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(2)中心気圧
 図2.15に、各台風の推算時間ごとにおける、気圧深度を示す。また、図2.16にそれぞれの手法について6事例を平均した推算時間ごとの気圧深度誤差のRMSEとBiasを示す。
 ボーガスなしは、T9711、T9918、T0418などの事例において、初期時刻にベストトラックと比較して高い気圧であった。これは、RANALの格子間隔は20kmと粗く、シャープな台風の構造を表現することは困難であり、気象庁がボーガス投入の際にモデル解像度に合わせて、中心気圧をやや浅めに設定しているためと考えられる。新たな台風ボーガス(JMA-Bogus)を投入した場合は、初期時刻付近での誤差は小さくなったが、T9711やT9918では初期の数時間で気圧が浅くなった。また、T0215やT0416ではボーガスなしと同様に、推算時間が進むにつれてベストトラックより深まっていた。これまでの台風ボーガス(MM5-Bogus)は、同様に初期時刻付近の誤差は小さかったが、T9711、T0215、T0418では初期の数時間で気圧が深くなった。
 6事例の平均では、ボーガスなしは、初期に15hPa以上気圧深度が高く、推算時間が進むにつれて次第に誤差は減り、24時間後では約10hPaの誤差であった。ボーガス投入した場合は、初期時刻の中心気圧が現実に近くなり、これまでの台風ボーガス(MM5-Bogus)、新たな台風ボーガス(JMA-Bogus)とも計算期間前半で、誤差が大きく改善していた。一方、推算時間が進むにつれて、ボーガスなしとの差異が小さくなり、24時間後では、ほぼ同程度の誤差になっていた。これまでの台風ボーガス(MM5-Bogus)と新たな台風ボーガス(JMA-Bogus)では、気圧深度誤差は同程度であったが、これまでの台風ボーガス(MM5-Bogus)が初期数時間で負のBiasであるのに対し、新たな台風ボーガス(JMA-Bogus)は正のBiasであった。この原因としては、これまでの台風ボーガス(MM5-Bogus)は、雲などを考慮しない非現実的な湿度を投入しているため、初期の凝結量が非常に大きいことが挙げられる。
 
図2.15 推算時間ごとの中心気圧推定誤差
 
図2.16 各事例のベストトラックと中心気圧推算値
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 以上から、台風進路推定は、新たな台風ボーガス(JMA-Bogus)は台風ボーガスを投入しても大きな差異はなかったが、これまでの台風ボーガス(MM5-Bogus)は台風ボーガスを投入することで悪くなった。この原因としては、MM5-Bogusで行っている台風を取り除く過程において、台風を移動させる環境場にも影響を与えているため、進路に大きな誤差が生じていることが考えられる。
 気圧深度推定は、JMA-Bogus、MM5-Bogusとも台風ボーガスを投入することで、精度は良化した。しかし、これまでの台風ボーガス(MM5-Bogus)が初期数時間で負のBiasであるのに対し、新たな台風ボーガス(JMA-Bogus)は正のBiasであった。この原因としては、これまでの台風ボーガス(MM5-Bogus)は、雲などを考慮しない非現実的な湿度を投入しているため、初期の凝結量が非常に大きいことが挙げられる。
 また、これまでの台風ボーガス(MM5-Bogus)は、気圧を陽に与えることができないため、ベストトラックの気圧深度を表現する風速を試行するという作業が必要となっていた。しかし、新たな台風ボーガス(JMA-Bogus)は、気圧を陽に与えることができるため、そのような作業を行う必要がない。
 以上から、本研究では、進路推定の精度に大きな差異がなく、気圧深度推定の精度が向上する新たな台風ボーガス(JMA-Bogus)を使用することとした。


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