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2.2.3 これまでの台風ボーガスと新たな台風ボーガスの精度比較
 本項では、台風ボーガスの精度を調査するため、台風ボーガスを投入して数値予報モデルによる推算計算を行い、その推算精度を比較した。
 精度比較は、(1)台風ボーガスなし、(2)これまでの台風ボーガス(MM5-Bogus)と、(3)新たな台風ボーガス(JMA-Bogus)について行った。
 推算計算は2.1項に記述した領域、計算OPTIONで行った。ここでは、台風ボーガスの台風の推算結果に対する影響を評価するため、4次元同化は行わなかった。推算時間は24時間とし、台風ボーガスは、推算時間内の解析値すべてに対して投入した。
 対象台風は、1996年から2004年に八代海・周防灘に高波をもたらした6事例とした。表2.2に対象事例のベストトラックの台風経路図を示す。対象の台風事例は、九州に上陸したか、九州の西側を通過した台風であった。計算は、八代海・周防灘にもっとも高波をもたらした時間の36時間前を初期として行った。
 最終的な対象である風速の計算精度は、台風進路や気圧深度に依存する。台風進路は、台風は中心部に強風域が集中しており、台風時の風場は、台風中心部との位置関係に大きく依存するために重要であり、気圧深度は、台風の最大風速が、気圧深度に依存するため重要である。したがって、検証は台風進路と気圧深度をベストトラックと比較することで行った。
 
表2.2 対象台風
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(1)台風進路
 図2.13に、各台風の推算時間毎における、(1)ベストトラック、(2)ボーガスなし(図中:No-Bogus)、(3)これまでのボーガス(図中:MM5-Bogus)、(4)新たな台風ボーガス(図中:JMA-Bogus)の台風進路を示す。また、図2.14にそれぞれの手法について6事例を平均した推算時間ごとの進路推定誤差を示す。
 台風中心位置の推算精度は、どの手法も推算時間が進むにつれ次第に悪化していくが、これまでの台風ボーガス(MM5-Bogus)は、6時間以降の進路推算誤差が、他の手法と比較して大きくなっていた。とくに、T9719、T0215で推算精度が悪く、推算時間24時間ではベストトラックと200Km以上の誤差が生じていた。新たな台風ボーガス(JMA-Bogus)は、ボーガス投入前と大きな差異はなかったが、T9711、T9719などでは、ボーガス投入後に推算精度が向上していた。一方、T0418ではボーガス投入後にやや悪化していた。
 6事例の平均では、MM5-Bogusは推算24時間で150km以上の誤差が生じていた。この原因としては、MM5-Bogusで行っている台風を取り除く過程において、台風を移動させる環境場にも影響を与えているため、進路に大きな誤差が生じていることが考えられる。新たな台風ボーガス(JMA-Bogus)は、24時間で80km程度の誤差で、ボーガス投入なしと同程度の精度であった。これは、気象庁RANALには同様のアルゴリズムを用いた台風ボーガスが投入されているため、誤差もあまり変わらなかったと考えられる。
 平成16年度事業では、これまでの台風ボーガス(MM5-Bogus)を使用しており、T9719とT0416で進路推定誤差が大きく、海上風推算精度を悪化させていたが、新たな台風ボーガス(JMA-Bogus)を用いることで進路推定誤差は小さくなり、推算精度の向上が期待される。
 
図2.13 推算時間ごとの台風進路推定誤差
 
図2.14 各事例のベストトラックと台風進路推算値
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