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 図2.20に、各台風の推算時間ごとにおける、気圧深度を示す。また、図2.21にそれぞれの手法について6事例を平均した推算時間ごとの気圧深度誤差のRMSEとBiasを示す。
 T9711やT9719 はデータ同化を行った場合もあまり変化はなかったが、T9918は、データ同化を行わない場合と比較して5hPaほど気圧深度の予測精度が悪化した。これは、ナッジングはスムージングの効果があり、台風の中心気圧を減衰させたためと考えられる。また、T0215、T0416、T0418など、データ同化を行わない場合に気圧深度がベストトラックよりも深く推算されている事例は、誤差は小さくなった。これは、台風ボーガスが気圧深度推定に対し、負のバイアスを持っていたために、見かけ上、良化したと考えられる。
 6事例の平均では、データ同化を行った方が、気圧深度推定誤差が小さくなり、負のBiasは0に近くなっていた。これはデータ同化が気圧深度誤差を小さくしているのではなく、台風ボーガスが負のバイアスを持っていたために、見かけ上、良化したと考えられる。T9918など中心気圧が浅くなる事例については、データ同化を行うことにより悪化していた。
 
図2.20 推算時間ごとの中心気圧推定誤差
 
 データ同化を行うことにより、台風進路はベストトラックに近くなり、進路推算精度は向上した。一方、気圧深度は、同化なしでは台風深度をベストトラックより深く推算するような事例では見かけ上、良化したが、T9918など台風が深くボーガスを投入しても十分に表現できないような事例では悪化した。
 以上から、データ同化を行うことにより、進路推算の精度は向上すると考えられる。また、気圧深度推算精度は、データ同化を行うことによって悪化する事例もあるが、JMA-Bogusが負のバイアスを持っていることもあり、平均的には気圧深度誤差も悪化しないことから、本研究ではデータ同化を使用することとした。
 
図2.21 各事例のベストトラックと中心気圧推算値
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