)周防灘海領域(1分メッシュ、251×111)
 
(2)高潮推算モデルの概要
 高潮推算には、3次元レベルモデルを用いた。モデルの概要を表4.3、計算条件を表4.4、検証のため潮位観測値を収集した地点を図4.2、水深図を図4.3に示す。
 
表4.3 高潮推算の概要
方程式の外力等 海面境界:風応力、気圧
海面境界:熱fluxは考慮しない、wave set-upは考慮しない
海底境界:海底摩擦は平均流速の2乗に比例するものとした
地球自転:f面近似
状態方程式(密度計算) 考慮せず、密度は水平・鉛直とも一様
移流伝播 一次風上差分
 
表4.4 計算条件
座標系 直行格子座標、Z座標系
領域 狭領域のみ
計算範囲 緯度32°40'〜34°20'、格子数(101)
経度130°40'〜132°40'格子数(121)
水平格子間隔 緯度方向:緯度1'、経度方向:経度1'
鉛直格子間隔 第1層(ζ〜10m)、第2層(10〜40m)、第3層(40〜海底)
積分時間間隔 Δt=20(秒)
側方境界 外洋との境界条件は、湾口部で気圧偏差より換算した潮位を与えた
海陸境界 海岸では横切る流れは無いものとした
 
図4.2 潮位観測値収集地点図(周防灘周辺)
 
図4.3 周防灘海域水深図


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